手掌多汗症について
多汗症とは

多汗症とは、読んで字のごとく多量の汗をかく病気のことです。
通常、体温があがれば誰でも汗はかきますが、多汗症の場合は特に暑いわけでもなく、運動したわけでもなく、異常なほど大量に汗をかきます。多汗症を疾患している割合は日本人の2%~5%ほどと言われ、幼少のころより発症するケースも多いです。
多汗症の方は、手のひら、腋、足の裏に症状がよく見られ、日常生活に支障をきたすほど手のひらで発汗するものを手掌多汗症(しゅしょうたかんしょう)と言います。こちらは緊張すると、さらに汗の量が増加し、水滴のようにこぼれるほどにもなります。
現在は多汗症に有効な治療も開発され、手術で完治することも可能です。
手掌多汗症の症状について
手掌多汗症の原因

多汗症の原因については、未だ解明されていないのが現状です。ただ手掌多汗症の患者様は、交感神経と呼ばれる新陳代謝を活性化させる神経が一般の方よりも強く反応し、多量の汗が分泌されると言われています。また遺伝の可能性もあります。特に緊張状態になると症状はひどくなりますが、リラックスした状態でも大量に汗がでることもあります。
また汗には体温調整をするための温熱性発汗と緊張状態から生じる精神性発汗の2種類があります。多汗症の汗は後者に該当します。
手掌多汗症の症状
手掌多汗症は大きく3つの段階に分類されます。
レベル1 | 手のひらが汗で湿る程度 |
---|---|
レベル2 | 手のひらに汗のかたまりができる |
レベル3 | 手のひらから垂れるほど |
多汗症がもたらす支障
- 握手ができない、手をつなげない
- ノートや書類、紙が汗でにじむ
- ものに触ると手汗でべたべたになる
- 車のハンドルが滑って握れない
- 汗で滑ってものよく落とす
- ハンカチやハンドタオルが手放せない
上記は一例ですが、日常生活に多くの影響を与えます。特に多汗症は、幼少期の頃から発症するケースも多いので、例えば「学校のフォークダンスで手が握れない」なんてことから人によってはコンプレックスを抱えてしまうこともあります。
また多汗症を知らない場合、周りからは汗かきとして流されてしまうこともありますので、汗の量が多いかなと思ったら、専門医にご相談しましょう。

手掌多汗症の治療法
治療法 | 内容 | 日帰り |
---|---|---|
外用薬 | 塩化アルミニウムを主成分とした塗り薬の治療です。手のひらや足の裏、わきの下など症状が出る部位に就寝前に塗ります。主に腋に対して有効な治療でしたが、手袋を用いた密閉療法により、手のひらにも有効になってきました。しかし、治療が長期にわたってしまい、かぶれやかゆみなどの副作用もありますので、お考えの際は専門医に相談しましょう。 | 可能 |
イオントフォーレシス | 専用機による治療法で、症状が出る部位を水に浸し、そこに弱い電流を流します。水素イオンが汗腺を塞ぐことことで、発汗を抑えます。この治療はワキガにも効果的とされています。保険適用なので、治療費は抑えられますが、即効性があるわけではないので、定期的な治療が必要なため、通院回数も多くなります。 | 可能 |
ボツリヌス毒素注射 | 所謂、美容外科でも用いられるボトックス注射のことです。ボツリヌス毒素を注入することで、交感神経を麻痺させ、汗を抑えます。傷が残らず、短時間で治療が可能ですが、注射の痛みは強いです。また保険適用外のため、治療費が高く、半年~1年ほどで効果がなくなるため、繰り返し治療をする必要があります。 | 可能 |
神経ブロック | 麻酔により星状神経節を麻痺させ、発汗を抑える治療法です。麻酔ではなく、レーザーを用いる場合もあります。ほとんどの患者様に有効的とされていますが、効果が持続する期間が3ヶ月ほどと短いため、通院回数が多くなります。また麻酔を行った際は代償性発汗を起こすこともあります。 | 可能 |
交感神経遮断術 (ETS) |
内視鏡を使った手術で、劇的に汗の量を減らします。腋の下に2~3mm程度の傷をつけ、そこから内視鏡を挿入し、背骨近くにある交感神経を遮断します。手術時間は15分程度で、傷も小さく、生涯にわたり効果が続きます。しかし、代償性発汗を起こす確率が高く、交感神経は回復力が強いため人によっては再発するケースもあります。 | 可能 |
治療費や保険の対応についてはこちらのページをご参照ください。
代償性発汗とは?
代償性発汗とは、手術や神経ブロックの治療を行った際にみられる現象で。手のひらや足、わきの汗を抑えることで、背中や胸、太ももなど体のほかの部分の汗が増加することです。発汗部位や汗の量も個人によって大きく異なりますが、多汗症のように常に汗が出るわけではなく、気温が高かったり、運動のあとに発汗が多くなるだけで、身体的には正常です。
治療・手術の流れ
1外来
問診・診察を行います。
2検査
主に血液検査を行います。
3治療方針の決定
ドクターより説明を受け、治療法を選択します。手術以外の場合定期的に通院していただくこともあります。
4手術
手術時間は15~30分程度です。
5術後
施設内で1~2時間ほど休憩します。場合によっては1泊入院が必要なケースもあります。
6帰宅
手術の効果や副作用について診断するため、数か月後に1度来院し、ドクターに診察してもらいましょう。
※こちらはあくまで大まかな流れになります。クリニックにより多少異なることもあるので、詳しい内容が知りたい方は、ホームページを確認したり、お問い合わせすることをお勧めします。
治療費について
手掌多汗症の手術は健康保険適応の対象になります。ただしボツリヌス毒素の注射治療は自費診療になります。
こちらはあくまでも目安になりますので、詳しい料金を知りたい場合は、医院に確認しましょう。
治療法 | 保険適用 | 治療費(3割負担) | 入院する場合(3割負担) |
---|---|---|---|
外用薬 | ○ | 約2,000~3,000円 | ― |
イオントフォーレシス | ○ | 約1,000円~2,000円/1回 | ― |
ボツリヌス毒素注射 | △ | 約10万円前後 | ― |
神経ブロック | △ | 約1,000~2,000円/1回 | ― |
交感神経遮断術 | ○ | 約8~10万円 | 約10~12万円 |
※交感神経遮断術は高額療養費制度の対象 となります。
高額療養費制度について
手掌多汗症の手術は高額医療に該当します。
医院から発行される領収書を保管し、書類をご用意のうえ、お手続きを行ってください。
任意保険の手術給付金について
現在、任意の生命保険や入院保険に加入されている場合、給付金が受け取れる場合があります。保険会社により詳細は異なりますので、一度ご確認・ご相談したうえで、必要書類を持参してください。
