2017.02.04

目に傷が失明を招く…今すぐ知っておきたい原因と症状・治療方法

この記事の監修ドクター

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オガタ眼科クリニック
緒方 譲二 医師

福岡県福岡市中央区天神2丁目2-12T&Jビル3階

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目に傷

「目に傷」と聞くと、痛々しくて身構えてしまうかもしれません。
しかし、たとえば目に入ったゴミがひっかき傷をつけるなど、目に傷がつくこと自体はそれほど珍しくありませんし、軽い傷なら一晩で治ることもあります。

その一方で、傷から病原体が感染して深刻な目の病気を引き起こすと、場合によっては失明に至ることもあるなど、目の傷には単純な自己判断が通用しないさまざまなパターンがあるのです。

そんな目の傷について、ここでは症状から、原因や考えられる病気、対処法、検査や治療、さらには予防法までをご紹介していきます。



目に傷が ~こんな症状ではありませんか?~

目に傷

「目に傷がつく」というのは、多くの場合、目の表面、すなわち白目と黒目の部分に傷がつくことを指しています。
ここではそんな目の表面の構造や、目に傷がついた時に起きやすい症状などをご紹介します。

結膜と角膜

一般的に、白目の部分を「結膜」、黒目の部分を「角膜」といいます。
より正確にいえば、まぶたの裏側から白目までを覆う透明の膜が結膜、黒目の表面を覆う透明の膜が角膜となります。


結膜は白目の表面を保護すると同時に、眼球の動きやまばたきを滑らかにする役割を果たしています。

一方、角膜は黒目の表面を保護すると同時に、外界につながる窓として光を採り入れ、屈折させる役割を果たしています。
特に角膜は目の中で最も外側に突き出た位置にあり、必然的に目の中で傷を受ける機会が最も多い部位だといえるでしょう。

角膜の傷の病態

角膜を断面から見ると、目の外側から順に「上皮」「実質」「内皮」という3つの組織で構成されています。
通常、角膜の傷は一番表面の上皮につきますが、角膜の上皮は自己修復能力がとても高い組織なので、軽度の傷なら半日程度のごく短い時間で自然に治癒してしまう場合がほとんどです。
しかし、傷の程度によっては炎症が生じて、傷が広がったり深まったり、さらには病原体に感染するなどして悪化していく場合があります。この状態を総じて「角膜上皮障害」といいます。

角膜上皮障害は傷の程度が軽いものから順に、上皮に点状の傷がつく「点状表層角膜症」、上皮の一部が剥がれる「角膜びらん」、上皮だけでなく実質にまで傷が深まる「角膜潰瘍」という3種類の病態に分けられます。
このうち、点状表層角膜症と角膜びらんは比較的治癒しやすい軽症といえますが、角膜潰瘍は濁りや視力の低下をともなったり、そのまま放置すれば失明に至る場合もある重症度の高い状態といえます。

目の傷による症状

ここでは目に傷がついた時に現れる可能性のある症状をご紹介します。

1.目の痛み

角膜にはたくさんの知覚神経が通っていて、全身の中でも痛みに対して最も敏感な組織の1つだといわれています。

たとえば、ほんの小さな異物が目の表面に侵入しただけでもヒリヒリとした痛みを感じるのはそのためです。
さらにその異物が角膜に傷をつけていたら、異物の除去後も傷からの刺激によって痛みを感じることでしょう。

一方で、結膜は角膜ほど敏感ではなく、ちょっとした異物や傷だけなら痛みを感じない場合も多くあります。
したがって、目の表面に痛みを感じた場合、その痛みは結膜よりも角膜が発している可能性の方が高いといえるでしょう。

2.目の異物感

よく「目がゴロゴロする」といいますが、こうした目の異物感はなんらかの異物が実際に目の表面に侵入したことによって起きるものか、あるいは異物が侵入していなくても、目の表面についた傷からの刺激によって起きるものです。
なお、目がゴロゴロすると思ったら、実はまぶたに「麦粒腫(ばくりゅうしゅ)」(ものもらい)ができていたというケースもあるので、その異物感が目とまぶたのどちらによるものかをきちんと区別することもまた、目の傷に関する判断を下す材料として重要です。

3.その他の症状

目の表面についた傷からの刺激によって、涙がポロポロと流れやすくなったり、白目に充血が起きる場合があります。
また、角膜についた傷に視力が影響を受けて、目がかすんだり、ぼやけて見える場合があります。

特にこんな症状に注意

黒目の一部に白い濁りが見える場合、角膜上皮障害が角膜潰瘍の状態にまで重症化している可能性があります。
同時に、重篤性の高い目の病気のサインとして現れることの多い「毛様充血(もうようじゅうけつ)」が白目に現れる場合もあります。

このようなケースでは、濁りによって急激に視力が低下したり、そのまま放置すれば失明に至る場合もあるので、できるだけ早く眼科を受診する必要があります。


考えられる原因と可能性のある病気

ここでは目に傷がつく原因や、目の傷によって起きやすい病気などをご紹介します。
心当たりのある原因や症状があれば、早めに眼科を受診しましょう。

異物の侵入

ホコリや砂といったゴミが目に入ったり、金属や木材の加工中に欠片が目に入ったり、洗剤や化学薬品などの飛沫が目に入るといった外部からの異物侵入によって目の表面に傷がつくことがあります。
ちょっとした小さなゴミが侵入しただけなら、涙で洗い流される場合がほとんどです。

しかし、金属片の場合は侵入時の勢いによっては眼球の内部にまでめり込んだり、化学薬品の場合も種類によっては眼球の内部にまで浸透することがあるので、どちらのケースにおいてもできるだけ早く眼科を受診する必要があります。

外傷

ボールが目に当たったり、他の人の指が目に入ったり、植物の枝や葉で目を突くといった外傷によっても目に傷がつくことがあります。
受けた衝撃の程度にもよりますが、こうした外傷では目の表面の傷に限らず、傷の位置や深さによっては視力や視野への影響がただちに現れたり、逆に忘れた頃に現れる場合もあるので、自覚症状の有無にかかわらず、早めに眼科を受診した方がいいでしょう。

紫外線(光誘発角膜炎)

目が強い紫外線にさらされると、角膜に傷がつき、炎症が起きる場合があります。
この炎症のことを特に「光誘発性角膜炎」といいます。


スキー場の照り返しによって起きやすいことから「雪目(ゆきめ)」とも呼ばれますが、他に海水浴場の日差しや溶接作業時の火花、殺菌灯の光線などによっても同様の症状が起きやすいとされています。

目の痛みやかすみ、充血、涙、ゴロゴロとした異物感、まぶしく感じるといった症状が現れます。

目薬の防腐剤

市販の目薬の中には防腐剤が含まれているものが多くあります。
防腐剤は細菌などの病原体の細胞膜に作用して目薬の中での繁殖を防いでくれるのですが、その一方で、点眼をあまり頻繁に続けていると角膜の細胞膜にまで作用して、やがて角膜が傷付くなど角膜障害を引き起こす可能性があります。



コンタクトレンズの不適切使用

コンタクト

普段、角膜は目の表面を覆う涙を通して外気から酸素を取り入れています。
そこにコンタクトレンズを装用すると、いわばフタをされた形となった角膜は酸素を取り入れにくい状態になります。

やがてレンズの装用が基準以上の長時間へとおよんだ場合、角膜は酸素不足に陥って傷がつきやすくなります。

また、レンズの装用中に目をこすったり、角膜のカーブにフィットしていないレンズや変形した状態のレンズなどを装用することでも角膜に傷がつく場合があります。
さらに、誤った方法によるケアで汚れが付着したままのレンズを装用することで、傷から細菌などの病原体を感染させる原因となる場合もあります。

さかさまつ毛

本来は外向きに生えるはずのまつ毛が内向きに生えることを「さかさまつ毛」または「さかまつ毛」といいます。
この内向きに生えたまつ毛が角膜に当たって傷がつくことがあります。

まつ毛が内向きに生える病態には、まつ毛の土台となるまぶた自体が内向きになっている「眼瞼内反(がんけんないはん)」と、まつ毛だけが内向きに生えている「睫毛内反(しょうもうないはん)」「睫毛乱生(しょうもうらんせい)」があります。

目の痛みや充血、涙、目やに、ゴロゴロとした異物感、まぶしく感じるといった症状が現れる他、まばたきが異常に多くなることも大きな特徴です。

内向きのまつ毛を抜くというシンプルな方法で対処することもありますが、多くの場合、根本的に治すためには手術が必要になります。

ドライアイ(乾性角結膜炎)

普段、目の表面は涙腺から分泌された涙に覆われて保護されています。
しかし、なんらかの原因で涙の分泌量が減少したり、涙の成分バランスが崩れて均等に行き渡らなくなると、目の表面が乾燥し、傷がついてしまいます。この状態を「ドライアイ(乾性角結膜炎)」といいます。

目のかゆみやかすみ、充血、目やに、ゴロゴロとした異物感、まぶしく感じるといった症状が現れます。

結膜炎

結膜炎は、その名の通り結膜に起きる炎症です。
主に、細菌やウイルスへの感染が原因の「感染性結膜炎」と、花粉などに対するアレルギー反応が原因の「アレルギー性結膜炎」に分けられます。

特に目の傷との関連からいえば、さまざまな原因でついた結膜の傷に細菌やウイルスといった病原体が感染することで、感染性結膜炎が起きる場合があります。

また、特に症状が重いとされるアレルギー性結膜炎の一種「春季カタル」や「アトピー性角結膜炎」においては、まぶたの裏側に発生した「乳頭」と呼ばれるでこぼこの隆起が、まばたきの摩擦を通じて角膜に傷をつけることもあるので、手術で乳頭を除去する場合もあります。
目のかゆみや充血、涙、目やに、ゴロゴロとした異物感といった症状が現れます。

角膜炎

角膜炎は、その名の通り角膜に起きる炎症です。
結膜炎と同様に、さまざまな原因でついた角膜の傷になんらかの病原体が感染することで、「感染性角膜炎」が起きる場合があります。
中でも最も多いのが細菌への感染が原因で起きる「細菌性角膜炎」で、角膜上皮障害が角膜潰瘍の状態にまで重症化する症例も多いとされています。

他にもカビへの感染が原因で起きる「真菌性角膜炎」、ウイルスへの感染が原因で起きる「ヘルペス性角膜炎」、微生物への感染が原因で起きる「アカントアメーバ角膜炎」などがあります。
目の痛みやかすみ、充血、涙、目やに、ゴロゴロとした異物感といった症状が現れます。


目に傷がついた時の対処法

目がなんらかの傷を負った場合、見た目だけではわからないダメージを受けている可能性もあるので、自覚症状の有無にかかわらず、早めに眼科を受診しておくに越したことはありません。
ここでは、あくまで眼科の受診を前提に、その前の段階でしておいた方がいいと思われる主な対処法をご紹介します。

1.目に異物が入ったら

目薬

目をこすらないよう注意しながら、蛇口からの流水や目薬などで異物を洗い流し、目を清潔に保ちましょう。

2.目に何かが当たったら

視力や視野に異常が起きていないか確認しましょう。
ただし、片方の目に異常があっても、両目で見ている時はもう片方の目による補正で異常を認識できない場合があるので、必ず片目ずつ確認しましょう。

3.目が強い紫外線にさらされたら

目がチクチクまたはヒリヒリと痛む場合は冷たいタオルをあてるなどして目を冷やし、休ませましょう。

コンタクトレンズは一旦使用中止に

目についた傷が治癒するまでの間はコンタクトレンズの装用を取りやめて、メガネで代用しましょう。

目の乾きを解消する

空調の効いた環境下では、加湿器を使うなどして空気が乾燥しないようにしましょう。
また、乾きがひどい場合は、成分が涙に近い人工涙液タイプの目薬で目を潤しましょう。



目の傷の検査と治療

ここでは視力や屈折、眼圧といった眼科の基本的な検査以外で、目の傷の状態を調べるために行われる主な検査と、目の表面についた傷の治療法をご紹介します。
なお、点眼や内服などの投薬にあたっては、量や回数、間隔といった医師の指示を治療が終了するまでしっかりと守りましょう。

目の傷の検査

目の傷の状態を調べるために行われる主な検査をご紹介します。

1.細隙灯顕微鏡検査(さいげきとうけんびきょうけんさ)

細隙灯と呼ばれる細い帯状の光で目を照らし、顕微鏡を通して主に目の表面の結膜や角膜などに異常が発生していないかを調べます。目の表面についている傷の程度も調べることができます。

2.眼底検査

薬で瞳孔(どうこう)を開いた目に光をあてて内部を観察し、眼底(眼球内部の奥)の網膜などに異常が発生していないかを調べます。異物や外傷によるダメージが眼底にまでおよんでいないかも調べることができます。

3.生体染色検査

蛍光の染色液を点眼した目を青い光で照らし、細隙灯顕微鏡を通して目の表面についている傷の程度をより細かく調べます。

4.その他の検査

侵入した異物がどこにあるのかを調べるために、レントゲン撮影を行う場合もあります。

結膜についた傷の治療

結膜は角膜に比べると痛みに対して鈍感なので、傷がついても自覚症状が現れにくい分、場合によっては深刻な傷を見過ごしてしまいかねません。
異物が侵入した心当たりがあったり、少しでも異物感や違和感を覚えるようなら、自己判断に頼らず、早めに眼科を受診するようにしましょう。

角膜についた傷の治療

角膜の傷に対する治療は傷を治すこと自体よりも、その自己修復能力をサポートする形で行う場合がほとんどになります。
ここでは角膜上皮障害の治療法を、病態の軽いものから順にご紹介します。

1.点状表層角膜症の治療

角膜の上皮についた傷が浅く小さい段階なので、ほとんどの場合、長くても数日程度で完治が可能です。
ドライアイが原因なら人工涙液の点眼、コンタクトレンズが原因なら装用の中止、細菌性角膜炎が原因なら抗菌薬の点眼などといったように、原因に対する治療が基本となります。
同時に、角膜の傷の修復を促すヒアルロン酸などを点眼する場合もあります。

2.角膜びらんの治療

角膜の上皮の一部が剥がれた段階です。傷が上皮にとどまっているので、まだ治癒は難しくありません。
抗菌薬の眼軟膏(がんなんこう)を塗布するとともに、まぶたからの刺激を和らげるよう眼帯をすることで、通常は1週間程度で治ります。
ただし、再発の可能性も高いため、角膜を保護するための治療用コンタクトレンズを装用する場合もあります。

3.角膜潰瘍の治療

角膜の傷が上皮を抜けて実質にまで達し、濁りが発生することもある重症の段階です。できるだけ早い治療が必要となります。
感染性角膜炎が原因の場合は、原因となっている病原体を特定した上で、細菌なら抗菌薬を、カビや微生物なら抗真菌薬を、ウイルスなら抗ウイルス薬を点眼や眼軟膏、結膜下注射、点滴、内服などの方法でそれぞれ投与します。
一方、病原体への感染が原因ではない場合、抗炎症薬や角膜の傷の修復を促す眼軟膏を投与したり、治療用コンタクトレンズを装用するなどして治療を進めます。
さらに、これらの治療によっても濁りが残って視力が回復しなかったり、角膜に孔が開くほど潰瘍が深まって失明に至る危険性が高くなった場合は、「角膜移植」を行うこともあります。



目の傷の予防

目の傷を予防するためには、目に傷がつく可能性のある機会を安全に過ごすための工夫や心がけが重要です。
以下のような対策をとれば効果が期待できそうです。

1.目を異物から守る

大工仕事で木材や金属を加工する時や、化学物質入りの洗剤でトイレやお風呂を掃除する時は、保護用のメガネやゴーグルをかけて、欠片や飛沫が目に入らないようにしましょう。

2.目を紫外線から守る

日差しが強い日の屋外、特に海水浴場やスキー場では、UVカット効果のあるサングラスやゴーグル、日傘などを使って、紫外線をできるだけ目に入れないようにしましょう。

3.目を乾燥から守る

パソコンやスマートフォンの使用中は意識的にまばたきの回数を増やし、できるだけ涙の分泌を促しましょう。
また、空調の効いた環境下ではメガネをかけたり、位置を移動するなどして、風が目に直接当たらないようにしましょう。

4.コンタクトレンズは正しい方法で

コンタクトレンズの装用時間を基準の範囲内に収めるとともに、帰宅後はメガネで代用するなどして、少しでも装用時間を減らしましょう。
また、決められた方法での手入れを徹底して、レンズを清潔に保ちましょう。

5.目薬は防腐剤フリーのものを

市販の目薬を頻繁に使いたい場合は、なるべく防腐剤が含まれていないものを選びましょう。

目の傷のポイントまとめ

コンタクトレンズやドライアイといった現代ならでは原因によって、目はただでさえ傷がつきやすい環境にあるといえます。
そうした中で角膜は、視力に直接影響する大切な役割を持ちながら、実は目の中でも外界からの刺激にさらされる時間が一番長い位置にあるのです。
だからこそ高い自己修復能力が備わっているともいえますが、一旦その力がおよばない深さまで傷が到達すると、治療には困難がともなうことになります。


そんな大事に至ることのないよう、日々の中で目に傷がつく可能性を減らせる部分は減らしつつ、それでも不意に目の表面が痛んだり、少しでも異物感や違和感を覚えた時には、念のためにも眼科を受診することが、傷が浅い段階での早期発見にとって大切なことだといえるでしょう。



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