2017.02.04

目がかすむのは疲れ?実は脳の病気かも…眼科医に聞いてみた

この記事の監修ドクター

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オガタ眼科クリニック
緒方 譲二 医師

福岡県福岡市中央区天神2丁目2-12T&Jビル3階

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目がかすむ

長時間パソコンやスマートフォンに夢中になったあとで、ふとまわりを見た時にものがかすんで見えたという経験はありませんか?
その目のかすみがほんの一時的な症状であれば、大きな心配はいらないかもしれません。
しかし、中には深刻な病気が発するサインとして目のかすみが現れることもあるのです。


そんな目のかすみ(かすみ目)について、症状から、原因や考えられる病気、対処法、検査や治療、さらには予防法までをご紹介していきます。



目がかすむ ~こんな症状ではありませんか?~

目のかすみとは、医学的な専門用語で「霧視(むし)」と呼ばれることからもわかるように、簡単に言えば、霧がかかったように見える症状のことです。
そんな目のかすみの諸症状についてご紹介します。

目のかすみの症状

かすむ

一口に「目がかすむ」といっても、原因や人それぞれの感じ方などによって見え方は異なりますが、主に以下のような見え方が症状としてあげられるでしょう。
この中に心当たりのある症状があったら、原因をきちんと把握するためにも、早めに眼科を受診しましょう。

・ものがかすんで見える、ぼやけて見える
・ピントが合うまでに時間がかかる
・近くのものが見えづらい
・視力が低下する
・視野が狭くなる
・視界の一部がかすんで見える、ぼやけて見える、欠けて見える
・視界に白っぽいフィルターがかかっているように見える
・霧やモヤがかかったように視界がはっきりしない

特に注意すべき症状とは

目のかすみには一時的に症状が出るだけの比較的軽度なものもあるので、普段は様子を見るだけで済ませる方も少なくないと思います。しかし、深刻な病気が原因となって目がかすむ場合もあります。

中でも、目が長時間かすみ続けたり、視界の一部に違和感を覚えたり、視界がはっきりしないほどかすんで見えたり、目のかすみに痛みがともなったりといった明らかな異変に対しては、様子を見ようなどと思わず、できるだけ早く眼科を受診することが必要になります。


目のかすみで考えられる原因と可能性のある病気

ここでは目がかすむ主な原因をご紹介します。
中には早急な治療を要する病気が原因の場合もあるので、心当たりのある症状があれば、早めに眼科を受診しましょう。

目の疲れ(疲れ目)

目の疲れ

目がかすむ代表的な原因の1つとしてあげられるのは、目の疲れです。
人間の目には、カメラにおけるレンズの役割を持つ「水晶体」という組織があります。

水晶体は、まわりを囲む「毛様体筋(もうようたいきん)」という筋肉が緊張したり弛緩することで自らの厚みを変え、見るものに対するピントを調節します。
たとえば、近くを見る場合は毛様体筋が緊張して水晶体が厚みを増すことでピントを合わせるのですが、この緊張が長時間におよぶと毛様体筋は筋肉疲労を起こします。

この時、急に遠くを見たりすると、毛様体筋の緊張が解けるまでに時間がかかってピントが合わず、一時的にかすんだりぼやけて見える場合があります。
これが、目の疲れによって起きるかすみの正体です。

加齢(老眼)

加齢もまた、目がかすむ代表的な原因の1つです。
水晶体の弾力性や毛様体筋の緊張力は年齢とともに衰えていきます。その結果、目のピント調節機能が低下し、遠くは見えやすく近くは見えにくい状態になります。

これが加齢による目のかすみの正体である「老眼」です。
よくいわれる「目の前の新聞の文字がぼやけて見える」という状態は、近くが見えにくくなる老眼の典型的な症状といえるでしょう。

老眼は誰にでも起きる老化現象の1つで、早ければ30代後半から自覚し始める場合がありますが、目を酷使する場面の増えた現代では、老眼の始まる年齢が若年化してきているともいわれています。



コンタクトレンズの長時間装用

コンタクトレンズを基準以上の長時間装用し続けることで目が疲れ、乾燥し、場合によっては角膜に傷がつくことで、目がかすむ場合があります。

ドライアイ(目の乾き)

目の乾き(乾き目)や「ドライアイ」によってもまた、目のかすみは起こります。
普段、目の表面は涙腺から分泌された涙に覆われて保護されています。

しかし、なんらかの原因で涙の分泌量が減少したり、涙の成分バランスが崩れて均等に行き渡らなくなると、目は潤いを保ちきれずに乾燥してしまいます。
この症状が常態化し、目の表面に傷がついてしまう病気がドライアイです。

涙の行き渡り具合や目の表面についた傷などによって目がかすむことがある他、目の充血やかゆみ、不快感、目やに、ゴロゴロとした違和感といった症状が現れる場合もあります。

白内障

「白内障」は、目の中の水晶体が白く濁っていく進行性の病気です。
元々は透明の水晶体が濁ることで、視界全体がフィルターを通したようにかすんだりぼやけて見える場合があります。


原因の多くは加齢によるもので、水晶体は誰でも年齢とともに濁っていきます。いわば老化現象ともいえますが、個人差があり、早ければ40代で発症する方もいれば、高齢になってもほとんど症状を感じない方もいます。

緑内障

緑内障画像

「緑内障」は、主に眼圧(眼球内部の圧力)の上昇が原因で視神経に障害が発生し、目の視野が狭くなっていく進行性の病気です。
目に入ってきた情報を脳に伝達する役割を持つ視神経に障害が起きることで視野の一部が欠けて、ものがかすんだりぼやけて見える場合があります。

慢性緑内障の進行は非常にゆっくりで、症状を自覚するまでに時間がかかることが多く、気がついた時には視野がかなり狭くなっている場合もあります。

一方、目の痛みや頭痛、吐き気といった症状が急激に進行し、早急に治療を開始しなければならない急性緑内障もあります。
慢性、急性ともに、一度障害が発生した視神経は元に戻せないだけでなく、治療が遅れると失明に至る場合もあります。


糖尿病網膜症

「糖尿病網膜症」は、「糖尿病」の影響で目の中の「網膜」に障害が発生する病気です。
糖尿病による高血糖(血液中の糖分過多)のせいで固まりやすくなった血液が、網膜に走る毛細血管を詰まらせたり、出血させるといったさまざまな障害を起こし、視力が低下することでものがかすんだりぼやけて見える場合があります。

末期にまで至ると失明することがあるにもかかわらず、かなり状態が悪化するまで自覚症状がない場合もあるという重篤性の高い病気といえます。

ぶどう膜炎

目の中の外周に近い部分を囲むように並んでいる「虹彩(こうさい)」「毛様体」「脈絡膜」という組織をまとめて「ぶどう膜」といいます。このぶどう膜に起きる炎症が「ぶどう膜炎」です。
目の中でも特に血管の多いぶどう膜は、血流を通じて全身の他の場所で発生した炎症からの影響を受けやすく、特に「ベーチェット病」「サルコイドーシス」「原田病」といった自己免疫疾患との合併症という形でぶどう膜炎が発生するケースが少なからずあります。

目がかすむ他に、目の痛みや充血、視力の低下、視界に小さいゴミのようなものが漂って見える「飛蚊症(ひぶんしょう)」といった症状が現れる場合もあります。
また、隣接する網膜にも影響をおよぼしやすい傾向があり、失明の可能性もある重篤性の高い目の病気を併発する場合もあるなど、症状の広がりや重症化が心配される病気でもあります。

目以外の病気の可能性も

目のかすみとともに激しい頭痛や吐き気が起きた場合、もしかしたらそれは目の病気ではなく、脳動脈瘤による「くも膜下出血」が原因である可能性もあります。急性緑内障と同様、早急に病院を受診し、治療を開始する必要があります。


目がかすむ時の対処法

目がかすむ原因が病気以外、すなわち一時的な目の疲れや乾きなどであれば、自分で対処することで解消できる場合もあります。
ただし、対処しても改善しない場合は病気が原因かもしれないので、早めに眼科を受診しましょう。

主に以下のような方法に効果が期待できそうです。

1.目の疲れを解消する

目が疲れた原因として思い当たる行動をできるだけ控えるとともに、睡眠時間を増やして目の疲労回復を促しましょう。蒸しタオルをあてるなどして目を温めても効果的です。

2.目の乾きを解消する

空調の効いた環境下では加湿器を使うなどして、目の乾きを解消しましょう。また、乾きがひどい場合は、成分が涙に近い人工涙液タイプの目薬を使っても効果的です。

3.コンタクトレンズの装用時間を減らす

可能な場面ではメガネで代用するなどして、コンタクトレンズの装用時間をできるだけ減らし、目の疲れや乾きの悪化を防ぎましょう。

4.市販の目薬を使用する

目薬

目のかすみに効果があるものや目のピント調節機能を助けるものなど、感じている症状に合った市販の目薬で改善を図りましょう。
ただし、1週間程度たっても効果を感じない場合は使用をとりやめて、眼科を受診しましょう。



目のかすみの検査と治療

ここでは視力や屈折といった基本的な検査以外で眼科の受診時に行われる主な検査と、病気ごとの治療法をご紹介します。
なお、点眼や内服などの投薬にあたっては、量や回数、間隔といった医師の指示を治療が終了するまでしっかりと守りましょう。

目のかすみの検査

Patient during an eye examination at the eye clinic

ここでは目がかすむ原因となる可能性のある病気において行われる主な検査をご紹介します。

1.眼圧検査

眼圧に異常がないかを調べます。眼圧と関係の深い緑内障の診断に役立ちます。

2.細隙灯顕微鏡検査(さいげきとうけんびきょうけんさ)

細隙灯と呼ばれる細い帯状の光で目を照らし、顕微鏡を通して目の中に異常が発生していないかを調べます。
目がかすむ原因がなんらかの目の病気であると疑われる場合は、この検査で特定を試みます。

3.眼底検査

薬で瞳孔(どうこう)を開いた目に光をあてて内部を観察し、眼底(眼球内部の奥)にある視神経や網膜などの状態を調べます。
特にこれらの組織と関係の深い緑内障や糖尿病網膜症、ぶどう膜炎などの診断に役立ちます。
また、眼底の状態をより細かく調べるために、蛍光色素入りの造影剤を静脈注射して撮影する蛍光眼底造影検査などをあわせて行う場合もあります。

4.視野検査

視野に欠けている部分がないかを調べます。主に緑内障の診断に役立ちます。

5.隅角検査(ぐうかくけんさ)

眼球内部に圧力を与えている「房水(ぼうすい)」という液体の循環に深く関係する「隅角」という排出口の状態を調べます。主に緑内障の診断に役立ちます。

6.シルマー試験

涙の分泌量を調べます。ドライアイの診断に役立ちます。

7.涙液層破壊時間(BUT)検査

染色液を点眼した目の表面を観察し、涙の質や安定性を調べます。ドライアイの診断に役立ちます。

8.染色検査

染色液を点眼した目の表面を観察し、傷の有無を調べます。ドライアイの診断に役立ちます。

ドライアイの治療

点眼薬での治療が基本となります。症状の重さに応じて、人工涙液や角膜の傷を修復する薬剤などを点眼することで治療を進めます。
一方、薬剤では効果が得られなかった場合、涙の排出量を抑えるために「涙点プラグ」と呼ばれる栓で排出口を塞ぐ治療が行われる場合もあります。


白内障の治療

症状がそれほど進んでいない段階では、進行を遅らせる点眼薬で治療します。
やがて日常生活上のさまざまな場面で不自由を感じるほど症状が進行したら、手術による治療を行います。

手術は目の中の水晶体と人工の「眼内レンズ」を置き換えるという方法で行われ、比較的短時間で終了する場合がほとんどです。また、最近では日帰りで手術を受けられることも多くなってきています。

術後は眼内レンズによる目の見え方に若干の慣れが必要になる場合もありますが、基本的に白内障は、この手術によって根治が可能な病気といえるでしょう。

緑内障の治療

それ以上の進行を阻止するために、眼圧を下げることを目的として治療が進められます。
ほとんどの場合、まずは薬剤の点眼と必要に応じた内服による治療が基本となります。

薬剤で効果が得られなかった場合はレーザー照射によって房水の流れを改善する治療が、さらにそれでも効果が得られなかった場合は手術によって同様の治療がそれぞれ行われます。

緑内障によって一度損なわれた視野は元に戻せないので、少しでも早い段階で発見するために、40歳を過ぎたら定期的に眼科を受診することが重要です。

糖尿病網膜症の治療

生活習慣の改善などによる血糖コントロールで糖尿病自体の治療を進めることが基本となります。
初期の段階なら、この方法で症状が改善する場合もあります。

それでも症状が悪化してしまった場合、網膜へのレーザー照射でそれ以上の悪化を阻止します。
さらに、網膜剥離が起きたり、「硝子体(しょうしたい)」と呼ばれる眼球内の大部分を満たすゼリー状の組織に出血が起きた場合、網膜を元の位置に戻したり、硝子体を除去する手術を行います。


しかし、このレーザー治療や手術でも網膜を完全に元の状態へと戻すことはできないので、まずはそこまでの悪化を許さないよう、自覚症状を待つことなく定期的に眼科を受診して、網膜の状態把握に努めることが重要です。

ぶどう膜炎の治療

根治の難しいぶどう膜炎の治療は、炎症を抑えるためにステロイド薬を点眼し、必要に応じて内服、点滴といった全身的な投与も追加するといった対症的な方法が中心となります。

また、ぶどう膜炎に合併して起きる可能性のある目の病気の中には、症状を自覚するまでに時間がかかることのある緑内障や網膜剥離といった重篤性の高いものもあるので、症状が落ち着いている時期でも定期的に医師の診察を受けながら、合併症の予防や早期発見に努めることが重要です。


目のかすみの予防

目のかすみを予防するためには、日々のセルフケアで目の疲れや乾きといった目に負担のかかる要素をできるだけなくすことが必要です。
その上で、目になんらかの異変を感じたら、早めに眼科を受診することもまた大切です。


規則正しい生活や十分な睡眠、栄養バランスのよい食事といった健康的な生活習慣を維持するとともに、以下のような対策をとれば効果が期待できそうです。

1.目を使いすぎない

テレビを見たり、本を読んだり、パソコンやスマートフォンを使う時間が長くなる場合は、定期的に目を休める時間を設けましょう。

2.目にやさしい環境を作る

テレビを見たり、本を読んだり、パソコンやスマートフォンを使う場所では、照明を目の負担にならない明るさに調節しましょう。
また、テレビやパソコンは目との距離を十分に離し、画面が目線よりも下になるよう位置を調節しましょう。

3.目を乾燥や紫外線から守る

パソコンやスマートフォンの使用中は意識的にまばたきの回数を増やしましょう。
また、空調の効いた環境下では風が目に直接当たらないようメガネをかけたり、屋外ではUVカット効果のあるサングラスや日傘を使いましょう。

メガネやコンタクトレンズは適切な度数と方法で

矯正不足のメガネやコンタクトレンズを使い続けないよう、年に1回は度数が合っているかを眼科などで確認しましょう。
また、コンタクトレンズの装用時間は基準内に収め、決められた方法での手入れを徹底しましょう。

目のかすみのポイントまとめ

目のかすみは、病気以外が原因の場合、自分で対処すれば解消できる可能性もあります。
一方で、病気が原因の場合、自覚症状が現れにくかったり、失明に至る可能性のある病気も少なくありません。


正確な原因の把握は素人では難しく、つい甘めに判断してしまいがちですが、原因を見誤って治療が遅れ、目に深刻なダメージを与える結果になる可能性も全くないわけではないのです。

目のかすみが少しでも続いたり、再発を繰り返すようなら、早めに眼科を受診しましょう。
また、自覚症状がなくても眼科で定期検診を受け、病気の早期発見や目の健康維持に努めることが大切です。



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