2017.02.01

声のかすれ、声が出にくい原因と治し方について

この記事の監修ドクター

監修ドクター
たてもと耳鼻咽喉科クリニック
立本 圭吾 医師

京都府京都市東山区三条大橋東入ル大橋町94 三条鈴木ビル5F

075-752-3387

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声がかすれる

声は、喉頭(こうとう)にある「声帯」という左右一対の襞(ひだ)を振動させることによって出すことができます。
この声帯に炎症や腫瘍といった異常が起こると、うまく振動させられなくなり、声が出にくくなってしまいます。
これにより、「嗄声(させい)」と呼ばれる普段とは違った違和感のあるかすれ声(いわゆる「声がかれている」状態)になることがあります。

 

原因は、風邪などによる炎症である場合が多いですが、ポリープやがんなどの手術を必要とする病気も考えられます。
放置しても治らないばかりか悪化する可能性が高いので、専門医の診察、治療を受けなければなりません。
今回は、声がかすれたり、出にくくなる原因とその治療法についてご説明していきましょう。


声のかすれ、声が出にくい原因

①急性喉頭炎

カラオケ

喉頭の粘膜に炎症が起こることを喉頭炎といいます。
中でも、風邪のウイルスや細菌に感染して起こる炎症を「急性喉頭炎(きゅうせいこうとうえん)」と言います。
カラオケやスポーツの応援などで喉を使いすぎた時や、 アレルギー反応や過度な喫煙や飲酒などでも起こることがあります。

軽い炎症なら数日で自然におさまり、2週間以上続くことはほとんどありません。ただし、症状が慢性化している場合は、他の疾患の可能性がありますので、耳鼻咽喉科や内科で診察を受けるようにしましょう。

②声帯ポリープ

声帯ポリープは、喉を酷使した時にできる、良性の腫瘤(しゅりゅう)です。
声帯に負担をかけ過ぎたために、粘膜の毛細血管が内出血を起こしてできた「血豆の」ようなものです。
このポリープに邪魔されて声帯がうまく閉じなくなったり、振動に悪影響を与えたりすることで声がかすれます。

原因は喉の使い過ぎや喫煙がほとんどです。歌手やアナウンサーなど、職業柄大きな声を出すことが多い方はなりやすいようです。急性喉頭炎などで喉に違和感や痛みがあるような時に無理をして大きな声を出したりすると、声帯ポリープのできるリスクが高まります。

症状としては、初期の段階では、喉の奥になにか詰まったような違和感が生じます。イガイガした感じで、この違和感はうがいをしても残ります。進行していくと、声がしゃがれる・かすれるといった「嗄声」が現れます。
また、空気が漏れるような感覚や、食べ物が飲みにくくなるといった症状が起こる場合もあります。

③声帯結節

声帯結節(せいたいけっせつ)も、声帯ポリープ同様、声帯にできる良性の腫瘤です。
声帯プリープが内出血による「血豆」であるのに対し、声帯結節は、摩擦によって固くなった「タコ」のようなものです。
長期に渡り喉を酷使し続けていると、左右の声帯のもっともよく接する部分がこすれあって、粘膜の下に体液が溜まったり、筋が厚くなることで結節となります。

声帯ポリ-プと同様、無理な発声を続けることが原因となって起こりますので、職業柄声を出すことの多い方は注意が必要です。成人では女性が比較的なりやすいと言われています。
また、元気で活発な小児に起こりやすい病気でもあり、ガラガラ声が気になったら医師に診てもらうとよいでしょう。
ただし、声変わりの時期を過ぎると自然に治ってしまう場合が多く、日常生活に支障がない限りは経過を見ることになります。

声帯結節ができると、声が正常の状態のように出なくなり、嗄声の症状が起こります。常に声がかすれるわけではなく、日によって声の調子に波があり、長く話していると声が出にくくなってくるケースが多く見られます。


④反回神経麻痺

反回神経は声帯を動かす筋肉をコントロールする神経です。
この筋肉が麻痺することで、声帯が動かなくなってしまう障害を反回神経麻痺と言います。

反回神経は、脳幹から枝分かれし、いったん声帯の横を素通りしたのち、左右の鎖骨あたりから胸郭内を通り、食道の両側や甲状腺の裏側を抜けて声帯の筋肉につながるという大変複雑な経路をたどっているため、途中のどこか1か所にダメージがあるだけで声帯に影響が出てしまいます。

脳幹付近では頸静脈孔(けいじょうみゃくこう)腫瘍、頸部では甲状腺がん、胸部では肺がん、食道がん、乳がん、大動脈瘤などの重大な病気が原因となっている可能性があります。
ダメージを受けた箇所より、声帯の左右どちらかだけが麻痺する場合と、両方とも麻痺する場合があります。
片側の声帯のみ麻痺すると、声帯がスムーズに振動しなくなるためかすれ声や息切れが起こりやすくなり、両側の声帯が麻痺すると声が出なくなったり、呼吸困難に陥ったりします。症状が出たらいち早く医師の診断を経て、適切な治療を受ける必要があります。

⑤声帯萎縮

加齢などにより声帯がやせ衰えてくる症状です。
声帯の容積が減少することで、2枚の声帯がうまく重ならなくなるため声を出そうとしても隙間ができてしまい、声がかすれたり、声を出しにくくなったり、発声が弱くなったりといった症状が起こります。
普段声をたくさん出していた人が、仕事を引退するなどして喉を使わなくなった場合などには要注意で、70歳以上の方のおよそ7割がこの病気を発症していると言われています。

⑥喉頭がん

喉頭はいわゆる「のどぼとけ」のあたり、食道と気道の分かれ目の部分に位置します。この部分のがんを喉頭がんと呼びます。先ほどから何度もご説明の中に登場している声帯はこの喉頭の中心部にあたる「声門」にあります。これより上を声門上、下を声門下と呼び、同じ喉頭がんでも3つの部位に分類されます。

喉頭がんは年齢では60歳以上、性別では圧倒的に男性に多いという特徴があります。原因はタバコやお酒の継続的な刺激で患者の9割は喫煙者と言われています。
がんの発症した部位により最初の症状は異なります。声門がんではほぼすべての場合声のかすれがみられます。進行してくると痰に血がまざったり、息を吸うのが困難になってきます。

声門上がんは、まず喉の異物感や、固形物を飲み込んだ時痛みが出たりします。進行すると声門へがんが移っていき、声門がんの症状が出てきます。
声門下がんは初期は症状がでない事が多く、進行すると嗄声や呼吸への影響が出てきます。


原因別 治療方法について

①急性喉頭炎

急性喉頭炎と診断されたら、なるべく大声を出さないようにしましょう。
喫煙や飲酒、香辛料など喉への刺激となるものは避けたほうがよいでしょう。
また、空気の乾燥は喉頭の粘膜を傷めますので、加湿器などで部屋の湿度を60~70%に保ちましょう。
こまめな水分補給も有効です。症状がひどい時には、解熱鎮痛剤や咳止めなど粘膜の炎症を抑える薬を服用してください。
こじれると慢性化したり、気管支炎・肺炎に進行したりします。軽い症状でもしっかり治しておくようにしましょう。

②声帯ポリープ

初期の場合は発声を控え、声帯に負担をかけないようにして炎症を抑えれば、自然に治癒することもあります。まずは安静第一。普段声を出すことが多い方もなるべく長い時間話さないように、また大きな声をださないようにしましょう。

発声の仕方を見直し、喉に負担がかかる話し方をしている場合には、発声法の指導を受けます。
さらに、炎症が強い場合は、炎症を抑える薬を服用したり、ステロイド薬を吸入したりします。
それでも改善されない場合には、手術を行うことになります。具体的な手術のやり方等については後でご紹介します。

③声帯結節

声帯

治療法としては、基本的には声帯ポリープと同じく安静第一。声を出すのを控えることで自然治癒する場合も多くみられます。安静にしていても治らなかったり、硬くなった部分が大きくなってしまった場合には手術を行うことになります。
具体的な手術のやり方等については後でご紹介します。



④反回神経麻痺

声帯を動かす筋肉を支配している反回神経が麻痺してしまう病気なので、治療は厄介です。一度機能を失った神経を元に戻すのは現代の医学では難しいことですので、音声指導と外科的な治療を組み合わせながら、少しずつ症状を改善させていくことになります。

反回神経麻痺には、片側麻痺と両側麻痺がありますが、片側麻痺の場合は専門家の指導の下で発声練習を受けたり、声帯にコラーゲンや自家脂肪を注入する手術を受けることで、薄くなった声帯を厚くし、日常生活に支障がないくらいまで回復させることが可能です。

両側の麻痺の場合は、のど仏の骨に穴を開け、シリコンを入れる「甲状軟骨形成術」や、声帯の後ろ側の軟骨の角度を変える「披裂軟骨内転術(ひれつなんこつないてんじゅつ)」などの外科手術により、声帯の位置を調整し直すことで症状が改善されます。

ただし、反回神経麻痺が起こる場合、甲状腺腫瘍や、肺がん、食道がんなどの重大な病気が原因となっていることもあり、その場合はまず原因となっている病気の治療を優先することになります。

⑤声帯萎縮

声帯萎縮は、基本的には老化現象です。声帯に強い力が働くようにするヴォイストレーニング(音声治療)を行うことで、老化の進行を遅らせるのが主な手段となります。さらに進行してしまった場合には、コラーゲン、自家脂肪などを声帯内に注入する外科的手術を行うこともありますが、手術後も音声治療を行う必要があります。

⑥喉頭がん

喉頭がんの治療法は、病期によって異なります。比較的発見が容易ながんで、早期に発見された場合には放射線を使うことによって声を出す機能の温存も重視した治療を行います。

しかし、ある程度がんが進行してしまっている場合には、放射線治療だけでは困難なため外科手術を行うことになります。
この場合、声門を含めた喉頭全部と頸部リンパ節をすべて摘出する「喉頭全摘術」が一般的です。
一部を切除する部分切除術もありますが、再発の危険性が高まるため早期の場合以外あまり行いません。
喉頭をすべて摘出するということはつまり声を失うということになりますので、声帯の代わりに食道を使って発声する「食道音声」の練習や、「電気喉頭」などの器具の使用など代用音声の方法を検討する必要もあります。

なお、最近では、放射線治療と抗がん剤投与の併用により、可能な限り切除をせず喉頭を残す治療も行われています。

声帯ポリープや声帯結節の手術について

声のかすれの原因となる病気のうち、最もポピュラーな声帯ポリープと声帯結節の手術について詳しくご説明しましょう。


手術の方法

手術

手術は、声帯ポリープ、声帯結節とも、全身麻酔の上、顕微鏡下喉頭微細手術(ラリンゴマイクロサージェリー)と呼ばれる手法で行われます。
喉に金属の筒状の器械を差し入れ、患部を直接顕微鏡で見ながらポリープや結節を切除します。 手術時間は1時間ほどです。器械を口に入れる際に咽頭に当たるため、痛みを感じたり、あるいは味覚障害を起こすこともありますが、多くの場合、術後1~2か月程度で治ります。手術費用の目安としては、入院期間を3~5日、健康保険3割負担として、50,000~100,000円程度となります。

また、小さなポリープに限られますが、外来での日帰り手術が可能な場合もあります。局所麻酔で声帯表面の局所麻酔をした後、ファイバースコープを用いてポリープを摘出します。手術時間は麻酔時間を入れて30分から1時間程度です。

全身麻酔と違い、意識がある状態での施術なので、発声の状態を確認しながら手術することができるのが利点ですが、嘔吐反射が強すぎる場合は、途中で中止する可能性もあります。手術費用の目安としては、10,000円から15,000円程度。保険診療内での手術なので入院を要する手術に比べ費用が抑えられます。

術後のケアについて

ポリープや結節を切除した部分が再生するのを待つため、一定期間(基本的には5日程度)の沈黙が必要となります。ただし、あまり長い期間発声しないと喉の筋肉が衰えてしまいますので、一定期間安静にした後は、再発防止のための音声治療を受けることになります。

また、術後二週間程度は、飲酒・喫煙・刺激物は禁止です。また、強く力を入れるような作業、湯船につかっての入浴などもしばらくは避けます。

まとめ

声がかすれたり、出にくくなる場合、日頃の生活の中で喉に負担をかけていることが多く、その習慣を改善しない限り、例え手術をしても再発の危険性が高いと言えます。特に大声を出したり、声をたくさん使う必要のある環境にある場合は、声の出し方などにも注意し、喉を労わりましょう。また、喫煙や飲酒、辛い物などの刺激物も喉の疾患の要因のひとつです。過度の摂取は避けましょう。


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