2017.01.26

耳が臭いのは病気の疑い?対策や治す方法について

この記事の監修ドクター

監修ドクター
たてもと耳鼻咽喉科クリニック
立本 圭吾 医師

京都府京都市東山区三条大橋東入ル大橋町94 三条鈴木ビル5F

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耳が臭い

髪や頭皮の臭いは何となく気づくことがありますが、耳の臭いって自分ではなかなか気づけないですね。
様々な理由で耳が臭うケースがあります。耳の後ろだったり、耳たぶ(耳介)裏だったり、耳の中だったり、耳周辺のいろいろな場所から臭いが発せられる場合があるんです。
今回は、専門医の監修の元、耳の臭いの原因と治す方法について説明します。



臭いの原因とは

耳の臭いの原因として、大きく以下の3つが上げられます。

・衛生管理の不徹底
・分泌物に伴うもの
・病気が原因のもの

以下、それぞれの原因について説明していきましょう。

衛生管理の不徹底による臭い

耳を洗う

まず挙げられるのが、耳周辺の洗い忘れです。お風呂に入ったときに耳を洗わない人が意外と多いのです。
耳に水が入るのが怖いという人もいるかもしれませんが、耳の周囲は皮脂腺などが集まっているため、意外と分泌物が多く排出されています。
また、汗腺もあって、これらが雑菌によって分解されたりして臭いを発することがあります。入浴時にていねいに洗って清潔を保つ必要があります。

耳垢は、耳垢腺からの分泌液が外耳道の角質や外部からのゴミなどと混ざった老廃物です。人によっては、耳垢が臭いの元となることがあります。

耳垢には乾いたタイプと湿ったタイプがあり、その性質は遺伝によって決まってきます。日本人の大半(8割以上)は乾いたタイプです。湿ったタイプの耳垢の人の場合、強い体臭の原因の一つであるアポクリン腺が多く(耳垢腺もアポクリン腺の一種)、そのため耳垢も臭うことがあるようです。

分泌物に伴う臭い

耳の裏や外耳道には皮脂腺や耳垢腺、汗腺が集中しています。こうした腺からの汗や分泌物は脂質やタンパク質を多く含み、それが常在菌で分解されて臭いを発します。洗い忘れなどで汚れとして溜まっている場合にも、それらが臭いの元となります。

また、加齢臭の原因であるノネナールは耳の後ろからも発生しています。ノネナールは皮脂腺の中で脂肪分が酸化してできます。食用油が古くなって酸化すると嫌な臭いを持つように、加齢によって皮脂腺の脂肪分も酸化するため、加齢臭となって臭ってくるのです。

病気が原因の臭い

中耳炎や外耳炎など、耳に炎症が起きている病気では耳漏(耳垂れ)を伴うものがあります。これは細菌やウイルスに感染して患部から出てきている膿で、これらが臭いの元となっているケースがあります。

また、粉瘤といって、耳周辺の皮下に角質や皮脂などの老廃物などが溜まってできた良性の腫瘍ができる場合があります。粉瘤は毛穴がある場所にできます。皮脂腺は毛穴を通して皮脂を分泌しますから、皮脂腺が集まっている耳の裏などは粉瘤ができやすい部位の一つです。

粉瘤にはヘソと呼ばれる開口部があり、そこから細菌が侵入して炎症を起こすことがあります。細菌が腐敗臭のような悪臭を放つ代謝物をつくるため、粉瘤のヘソが破れたような場合にはとても嫌な臭いがします。

ごく稀なケースですが、先天性耳瘻孔といって、生まれつき耳の付け根部分に穴が空いている人がいます。この穴が化膿した場合など膿などが発生し、嫌な臭いを放つことがあります。


耳の臭いの対処法

耳の臭いに対して、どのように対処すればいいのでしょうか?
日常生活で少しだけ気をつければいい場合や、生活習慣を改善したほうがいい場合、病院に行って治療を受けたほうがいい場合など、原因ごとに説明していきましょう。

耳を清潔に保とう

清潔

汗をかいて皮脂が溜まりやすい耳周辺をきれいに保つには、やはり入浴の際にていねいに洗うことです。
耳はデリケートな構造をしています。耳介(耳たぶ)は3分の1が軟骨でできていて、それを薄い上皮が覆っています。さらに外耳道は皮下組織がほとんどなく、傷つきやすいので注意が必要です。硬いタオルや垢擦りなどでゴシゴシと洗うと傷がついて炎症を起こしやすく、病気の原因となります。

入浴時に耳を洗う方法

耳たぶや耳の後ろを洗う場合は、泡立てた石鹸を手指につけて、優しく揉むように洗うといいでしょう。耳にはたくさんのツボが集中していますので、マッサージするように手指を動かして、ツボを刺激するのもいいかもしれません。
耳の後ろ側を洗う際には、耳の付け根から耳たぶの方向へ撫でるように洗うことで、リンパの流れを促進し、老廃物を出しやすくする効果もあるようです。

よく、お風呂やプールで耳に水が入って中耳炎になったという話がありますが、これは間違いです。外耳と中耳の間には鼓膜があって、健康な状態であれば外部から中耳に水が浸入することはありませんので、安心して洗ってください。それでも気になるのでしたら、タオルを絞って、耳の外周、耳の後ろ、耳たぶを軽くこすって洗います。

耳の穴は届く範囲だけ

耳の穴については奥まで洗う必要はありません。小指などにタオルを巻いて、届く範囲を軽くこするだけで十分です。
洗い流す際もシャワーを上から欠けて流せば、耳に水が入ることはありません。

擦りすぎに注意!

耳の臭いの元となるのは皮脂腺から分泌される皮脂でした。ただ、皮脂にもちゃんと役目があって、皮膚を健康な状態に保つために潤いを与えています。これをゴシゴシと擦って取り過ぎてしまうと、皮膚を守るために皮脂の分泌が活発になってしまい、臭いを取るという観点からは返って逆効果になることもあります。

耳掃除

耳掃除はしたほうがいいという意見と、しなくていいという両論があります。
耳垢はあくまで「垢」なんだから、清潔を保つには取ったほうがいいだろうと考えがちです。実際、耳垢に細菌が繁殖して臭いの原因となることもあるようです。
しかし、耳垢にも役割があるというのが、しなくていい派の論拠です。その役割とは、

・外部からのゴミを吸着して耳の奥へ入れない
・細菌の感染予防に効果のある物質が含まれていて、細菌の繁殖を抑えている
・耳の薄い皮膚を保護している
・虫の侵入を防ぐ

などです。さらに、耳は新陳代謝機能として奥から外へと皮膚が移動するようにできていて、しゃべったり食べ物を咀嚼する動作でも自然と耳垢も外側へと移動して出てくるということです。これをマイグレーションといいます。

耳垢塞栓といって、耳垢が詰まって聞こえにくくなることがあるようです。耳掃除をしたほうがいい派の論拠でもありますが、これも実は無理な耳掃除が原因であることが多く、掃除するつもりがかえって耳垢を奥へ押し込んでいることもあるようです。

高齢者の場合には、マイグレーション機能が低下しているケースもあるため、ある程度は耳掃除が必要な方もいらっしゃいます。また日本人には少数派ですが、湿性の耳垢の方は耳垢が溜まりやすいため、耳詰まりを起こしやすいといわれています。

清潔を保つという観点から見ると、頻繁な耳掃除は必要ないといえるでしょう。むしろ、耳掃除が原因で外耳道や鼓膜を傷つけて、感染症を引き起こすリスクのほうが危険なようです。


分泌物に伴う臭い対策

臭いの原因を溜めない

対策としては、第一に、臭いの原因となるものをこまめに洗い流すことです。
分泌物の代表は汗ですね。「汗臭い」という表現もあるように、汗は嫌な臭いの代表でもあるようです。でも実は、汗そのものに臭いはありません。皮膚にいる常在菌によって分解されて臭いを発します。加齢臭の原因であるノネナールも、酸化して悪臭となります。
耳の裏にはアポクリン汗腺や皮脂腺が集まっているため、臭いの元となりやすいのです。分泌を止めることはできませんので、こうした分泌物を溜めないことが第一です。

健康的な食生活や生活習慣を心がける

また、体臭全般にいえることですが、健康的な食事・生活習慣を心がけ、過度のストレスを避けることが、臭いの改善につながります。

皮脂の酸化を抑えるためには、動物性脂肪の摂取を抑え、抗酸化物質のビタミンC、Eやポリフェノールを多く含む食品を摂るように心がけます。
20分ほどのウォーキングなど有酸素運動を続けることで中性脂肪などを減らすことも、臭いの原料を減らすことにつながり効果があります。
強いストレスを受けた際に分泌される脂汗などもノネナールなどと混ざることで、加齢臭を強めたりします。ストレスを軽減することも対策の重要な要素です。

加齢臭は実はノネナール単体の作用ではなく、タバコの臭いや、二日酔いのアルコールや汗の臭い、その他口臭などの体臭が混合した臭いであり、それが「オヤジ」と呼ばれる年代の男性のイメージ臭として認知されているものです。
ノネナール自体は女性も出しています。しかし、身だしなみや周囲に対して気を配っているため、「おばさん臭」といわれることはほとんどありません。同じノネナールの臭いであるのに「古本の臭い」などと表現されて、あまり不快感は持たれません。

生活習慣や食生活を改め、清潔で健康に過ごして、ストレスを溜めないこと。これが、体調管理とともに臭い対策ともなるようです。

病気が原因の臭い対策

耳

中耳炎

耳の病気で臭いが気になるのは、やはり耳漏(耳垂れ)を伴う中耳炎や外耳炎、鼓膜炎ではないでしょうか。
耳漏は炎症によって化膿した患部から出てくる膿で、白血球や化膿部位の組織、細菌などが含まれています。血液や滲出液が混ざることもあります。漿液性、粘液性、膿性、血性、粘液膿性など、性状によって様々です。これらが臭いの原因になることがあります。

中耳炎で耳漏が出る場合には、すでに膿が鼓膜を破って外に出てきています。強い痛み、発熱とともに聞こえにくさも感じている状態ですから、一刻も早く耳鼻科で治療を受ける必要があります。

真珠腫性中耳炎は血液が混ざった悪臭を伴う耳漏が特徴です。この病気は骨組織を圧迫壊死させ、時には髄膜炎から敗血症へと至り、命の危険もある重大な疾病です。この病気は中耳炎を繰り返すことで起こります。したがって、急性、慢性の中耳炎を確実に治療することが重要です。

外耳炎

外耳炎の原因の一つが耳掃除です。耳掻きなどで外耳が傷つき炎症が起きます。耳漏、痒み、痛みなどの症状が出ますが、軽度であれば自然と治ることも多いようです。痒みを伴いますので、ついつい痒いところを触ってしまい、炎症を悪化させることもしばしばです。症状が続くようであれば耳鼻科を受診しましょう。

シャンプーや化粧品の化学物質の刺激で外耳道に湿疹ができる外耳道湿疹の場合、強い痒みを感じ、湿疹から滲出液なども出てきます。これが臭いの元ともなります。この病気はアレルギー反応ですので、病院で抗アレルギー薬などの処方をしてもらいましょう。

鼓膜炎

鼓膜炎には水疱性鼓膜炎と肉芽腫性鼓膜炎があります。このうち肉芽腫性鼓膜炎は細菌感染が原因で鼓膜に小さな穴が多数あきます。耳鳴りや耳が詰まった感じになります。痛みはさほど感じませんが、恒常的に耳漏に悩まされます。耳鼻科医による適切な治療が必要です。

粉瘤

耳介や耳の後ろは粉瘤ができやすい部位です。粉瘤は嫌気性のプロプリオバクテリウムが増殖して炎症を起こしています。粉瘤のヘソからドロドロとした膿が出てきて腐敗臭を発します。粉瘤は内容物が出たとしても、袋が残っている限り何度でも再発します。

根本治療は手術による摘出です。炎症を起こしている粉瘤の摘出はできないため、抗生物質の服用や切開して膿を出して炎症を鎮めてからの手術になります。この間、2ヵ月ほどかかります。
手術自体は30分ほどの日帰り手術が可能です。

最近は化膿した状態でも排膿から袋の摘出まで一気に行う術式を取る医師もいるようです。
まずは耳鼻科の医師に相談してみましょう。場合によっては形成外科を紹介されることがあるかもしれません。

先天性耳瘻孔

先天性耳瘻孔は耳に小さな穴が空いている疾患です。炎症がおこらなければ放っておいても問題はありません。
この穴は、胎児の時に耳介が形成される過程で隙間ができてしまい、それが管状の穴として残ったものです。穴は袋状の組織を持っていて、人によっては軟骨を抜けて深く続いている場合があります。

この袋に泥状の白い分泌物が溜まることがあり、これが嫌な臭いを発します。またこの分泌物が感染して炎症を起こすと袋ごと赤く腫れて痛みを感じます。皮下組織にまで炎症が及ぶと膿が溜まり、激痛が走ります。
炎症が軽度であれば、抗生剤や消炎薬の服用で対処します。しかし、重度になって膿瘍ができるようになると切開して膿を出す必要があります。

根本治療は袋の摘出手術です。ただ、場合によっては袋が外耳道にまで続いていたり、迷走していたりして、取り切れないケースもあるようです。


おわりに

耳が臭い場合の原因と対処方法、病気のリスクについてまとめました。
耳の周囲には多くの皮脂腺や耳垢腺、汗腺が集中しているため、生理現象によって臭いの元になる物質が分泌されやすくなっています。それだけに耳周囲の衛生環境に注意を配る必要があります。

それと同時に外耳、鼓膜、中耳などの炎症による耳漏が臭いの原因となる場合があります。耳漏が出て病気が原因であることが明白な場合には、即座に耳鼻科を受診してください。

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