2016.11.15

医師が教える眼瞼下垂の原因と症状・治療方法

ドライアイ

眼瞼下垂(がんけんかすい)とは、「瞼(まぶた)」が上がりにくくなったり、目が十分に開かなくなってしまう病気の事です。

病状を聞くと思い当たる節があるかもしれませんが、病名だけ聞いてもピンと来ない人が大多数かと思います。まぶたは「眼瞼挙筋(がんけんきょきん)」と呼ばれる筋肉が持ち上げています。さらにその筋肉を動かしているのは「動眼神経(どうがんしんけい)」という神経です。眼瞼挙筋、動眼神経のどちらか、もしくは両方に問題・障害が生じると眼瞼下垂を発症します。
今回は医師の監修のもと、眼瞼下垂の原因と症状・治療方法についてお伝えします。


眼瞼下垂とは

眼瞼下垂は一言で言えば、「まぶたが重くなり、目が開きにくくなる状態」のことです。どの程度「開きにくい」かというと、顔を正面に向けた時に瞳孔の上までまぶたが上げられない程度です。
症状は片目だけの場合と、両目で発症する場合があります。
眼瞼下垂を発症するとまぶただけでなく、おでこのシワも気になり始める場合があります。眼瞼下垂の診断を希望して形成外科外来等の医療機関に相談に来られる患者さんは増加傾向にあります。これまでは、まぶたの問題より、おでこのシワの相談を行い、その診断の延長線で眼瞼下垂を発症している事が判明する場合が多いと言われていました。

眼瞼下垂の原因

眼瞼下垂の発症にはまぶたの筋肉や神経が影響しています。
眼瞼下垂の原因は、まぶたを動かす筋肉「眼瞼挙筋(がんけんきょきん)」もしくは、眼瞼挙筋を動かす神経「動眼神経(どうがんしんけい)」の一方、もしくは両方に問題が生じると眼瞼下垂を発症する場合があります。

眼瞼下垂を発症すると目が小さく見える、目つきが悪くなる等の問題が生じます。一般的には眼瞼挙筋の形成不全が原因となり発症する場合が多いため、片目で発症する場合が多く、両目で発症するケースは比較的少ないと考えられています。

眼瞼下垂には先天性の原因と後天性の原因があります

先天性の眼瞼下垂は生後1年以内に発症する場合が多いです。後天性の眼瞼下垂は生活習慣の影響、加齢による筋力の低下等が原因になって発症します。以前と比べて若い世代が眼瞼下垂を発症する例も増加傾向にあります。その原因はスマートフォンやPCの長時間閲覧、コンタクトレンズの長期着用、アイプチ・カラコンといった目元のメイク、頻繁に目をこすってしまうなどが主な原因だと考えられています。目をこする

眼瞼下垂を発症する主な原因例

1:ハードコンタクトレンズの長期間使用
2:スマートフォン・PCの長期間利用
3:アイプチ・カラコンといった過剰な目元メイク
4:加齢によるまぶた・皮膚の筋肉の緩み
5:花粉症・アトピー等のアレルギー疾患を患っており、目を頻繁にこすってしまう
6:顔面への大きな外傷
7:肥満等の影響で目の周りに脂肪が多い


眼瞼下垂の症状

眼瞼下垂には大きくわけると先天性と後天性の2種類に分類されますが、種類によって原因、症状、治療法、治療効果が異なります。最も発症数が多いのは後天性の眼瞼下垂だと考えられています。

眼瞼下垂の種類一覧

先天性眼瞼下垂

・単純先天性眼瞼下垂
・瞼裂狭小症候群 など

後天性眼瞼下垂

・腱膜性眼瞼下垂
・加齢性眼瞼下垂
・ハードコンタクトレンズ眼瞼下垂 など

神経に問題がある眼瞼下垂

・重症筋無力症
・動眼神経麻痺(脳梗塞、脳動脈瘤等)など

筋肉に問題がある眼瞼下垂

・ミトコンドリアミオパチー
・筋強直性ジストロフィー など

偽眼瞼下垂

・眉毛下垂
・眼瞼痙攣
・眼瞼皮膚弛緩症
・眼球陥凹
・小眼球症 など

先天性眼瞼下垂について

先天性眼瞼下垂は上眼瞼挙筋(じょうがんけんきょきん)という、まぶたを上げ下げする筋肉自体の発達、または、それを動かす神経の異常により発症します。

先天性眼瞼下垂を発症していると、まぶたは生まれつき下がっている状態です。先天性眼瞼下垂の約8割は片目のみで発症します。先天性眼瞼下垂を発症していても殆どの場合は視覚/視機能に問題・障害はないので手術を急ぐ必要はありません。

低確率ですが斜視や、弱視の原因になる場合や、これらの症状を合併症として発症する場合もあります。医療機関で相談・診断を行う場合がこれらの可能性を視野に入れて行いましょう。

後天性眼瞼下垂について

後天性眼瞼下垂は、元はまぶたが普通に開いていた人のまぶたが、徐々もしくは急に下がってきてしまう症状の眼瞼下垂です。

多くの場合、まぶたが数年間かけて徐々に下がってくる腱膜性(けんまくせい)の眼瞼下垂です。腱膜とはまぶたを上下させる上眼瞼挙筋の末端部に存在する膜の事です。

腱膜が伸び、緩んでしまった状態の眼瞼下垂を「腱膜性眼瞼下垂」と呼びます。「目が歳をとった事で細くなった」という人がいますが、加齢性の眼瞼下垂である場合もあります。

加齢性の眼瞼下垂の他にも硝子体手術・緑内障手術・白内障手術等の内眼手術や、ハードコンタクトレンズの長期装用者等も発症する場合があります。後天性眼瞼下垂のほとんどが腱膜性眼瞼下垂です。しかし、まれに筋肉や神経の問題で発症する事もあるので医療機関に相談する時には意識してみてください。

偽眼瞼下垂について

偽眼瞼下垂は眼瞼下垂を発症しておらず、眼瞼痙攣、眉毛下垂、眼球陥凹、眼瞼皮膚弛緩症、小眼球症を発症した影響で眼瞼下垂のような見た目になってしまう状態です。

偽眼瞼下垂を発症すると正常にまぶたが上がらなくなり、おでこにある前頭筋を無意識に使いまぶたを上げようとします。するとまゆげの位置があがるのでシワがおでこによります。
おでこのしわ

おでこの筋肉を使っても視野が狭かったり、確保できない場合は、下の方を見るのにアゴをあげるようになります。すると頭痛、肩こり、眼精疲労の原因になる場合があります。まぶたを上下させる筋肉の末端に存在する「上眼瞼挙筋腱膜」という膜は二重まぶたを形成する膜でもある為、眼瞼下垂を発症すると二重の幅が広くなったり、三重まぶたになったりします。

後天性眼瞼下垂の場合一部の症状では物が二重に見える「複視」を伴う場合があります。複視を発症した場合は眼科・内科等の医療機関で治療・診断を受けるようにしましょう。

眼瞼下垂を発症しているかの判断方法

また、眼瞼下垂であるか否かを判断する方法に「正面を見ている常態で瞳孔に上眼瞼がかかるか否か」を確認する方法があります。眼瞼下垂を発症している事がわかったとしても、次はどの種類なのかを診断する必要があります。

その際にも上眼瞼挙筋機能の測定が行われます。これは、まぶたを上下させる上眼瞼挙筋がどれくらい動いているかで判断します。おでこの力を使わないよう、まゆげ付近を押さえます。この状態から最も上を見た時と、最も下を見た時の移動距離を測定し判別します。

通常であれば上眼瞼挙筋の機能は15mm程度が限度です。

後天性眼瞼下垂の症状で最も患者数が多いと考えられているのが「腱膜性の眼瞼下垂」です。

腱膜性の眼瞼下垂は、腱膜の付着部が少しだけずれてしまった状態です。なので、挙筋自体にはあまり影響・問題はありません。上眼瞼挙筋機能も正常な状態とほぼかわりません。

なので、上眼瞼挙筋機能に異常がある場合は筋肉か、筋肉を動かす神経に問題がある事になります。ある日突然まぶたが下がってきた時は脳動脈瘤、脳梗塞、糖尿病等の影響で動眼神経麻痺等を起こしている可能性があります。

この場合はMRI・CTを用いた頭蓋内の検査、血液検査が必要な場合があります。


眼瞼下垂の治療方法

腱膜性眼瞼下垂、先天性眼瞼下垂の治療は手術にて行われます。重症筋無力症、脳梗塞のように他の病気がきっかけとなって眼瞼下垂を発症している場合は、きっかけとなっている病気の治療が行われます。

他の病気がきっかけで発症する眼瞼下垂は手術を行わなくても自然に回復する場合もあるので、経過観察を行う場合が多く、6~12ヶ月程経過しても症状が回復しない場合はまぶたを上げる手術を行います。

眼瞼下垂の手術方法は大きくわけると2種類あり、上眼瞼挙筋の状況を計測し状態によって手術方法・方針を決定します。

患者さんが小児である場合の手術は全身麻酔が用いられます。何歳から小児とするかの基準は健康状態によって個人差がありますが、場合によっては10歳くらいから局所麻酔でも手術が可能になります。

大人の場合は基本的に局所麻酔で手術が行われます。健康状態等の条件が整っていれば日帰りで手術を行う事ができます。

上眼瞼挙筋機能が十分にある場合

軽度の先天性眼瞼下垂、腱膜性眼瞼下垂で上眼瞼挙筋機能が十分にある場合は、挙筋前転術もしくは挙筋短縮術と呼ばれている手術で挙筋腱膜のずれを整復するか、眼窩隔膜反転術を施します。

これらの手術は結膜を切開する方法と皮膚を切開する方法があります。

上眼瞼挙筋機能が不十分である場合

神経疾患治療後に残存してしまった眼瞼下垂、先天性眼瞼下垂、筋疾患等が原因で上眼瞼挙筋機能が不十分である場合には前頭筋吊り上げ術(ぜんとうきんつりあげじゅつ)が施されます。

前頭筋吊り上げ術は、まぶたをおでこの筋肉を活用して動かす方法です。まつげとまゆげの上を切開して連結させるのです。連結時に用いられるのは、「大腿四頭筋腱膜」という太ももの奥の腱膜、「ゴアテックス」という人工の膜、太めの糸が用いられます。

これ以外にも、目の周囲に存在する眼輪筋という筋肉を利用し、前頭筋を吊り上げる方法もあります。正面から顔面を見た時にまぶたが少しでも上がっている状態にする事が手術の目的です。上眼瞼挙筋を使う事はできないので手術後の一定期間は目を閉じるのが億劫になります。


まとめ

眼瞼下垂の手術を行うと、術後1週間ほどは強くまぶたがはれるなどの症状が現れる場合があり、1ヶ月程で落ち着きます。眼瞼下垂を発症していなくても、他の病気の影響で眼瞼下垂と類似した症状が現れる場合があり、病気は原因、状態によって治療方法が異なりますので自己判断をせずに医療機関に充分に相談を行って治療を進めるようにしましょう。

以上、医師の監修のもと、眼瞼下垂の原因と症状・治療方法についてお伝えしました。