2016.10.25

医師が教える骨盤臓器脱の日帰り手術と費用

この記事の監修ドクター

監修ドクター
医療法人MIRIZE 中川ごうクリニック
中川 剛 医師

福岡県柳川市三橋町木元368−5

050-5827-3719

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膀胱や子宮が下がってしまう「骨盤臓器脱」という病気をご存じでしょうか。

骨盤臓器脱は主に女性が発症する病気です。女性の骨盤は本来であれば常に「骨盤底筋」という筋肉が支えています。ですが、閉経、出産、加齢等が原因となり「骨盤底筋群」と呼ばれる骨盤内の臓器を支えている筋肉や靭帯が徐々に弛緩し、膀胱、子宮、直腸等の臓器が膣から突出する症状を総称して「骨盤臓器脱(こつばんぞうきだつ)」と呼びます。

膣より突出する物によって詳細な名称は異なります。膣から膀胱が突出する症状は「膀胱脱」。子宮が突出する症状は「子宮脱」。直腸が突出する症状は「直腸脱」と呼ばれます。

骨盤臓器脱の種類

 

また、「腹圧性尿失禁」も骨盤臓器脱の仲間に分類されます。腹圧性尿失禁は咳・くしゃみをした時、腹部に力が加わった時に尿を漏らしてしまう症状です。

骨盤臓器脱を発症すると、初期の自覚症状は「ピンポン玉のようなものが膣から出てくるように感じる」・・・等の声があります。この小さな違和感が徐々に大きくなり、終いには排便困難、排尿困難、出血等の重篤な症状を伴います。

患者さんの中には尿がまったく出なくなってしまう「腎不全」の症状が現れた事で医療機関に相談しに来られた方もいるようです。

 骨盤臓器脱の症状に悩む患者さんは多いです。アメリカ人女性の場合、10人に1人の割合で骨盤臓器脱の手術を受けていると言われています。スウェーデンで行われた骨盤臓器脱の関連調査では、出産経験のある20歳から59歳女性を対象に骨盤臓器脱の症状があるか否かを調査した所、全体の45%程が骨盤臓器脱の症状を持っている事が明らかになりました。

 今回は骨盤臓器脱治療の専門医監修のもと、骨盤臓器脱の日帰り手術と手術費用を中心にどのような病気なのか説明します。


骨盤臓器脱とは

 「骨盤臓器脱はどんな病気なのか?」前書きでも触れましたが改めて説明します。
 骨盤臓器脱は骨盤の底には、骨盤内に存在している臓器を支える為に筋肉や組織がハンモック状になって存在しています。Hammock hung between palm trees on a tropical beach

この筋肉・組織が閉経、出産、加齢、手術の影響で弛緩すると骨盤内の臓器を支えきれなくなります。すると臓器は膣内に垂れ下がり始めてしまい、最終的には膣口より突出してしまいます。この時突出する臓器によって種類が分けられます。しかし、どれか1つの症状を単独で発症する事が少ない事、加えて病状が類似している事から総じて「骨盤臓器脱」と呼ばれています。

臓器が膣口から突出する為「性器脱」と呼ばれる場合もあります。男性が発症する病気で症状が類似している物をあげると「鼡径ヘルニア」があります。骨盤臓器脱も女性がかかるヘルニアの一種であるとも考えられています。

骨盤臓器脱の日帰り手術

骨盤臓器脱の日帰り手術として主流なのが、TVM手術という手術方法です。

TVM手術はフランスの医師が2000年代に開発した骨盤臓器脱の手術方法です。TVM手術が開発されるまでの治療では、子宮を摘出する方法が主でしたが、この方法は身体への負担が非常に大きいというデメリットがありました。TVM手術であれば子宮を摘出する必要もなく、症状が再発する可能性も他の方法と比較すると低いです。

手術ではメッシュを痛んだ腹膜の代用として活用し、臓器を支えます。使用されるメッシュも治療法が開発された当時から改良が重ねられ、身体に対して影響が少ないものになっています。

骨盤臓器脱の手術手順・方法

1:膣壁の弛緩している部分を切開します。
2:膀胱と膣を前膣で剥離します。直腸と膣は後膣で剥離させます。
3:膣壁の上下に臓器脱手術専用の人口メッシュをあてて固定し、近くの靭帯にメッシュのアーム部分を通します。
4:アームを引っ張り上げます。すると臓器がハンモックのような形に吊り上げられます。
5:最後に手術の初めに切開した膣壁を縫合し手術は完了します。

骨盤臓器脱手術を行った後の注意点

手術の後1ヶ月間は再発しない為に予防を行う事が最重要となります。その為に可能な限りお腹に力が入らないよう心がけましょう。

手術を行って2ヶ月間は重い荷物を持つのはやめましょう。便秘気味の人は排泄の際に必要以上に力まないように気をつけましょう。その為、便秘気味の人は食生活を中心に日々の生活を見直す必要があります。適度な運動も効果的でしょう。ただし、力みすぎる運動は厳禁です。

再発予防の為にお勧めな運動は、かかとを上げて肛門を緩めたり、締めたりする運動を10回程繰り返す骨盤底筋体操をやってみましょう。Woman standing barefoot in the grass


骨盤臓器脱手術の費用について

骨盤臓器脱の手術には健康保険が適応されます。しかし治療費は患者さんの状態によって異なる為、ここで紹介する費用はあくまで目安額となります。

健康保険が適応され3割負担の金額の場合、手術費用は110,000円程になります。患者様の状態により高額医療申請を行う事で手術費用が減額される場合もあります。治療を行う前にどのような制度を活用できるか確認しておきましょう。

骨盤臓器脱の症状

初期の自覚症状として、膣からピンポン玉のような丸いものが脱出する感覚がある。股の間に異物が挟まっているような感じがする。下腹部が引っ張られたり、下がってくるような感覚がある。腸が肛門から脱出する・飛び出すといった症状を伴います。White ball for table tennis or ping pong on wooden table.

骨盤臓器脱の症状が軽度であれば身体への影響は一時的なもので、腹圧がかかった時に一時的に膣より突出する程度です。しかし、症状が重度になると常時突出した状態になります。

症状が特に悪化しやすいのは激しい運動の後や、長時間の歩行した後です。朝方は特に異常を感じなくても夕方から夜にかけて症状が重くなってくる場合もあります。

膀胱脱

骨盤臓器脱頻の中でも最も発症数が多い約65%と考えられているのが「膀胱脱」です。発症すると次のような症状を伴います。

・下腹部の違和感
・臓器の下垂感
・頻尿
・残尿感
・排尿困難
・etc…

膀胱脱を発症する人は同時に腹圧性尿失禁を併発している場合もあります。

子宮脱

骨盤臓器脱の症状の中で膀胱脱に次いで発症数が多いと考えられている症状です。

発症すると次のような症状を伴います。

・下腹部の違和感
・臓器の下垂感
・腟粘膜
・下着との摩擦による出血、痒み、痛み
・etc…

1度子宮適除術を行った事がある場合だと、適除の残りが膣口から突出してしまう場合があります。これは「膣断端脱」と呼ばれる症状です。

子宮脱が原因で子宮摘出を進められる場合があります。しかし、骨盤臓器脱の症状は子宮を摘出したとしても改善されるとは限りません。

直腸脱

直腸脱は膣口から直腸が突出してしまう種類の骨盤臓器脱です。発症例は膀胱瘤、子宮脱と比較すると少ないです。

次のような症状を伴います。

・下腹部の違和感
・臓器の下垂感
・便秘
・排便困難
・便失禁


骨盤臓器脱の原因は

加齢骨盤臓器脱の主な原因は以下だと考えられています。

・加齢

・出産
・女性ホルモンの欠乏
・腹部の内圧上昇

・子宮摘出後

肥満、便秘のいきみ、長時間の立ち仕事、肉体労働等がこれらの原因になります。骨盤が広く出産の負担が少ない人や、出産回数の多い人にも多く見られる傾向があります。
「骨盤臓器脱」と言われるとあまり聴きなれないかもしれませんが、珍しい病気ではありません。60~70歳で発症する可能性が最も高いのですが、早い人だと出産直後に発症します。10人に1人は80歳までに1度は発症すると考えられており、症状が軽い場合を含めると出産経験者の半数は症状を発症した事があると考えられています。しかし、多くの場合は高齢を理由に治療せずに放置したり、発症する場所が場所なだけに羞恥心で治療を躊躇してしまう事が多いといわれています。その為、実際の患者数はもっと多いと言われています。

骨盤臓器脱の従来の治療方法

以前まで骨盤臓器脱の治療は、子宮を摘出して膣壁を縫いつける手術が主流でした。

しかし、子宮を摘出する手術の身体への負担は大きく、組織が損傷してしまい直腸や膀胱が本来の位置よりも下がるようになるだけでなく。尿失禁をしやすくなるデメリットがあります。加えて、弱体化した組織を縫う、縮める、切除する等は簡単に行えますが、手術後に30~40%程の確立で再発してしまう欠点があります。

しかし、デメリット・欠点がわかっていながらも他に方法が存在していなかった為に組織を縫う、縮める、切除するといった方法が選択されていました。

子宮脱の診察・検査内容

違和感が股の間にあっても、医療機関には恥ずかしくて行けない・・・。そんな思いをしている女性は思っているよりも多いです。子宮脱の診察は具体的にどんな事が行われるのかを説明します。

診察はどれも痛みはありません。しかし、男性の先生が診察を行う場合もあるので気になる場合は事前にウェブページ等で確認してから医療機関に行くようにしましょう。

1:問診

初めに行われるのは問診です。正確な治療を施す為、症状を感じ出したのはいつ頃か、妊娠・出産歴・手術歴はどうなっているのかを事前に話せる状態にしておきましょう。

2:内診

出産時に使用する台と類似した台を使い診察が行われます。クスコーと呼ばれる器具を膣口から挿入し、膣内を確認します。この時に子宮が下がっているかどうなのかを診察します。あえていきんでもらったりして症状の進行具合をはかる場合もあり、内診の結果次第で手術が必要か否かが判断される場合もあります。

3:超音波検査

初診時に子宮、卵巣、腎臓、膀胱の健康状態を超音波検査にて診察します。

子宮脱を発症すると尿の通りが悪くなる場合があるので、腎臓がダメージを受けている事もあります。その為、子宮だけでなくその周りの臓器の様子も確認します。

1、2、3の検査の結果を元に手術が必要か否かを判断し、必要であれば手術の準備にはいるのです。


まとめ

骨盤臓器脱は発症しても羞恥心で診療をせずに放置してしまう人もいます。

しかし、放置すると症状は悪化する一方です。ウェブサイトなどを用いて自分に合う医療機関を探し、1度相談だけでもしてみてはいかがでしょうか。

前述していますが昨今では日帰りで手術を行うことができ、手術による身体への負担も軽減しています。これまで「手術は大変そう・・・」と警戒していた人もこれを機会に治療を検討してみてはいかがでしょうか。

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中川 剛 医師

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