2017.02.15

医師が教えるアレルギー性鼻炎(花粉症)の原因と症状・治療方法

この記事の監修ドクター

監修ドクター
たてもと耳鼻咽喉科クリニック
立本 圭吾 医師

京都府京都市東山区三条大橋東入ル大橋町94 三条鈴木ビル5F

075-752-3387

http://www.tatemoto.jp/

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アレルギー性鼻炎

とうとう花粉症の時期になってしまいましたね。
この時期には鼻水やくしゃみが止まらなかったり、目や喉の奥が痒くなったりと不快な思いをしている方は少なくないと思います。
厚生労働省の花粉症Q&Aページでも、日本人の約3割は花粉症だという報告を紹介している程、多くの方が悩んでおります。
そんな国民病とも言える花粉症について、医師監修の元、原因や症状、治療方法についてご紹介いたします。


花粉症とは

花粉症

正式名称は季節性アレルギー性鼻炎といい、アレルギー反応が起因となり発症する鼻の粘膜の炎症です。

アレルギー性鼻炎を発症している人が増えている背景には、花粉の飛散量が年々増加している事、現代社会のストレス、食生活の欧米化、居住環境の気密性が高くなった事によるハウスダストの増加等があります。

アレルギー性鼻炎を1度発症してしまうと、アレルギーの起因となる物質である「アレルゲン」に接さないよう、接点を断つ取り組みが重要になります。アレルギー性鼻炎の症状を改善する為にも先ずは日常生活を見直すことからはじめてみるといいかもしれません。

アレルギー性鼻炎には通年性と季節性の2種が存在する

風邪をひいていないのに鼻詰まり、鼻水、くしゃみ等の症状がある・・・それらが起因となり集中力が低下してしまい、日常生活や業務支障を出してしまう。このような問題について医療機関で悩みを相談すると、「アレルギー性鼻炎」と診断される場合があります。

アレルギー性鼻炎には「通年性」と「季節性」の2種類が存在し、花粉症は「季節性」に該当します。また、「通年性」と「季節性」を同時に発症する場合もあります。

通年性のアレルギー性鼻炎

「通年性」のアレルギー性鼻炎は年間を通して症状があります。

ハウスダストが発症の主な原因です。特に問題なのが「ダニ」です。ダニ以外には犬、猫等のペットが理由になります。

季節性のアレルギー性鼻炎

「季節性」のアレルギー性鼻炎は一定の季節のみで症状があります。
これがよく言う“花粉症”です。

スギ、ブタクサ、ヒノキ等の植物の花粉がアレルギー性鼻炎を発症する主な原因です。


アレルギー性鼻炎の症状

アレルギー性鼻炎を発症した際に特徴的なのは、鼻づまり(鼻閉)、水のようにさらさらとしたゆるさの鼻水、突発的なくしゃみ、といった症状を伴う事です。

通年性アレルギー性鼻炎の症状

通年性アレルギー性鼻炎を発症した場合、比較的強く症状が現れるのは冬場です。冬場は窓を締め切り暖房等を使用する為、ハウスダスト(チリ、ホコリ、ダニ、ペットの毛等)が室内で飛び回ってしまいます。それに加え空気が乾燥する為、アレルギー性鼻炎の症状は悪化します。

アレルギー性鼻炎の合併症としてアトピー性皮膚炎や、喘息を発症する場合もあります。

季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の症状

季節性アレルギー性鼻炎を発症する時期は原因になる植物が開花する時期と合わさります。

季節性アレルギー性鼻炎の症状は鼻だけでなく、皮膚の湿疹やかゆみ(花粉皮膚炎)、「アレルギー性結膜炎」と呼ばれる目の充血やかゆみ、喉の違和感、頭の重たい感じ、咳等の症状が伴う場合があります。

アレルギー性鼻炎の原因となるアレルゲン

アレルギー性鼻炎を発症する原因になる抗原が体内に侵入する経路のほとんどは「吸入」です。

アレルゲン(抗原)を繰り返し吸い込む事でアレルギー反応が発生し、鼻に不快な症状が現れます。

アレルギー性鼻炎は風邪と間違えやすいのか

風邪の初期症状とアレルギー性鼻炎の症状は類似していると言われています。

治療方法はそれぞれ異なっている為、勘違いしてしまうと治療法を誤ってしまいます。違和感があれば医療機関に相談し、適切な治療を受けましょう。

アレルギー性鼻炎の検査、診断

検査では主に、鼻水、鼻詰まり、突発性のくしゃみ等の症状がアレルギー性の反応であるか否かを調査します。

アレルギー性の場合は、そのアレルギー反応を起こしている抗原は何なのかを調査します。

症状がアレルギー性であるか否かを調査する検査

問診

以下の項目に関して質問し、健康状態を確認します。

・年齢
・性別
・職業
・症状の種類
・程度
・アレルギー既往歴
・家族歴
・治療歴と経過
・発症年齢
・発症時期
・合併症の有無

鼻鏡検査

鼻の内部を確認し腫れ具合、粘膜の色、分泌される鼻水の量等の状況を診察します。

鼻汁中好酸球検査

アレルギー性鼻炎を発症している人の鼻内に存在する「好酸球」という細胞の数を調査します。

好酸球は血液中に存在する白血球の1種であり、痰や鼻水の中に分泌されるアレルギー反応に関連する細胞です。

抗原を調査する検査

皮膚テスト

皮膚テストにはスクラッチテストと、皮内テストの2つがあります。

スクラッチテストは出血しない程度に皮膚を引っかき傷つけ、その部分に抗原を付着させ反応を確かめるテストです。

皮内テストは問診を行い、抗原である可能性が高い水溶液を前腕に皮肉注射し、赤くなった皮膚の状態や面積を観察するテストです。

血清特異的IgE抗体検査

「IgE抗体」と呼ばれる体内に進入した異物の排除を行う免疫の仕組みに関連する抗体です。

血清特異的IgE抗体検査では始めに採血を行い抗原に反応するIgE抗体を調査する検査です。アレルギー性鼻炎の原因となる抗原と繰り返し接触する内にIgE抗体が体内に蓄積されて行き、一定量蓄積されるとアレルギー症状が現れます。

血清特異的IgE抗体検査では1度の検査で多数の抗原を調査する事が可能です。アレルギーに対する抵抗力もある程度ですがわかります。

誘発テスト

ペーパーディスク(ろ紙)に抗原を染みこませ鼻の粘膜に置きます。その後アレルギー反応が現れるか否かを調査します。誘発テストは危険性を伴う為現在ではあまり行われておりません。

その他の検査

アレルギー性鼻炎が重度である場合、副鼻腔炎・・・通称「蓄膿症」を合併症として発症していないか調査する為に、レントゲンを用いた検査を行う場合もあります。


アレルギー性鼻炎の治療法

アレルギー性鼻炎の治療は次の療法があります。

・抗原の除去と回避
・薬物療法
・特異的免疫療法
・手術療法

アレルゲンの除去と回避

アレルギー性鼻炎を発症するか否かは、個人の遺伝的な体質に関わります。その為、100%の予防は困難です。原因となっているアレルゲンを日常生活から除去し、接触する機会自体をなくす事で症状の改善が見込めます。

ハウスダストの除去

ハウスダストを除去する対策として下記などがあります。

・高い場所の清掃を先に行い、床は最後に掃除する
・窓や扉を開けて換気を良くする。
・空気清浄機を使う(フィルタ―はこまめに清掃する)
・エアコンのフィルターの掃除をこまめに
・カーテンをこまめに掃除・洗濯する
・畳の上にカーペットはしかない
・布団はたたかず両面天日干しし、半年に一回は丸洗いする
・できるだけ湿度は50%以下に保つ

花粉の回避

花粉を避ける対策として下記などがあります。

室内に入る花粉を防ぐ

・ニット等の素材の衣服着用は避ける
・外出先から帰宅した際は、髪や服についた花粉を玄関先で落とす
・家に入ったら花をかみ、洗顔、うがいをする
・衣類を乾燥させる際はできるだけ外干しせず、乾燥機を使用する

体に入る花粉を防ぐ

・外出する場合にはメガネやマスク、帽子を着用する

薬物療法

アレルギー性鼻炎の治療で最も行われているのが薬物を用いた治療法です。

基本的に抗アレルギー薬が治療に用いられ、必要に応じ薬物を投与し症状を和らげます。

抗アレルギー薬

[ケミカルメディエーター遊離抑制薬]
ケミカルメディエーター遊離抑制薬は鼻詰まりの改善に効果的です。ケミカルメディエーター遊離抑制薬の特性として効果が現れるのが遅いので、1~2週間は継続して飲み続ける必要があります。継続して使用する事で症状の改善率が上がります。

[ケミカルメディエーター受容体拮抗薬]
【1】第2世代ヒスタミン拮抗薬(抗ヒスタミン薬)
症状全般に効果があり改善します。効果を充分に感じるまでに2週間程期間が必要です。

第2世代ヒスタミン拮抗薬は、初期に開発された第1世代ヒスタミン拮抗薬よりも眠気等の副作用が弱くなっています。

【2】トロンボキサンA2拮抗薬
鼻水、鼻詰まり、くしゃみに効果がある薬剤です。血小板の凝固を抑制する効果があり、虚血性心疾患や脳血管障害の抗血栓治療等に用いられる薬剤です。抗凝固薬、血栓溶解薬、抗血小板薬との併用には注意しなくてはなりません。

【3】ロイコトリエン拮抗薬
鼻の粘膜の腫れを抑制して鼻詰まりを改善する薬剤ですが、前述した第2世代ヒスタミン拮抗薬よりも早期に効果が現れます。

[ステロイド薬]
局所ステロイド薬(点鼻薬)、飲み薬は鼻粘膜の炎症抑制と、鼻水、鼻詰まり、くしゃみに対して効果的な薬です。効果は他の薬剤よりも比較的早く現れます。併用して抗アレルギー剤の経口薬を摂取する事で症状を早期に抑える事が可能です。

[自律神経作用薬]
α交感神経刺激薬は、点鼻薬として主に用いられる薬です。鼻詰まりに効果的ですが、連続して使い続けると効果の持続時間が短くなり、結果として鼻詰まりが慢性化する場合があります。


減感作療法

減感作療法とは患者さんのアレルギーの原因となるアレルゲン(治療薬)をほんの少しずつ体内に入れ、からだをアレルゲンに慣らし、アレルギー症状を和らげる方法です。皮下免疫療法と舌下免疫療法の2つがあります。

皮下免疫療法

アレルゲンの抽出液を皮下注射します。

少量かつ低濃度から始め、量と濃度を徐々に増やし、抗原に対する身体の免疫機能を向上させます。2~3年程治療を継続すれば7割程の人が効果を実感できると考えられています。

舌下免疫療法

舌下免疫療法

舌の下に治療薬を少量ふくみます。

健康保険が適用で自宅で治療ができ、改善が約8割と比較的治療効果が高いです。
治療が長期間(3~5年)に及び、毎日薬を飲む必要があります。
現在はスギ花粉症とダニアレルゲンのみ保険適用です。

手術

鼻腔の形状に異常があり症状の改善が困難な場合や、鼻の粘膜の腫れが酷く、鼻詰まりの症状が薬物療法等では見込めない場合は手術によって症状の改善を図る場合があります。手術には以下の種類があります。

・レーザー手術
・鼻粘膜を切除する手術
・電気で鼻粘を焼く手術

まとめ

以上、アレルギー性鼻炎の原因、症状、治療方法のまとめです。アレルギー性鼻炎の症状は風邪と類似している箇所もあるので、誤った対応をしてしまう場合もあります。

治療法は風邪とは異なる為、症状が中々収まらないようであればアレルギー性鼻炎である可能性を考慮し、1度医療機関に相談する事をおすすめ致します。


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