2016.08.26

医師が教える鼻中隔湾曲症の原因と症状・治療方法

この記事の監修ドクター

監修ドクター
おおたかの森耳鼻科モーニングクリニック
荒木 進 医師

千葉県流山市東初石6丁目183−1 ライフガーデン4F

04-7178-5032

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鼻をつまむ男性

鼻中隔湾曲症は鼻内に存在している鼻中隔が大きく曲がる事で健康状態に様々な影響を及ぼしたり、アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎といった合併症を発症する危険性が上がる病気です。
今回は専門医の監修の元、鼻中隔湾曲症の原因と症状・治療方法についてご説明いたします。



鼻中隔湾曲症とは

鼻中隔湾曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)とは、鼻の中の鼻腔(びくう)と呼ばれる部分を左右で区切る役割をする鼻の中央部分にある仕切りが曲がってしまうことで、様々な悪影響を及ぼす鼻の病気です。鼻中隔湾曲症

人の鼻は成人であればほぼ、外見からではわからないレベルで鼻中隔が左右どちらかに曲がっていると言われています。
症状が軽く、鼻の曲がりが僅かであれば日常生活に影響を及ぼさない場合がほとんどなので治療せずとも問題ありません。一方で、場合によっては鼻中隔が激しく曲がっており、曲がりが原因となり健康状態に悪い影響を及ぼす場合があります。

鼻腔(びくう)とは

鼻腔とは、鼻孔(鼻の穴)のさらに内側の空間・道のことを言います。鼻腔には3種類の骨(上鼻甲介、中鼻甲介、下鼻甲介)が出っ張ていて、その間を空気が通っていきます。空気の通り道にも名前がついており、上鼻道、中鼻道、下鼻道と分類しています。鼻腔内には鼻毛が生えており、フィルタの役割を果たします。また、上鼻道の粘膜が嗅覚に関わる部分で、匂いを感じて脳に伝達する役割を果たしています。

鼻中隔湾曲症の原因

鼻中隔が曲がるのは成長が原因

鼻中隔はなぜ曲がるのか? 鼻中隔を構成しているのは鋤骨(ジョコツ)、篩骨正中板(シコツセイチュウバン)、鼻中隔軟骨と呼ばれる3つの骨です。これらの骨は発育速度が異なります。そのため、例えば鋤骨が成長しすぎたが、篩骨正中板だけ成長が遅すぎる・・・といった具合に成長過程で大きさが異なってしまう場合があります。

鼻中隔は、これらの骨のバランスが崩れる事で突出や、湾曲といった問題を起こすのです。

また、鼻中隔が湾曲する問題は二足歩行する生き物だけが持つ問題で、四足歩行する動物にはないそうです。この事実から、鼻中隔が湾曲してしまうのは生き物が進化してきた過程に関わるのではないかとも考えられています。二足歩行犬や猫のような四足歩行の動物は横から見ると脳が後ろに位置しており、前方に鼻が大きく突き出した形態をしています。人はこれとは異なった作りをしており、脳が大きく発達した結果、鼻の上に位置する形になっているため、鼻を縦に通り抜ける鼻中隔に対し脳の重みが集中するようになりました。そのため、鼻中隔が湾曲してしまった・・・とも考えられています。

鼻中隔の曲がりは身体の成長に伴って進行していきます。そのため、鼻中湾曲曲症が子供に見られる事はなく、成人の病気と考えられています。


曲がり方、曲がり具合は人それぞれ

鼻中隔の曲がり方、具合は人によって違います。顔を正面から見た時に、鼻中隔が波のようにS字の曲線を描く「S字型」の人や、鼻中隔がアルファベットのCの様に曲がっている「C字型」の人もいます。

アルファベットの他にも鼻中隔の1部分のみが折れ曲がったような形になっている「くの字型」、上部は垂直にも関わらず、下部が突然曲がっている「下方型」等、様々な種類があります。どの形でも大きく鼻中隔が曲がってしまうと鼻腔内の空気の通りが悪化したり、粘膜に障害が及びやすくなるため、様々な問題が生じる恐れがあります。

鼻中隔湾曲症の症状

鼻中隔湾曲症を発症すると次の様な症状を伴います。

鼻詰まりの症状がでる

鼻中隔湾曲症を発症している患者さんのほとんどが「鼻閉」、つまり「鼻詰まり」に悩まされます。鼻詰まりは鼻の中に存在する鼻中隔が凸型に突出してしまい、鼻腔の通気環境が悪化するため発症します。鼻詰まりになった時に詰まる側が右か左で常に同じ場合は、鼻中隔湾曲症を疑った方がいいでしょう。

鼻出血の症状がでる

鼻中隔湾曲症を発症すると「鼻出血」つまり「鼻血」も出やすくなります。鼻中隔が突出する事で、突出部分の粘膜が薄くなります。すると、血管が痛みやすくなるので出血しやすい状態になるのです。また、一方だけ空気が通りやすくなる場合も同様に負荷がかかって、鼻血がでやすくなるようです。

症状が悪化して他の病気になる場合も

慢性副鼻腔炎

鼻中隔湾曲症の影響で鼻腔が窮屈になり、通気環境が悪化する事で、副鼻腔内の通気環境も悪くなります。すると、副鼻腔内に健康状態を悪化させる細菌が繁殖し、粘膜が炎症しやすくなるのです。これが「慢性副鼻腔炎」を発症する起因になる場合もあります。

加えて慢性副鼻腔炎を併発する事で、鼻水等の分泌物が増加したり、頭痛を伴う等の慢性副鼻腔炎の症状を伴います。

アレルギー性鼻炎の悪化

鼻中隔湾曲症を発症すると、アレルギー性鼻炎を併発する場合があります。アレルギー性鼻炎を併発すると鼻の粘膜が腫れるので更に鼻腔が窮屈な状態になります。これにより鼻水、鼻詰まりといった症状がますます悪化します。


鼻中隔湾曲症の検査

鼻中隔湾曲症を発症しているかどうか、状態はどうなっているのかを確認するためには次の検査があります。また、これらの検査に加えて患者さんの希望に合わせアレルギー検査等の他の検査を行う場合もあります。これらの検査を行うことで医師はアレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎等といった鼻中隔湾曲症に伴う可能性がある合併症の有無を確認し治療方針を考えます。

視診

視診では、「鼻鏡」と呼ばれる鼻孔を広げる器具を使用し、鼻中隔の曲がり具合を目視で確認します。耳鼻咽喉科、耳鼻科の医師であれば、視診のみで鼻中隔が曲がっているか容易に把握することが可能です。

内視鏡検査

内視鏡検査では、鼻の穴の中に内視鏡を挿入し、鼻の内部状況を確認します。内視鏡検査を行う事で 鼻腔内の粘膜の状態なども把握することが可能です。

CT検査(コンピュータ断層撮影)

CT検査では、鼻中隔がどのように湾曲しているのかを、可能な限り正確に把握するため、鼻の断層をX線を用いて撮影します。

鼻腔通気度検査

鼻腔通気度検査では、鼻づまりの状態を確認します。計測機械を患者さんの鼻に当て、息を鼻から吐いたり吸ったりしてもらうことで、空気が鼻をどのように通っているのか、数値で表示できます。


鼻中隔湾曲症の治療方法

鼻中隔湾曲症の治療は、手術が一般的な選択肢となります。鼻中隔の矯正が手術の主な目的であり、同時に合併症の治療も行います。

手術療法と薬物療法

鼻中隔湾曲症は骨の構造に問題が生じる事で発症します。この問題を根本から解決するには「鼻中隔矯正術」という手術が必要です。しかし、患者さんが手術を拒まれる場合、鼻詰まり等の問題は点鼻薬等の対症療法で改善を図ることとなります。
点鼻薬ですが、点鼻薬では根本的な治療は困難であり、あくまで暫定的な対応となります。

点鼻薬は、粘膜の血管を収縮させる効果があり、鼻づまりの改善に効果的です。ですが、点鼻薬を長期間使い続けてしまうと薬を使っていない期間にしわ寄せがくる場合があります。鼻の粘膜が血管が開いてしまう事で厚くなり、治療をしているはずなのに症状が悪化してしまう場合があるのです。これは「慢性肥厚性鼻炎」と呼ばれる症状で、長期間点鼻薬を使用している人にみられる症状です。

また、鼻中隔湾曲症を治療せずに放置すると、慢性副鼻腔炎を発症する原因にもなります。症状がない場合でも鼻中隔の曲がり具合が酷く、症状が重度である場合は手術をお勧めします。ただし、手術には年齢制限があり、16歳以上にならないと受けることができません。これは顔面の骨格が未完成の段階で手術を行うと成長に悪影響となる場合があるからです。

鼻中隔矯正術

鼻中隔矯正術は、局所麻酔を行った後に手術器具を鼻の入り口から挿入し鼻中隔を切開します。曲がってしまっている鼻中隔軟骨を1度切除し、取り出した鼻中隔軟骨の曲がっている部分は除去し、まっすぐになっている部分は鼻の中に再び戻します。

その後、戻した鼻中隔軟骨を器具で補強し、切開された粘膜同士をくっつけるため、手術終了後はガーゼをしばらく鼻の中に詰め込み、両側から手術を施した箇所を圧迫します。更に二次感染を防止する為に抗菌薬を服用し安静にします。

鼻中隔湾曲症を発症している人は合併症として慢性副鼻腔炎を併発している場合があり、同時に慢性副鼻腔炎の手術を行うこともあります。

手術後は1週間ほど入院し、健康状態を管理するのが一般的ですが、最近は手術後に即日帰宅する事ができる「日帰り手術」を行える医療機関が増えています。


粘膜下下鼻甲介骨切除術

アレルギー性鼻炎を併発している場合に適用することが多い手術です。下鼻甲介骨と呼ばれる部分が出っ張りとなって鼻の中が狭くなってしまっている場合、切除することで鼻の通りを良くする手術の方法です。実施することで鼻づまりが解消します。

手術後に注意する事

手術によってついた粘膜の傷は1週間ほどで回復し塞がります。ですが、手術で削るため、鼻中隔軟骨が若干もろくなります。もろくなった鼻に強い刺激が加わると鼻中隔軟骨が落ち込んでしまう場合があります。手術後は安静を保ち、鼻に余計な力や刺激を加えないよう心がけましょう。

また「鞍鼻(あんび)」と呼ばれる、鼻中隔の軟骨が減った部分が脳の重さを支えられなくなり、鼻が凹んでしまう状態になる場合もあります。鞍鼻状態になっても形成手術を行う事で元通りにする事が可能ですが、こういった問題は発生しないように勤めるのが最善です。医療機関を選択する際は治療・手術経験が豊富な医師が在籍する機関を選択しましょう。


まとめ

以上、鼻中隔湾曲症の原因と症状・治療方法に関するまとめでした。
鼻中隔湾曲症は軽度だと症状が軽いですが、重度となると他の病気を併発する危険性もある上、嗅覚・味覚に障害が及ぶリスクがあります。根本から治療するには手術が必須となるため、症状に心当たりがあるようでしたら1度医療機関に相談することをおすすめします。

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