2016.05.26

名医が教える鼠径ヘルニア(脱腸)の症状・原因・治療方法

この記事の監修ドクター

監修ドクター
薬師台おはなぽっぽクリニック
野口 泰芳 医師

東京都町田市薬師台1−25−12

050-5281-3351

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ヘルニア診断

鼠径ヘルニア(そけいへるにあ)は、腸等の臓器が太腿の付け根部分にはみ出してしまう病気です。身体への影響がないこともありますが、成人の鼠径ヘルニアは自然に治癒することはなく、症状が悪化すると最悪、臓器が壊死することもあります。

発症する原因は先天性と、後天性があり、母親の胎内にいる時点から発症する可能性がある病気です。自身は発症した時に備えるのはもちろん、自らの身を守る手段がない小児の為にも「どのような病気なのか?」知識を備えておく必要があります。

今回は医師の監修の元に、鼠径ヘルニア(脱腸)に関する「症状」「原因」「治療方法」について説明します。

※掲載内容に関しては、専門の医師に監修いただいております。


鼠径ヘルニア(脱腸)とは

そけいヘルニア

鼠径ヘルニアという病気をご存知でしょうか? ヘルニアと聴くと「椎間板ヘルニア」が有名なので、「腰や背骨の病気?」と思われる方も多いかもしれません。

ヘルニアという言葉は「臓器が本来あるべき場所から飛び出した状態」を示します。鼠径ヘルニアは「鼠径部」(太ももの付け根の部分)で発症する病気で鼠径部の筋膜(きんまく)の隙間から腸や臓器が飛び出してきてしまう病気です。成人が鼠径ヘルニアを発症する主な原因は筋力の衰えです。30代の後半頃から、老化や運動不足が原因で筋力が弱まってくると鼠径ヘルニアを発症しやすくなります。

鼠径ヘルニアは小児の場合は放置しても自然に治ることがありますが、成人の場合手術が必要になります。放置すると症状が悪化し臓器の壊死や摘出に繋がることがあります。

鼠径ヘルニア(脱腸)の症状

中年男性

鼠径ヘルニアを発症しているかどうか判断する方法として、太ももの付け根部分の状態をチェックすればある程度わかります。

立ち上がった状態で腹部に力を入れてみたときに、太ももの付け根部分にしこりや、腫れのような物があると鼠径ヘルニアを発症している可能性があがります。指ででっぱりを押すと、一時的に引っ込むのが鼠径ヘルニアの特徴です。

初期の段階ではそれほど大きくなく、ピンポン玉程度の大きさですが、治療せずに放置するとだんだん腫れが大きく拡大し、最終的には握りこぶしぐらいの大きさまで拡大することもあります。大きくなると吐き気や、痛みをともなうことがあります。

鼠径ヘルニアを治療せずに放置すると、初めは押すと引っ込んでいた腫れが固くなって引っ込まなくなったり、固くなったりします。この状態は「嵌頓(かんとん)」と呼ばれる状態で、ひどい痛みや、吐き気などの症状を引きおこし、症状によっては臓器の壊死や摘出といった問題にも発展します。嵌頓状態であることが判明すると緊急手術が行われることもあります。

鼠径ヘルニアを発症したことが判明したら、嵌頓状態に陥る前に治療を行うことを心がけましょう。


鼠径ヘルニア(脱腸)の原因

ヘルニア

径ヘルニアを発症する原因は先天性と、後天性のものがあります。

先天性の鼠径ヘルニア

鼠径ヘルニアは出産した時点で発症することもあります。これは胎児期にできたヘルニア嚢が出産後も元に戻らず、袋状になっているヘルニア嚢に腸や臓器がはみだしてしまう為です。

また、医学的な根拠はまだはっきりとしていないのですが、1つの家庭内で発症する場合が多いことから、遺伝も鼠径ヘルニアの発症原因の1つなのではないかと考えられています。これが先天性の鼠径ヘルニアです。

後天性の鼠径ヘルニア

後天性の鼠径ヘルニアを最も多く発症するのが40代以上の男性です。原因は老化による筋力の衰えです。

また、長時間立ちっぱなしで腹部に圧力がかかる仕事をしている場合や便秘気味な人、喘息持ち、前立腺肥大の症状が見られる人は要注意です。このような条件に心当たりがあり、太ももの付け根に違和感がある人は鼠径ヘルニアを疑った方が良いでしょう。女性の場合は妊娠がきっかけで発症することがあります。

鼠径ヘルニアは女性よりも男性が発症する可能性の高い病気で、その発症確率は、女性の3倍以上と言われています。また、鼠径ヘルニアには外鼠径ヘルニア、内鼠径ヘルニア、太腿ヘルニアと種類が3つあります。これらの症状の内、2つ以上を同時に発症する場合も稀にあります。

50代を迎えると筋力が著しく低下し、鼠径ヘルニアを発症する確立が高くなるのでより一層の注意が必要です。


鼠径ヘルニア(脱腸)の治療方法

治療方法

鼠径ヘルニアは薬で治療することができないので、治療するには手術が必要になります。先天性の鼠径ヘルニアは自然に治癒する可能性がありますが、後天性の場合は手術が必須です。

鼠径ヘルニアには主な治療方法が3つあります。また、メッシュなどの人工補強材を使用する手術と使用しない手術があり、鼠径ヘルニアの状態や種類によって手術方法を異なります。

従来法(バッシーニ法)

100年以上前から鼠径ヘルニアの手術方法として存在している治療法です。従来法はメッシュなどの人工補強材を使用せずに行われます。

飛び出してしまった部位を切開し、周囲の筋膜をしっかりと縫い付け、衰えた筋膜を補強します。従来法は他の手術方法と比較すると再発する可能性2~10%程と高いです。その為、最近ではメッシュを用いた手術が鼠径ヘルニア手術の主流となっています。

しかし、嵌頓状態に陥り、腸が壊死してしまった場合などは従来法が選択されます。従来法の手術後は痛みが残るため、2~3日ほど安静にしていただく必要があります。また日帰りでの手術は行えないので5~7日ほど入院が必要です。

長所:メッシュ等の人工補強材を使用しない
短所:術後の痛み、再発する可能性が他の手術と比較すると高い、入院が必須
日帰り手術:×

※医療機関によっては、若い女性・これから出産を経験する可能性がある方には、メッシュを使わない方法を提案してくれる場合もあります。患者様の症状などによって従来法でも日帰り手術で小さな傷口で手術を行ってくれる先生もいらっしゃいます。鼠径ヘルニア手術の手術を受ける場合は、よく医師と相談しましょう。また、なるべく経験の多い医師を選ぶと良いでしょう。

メッシュ法

メッシュ等の人工補強材が鼠径ヘルニアの手術に使われるようになったのは、1990年代で、まだ歴史の浅い手術方法ですが、現在の手術方法の主流になっています。鼠径部から飛び出している筋肉の弱くなっている部分を、メッシュを使い補強する手術です。手術後の痛み、再発する可能性が従来法と比較すると低い利点があります。

また、全身麻酔を必ずかける必要もなく、手術時間も短いです。術後は一定時間安静後に歩行も可能で、身体への負担も少ないので日帰りで手術を行うことができます。

長所:手術後の痛み、再発の確率が従来法と比較して少ない、手術した当日から歩行可能
短所:・感染症の可能性がある場合手術ができない場合がある
日帰り:可能

メッシュ法の種類としては、メッシュプラグ法・ダイレクトクーゲル法・クーゲル法・リヒテンシュタイン法など、それぞれ症状にあわせた最適な治療方法があります。

腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術法

腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術法は、腹腔鏡(ふくくうきょう)を使って行う手術方法です。腹部内をカメラで写しながら、鼠径ヘルニアを修復します。衰えた筋膜の補強はメッシュを使って行います。

腹腔鏡を使う利点としては、必要最低限の傷で治療が可能で、腹内部を確認しながら手術を行うので、難しいような症例でも手術を確実に行うことができます。

治療には全身麻酔が必要なので、入院が必要な場合もあります。

鼠径ヘルニアの日帰り手術

10年程前まではメッシュ等の人口補強材を使う手術があまり一般的ではなかったので、日帰り手術は難しいと考えられていました。しかし、麻酔方法の進歩とメッシュを使った手術方法により日帰り手術が可能になりました。

初診時は診察、心電図、レントゲン、血液検査等、手術に必要な検査を行います。

手術は静脈麻酔と局所麻酔を併用し、鼠径部を切開し行われます。手術時間自体も短く、30~50分が目安です。

日帰り手術で使われる麻酔は、深い眠りに入ってしまうような強い物ではなく、呼びかけると気がつくぐらいの麻酔が使用されます。もちろん痛みは感じません。麻酔がこのレベルの強さであれば、手術は1時間ほどで歩行できるレベルに回復し、3~4時間ほどで帰宅可能となります。


治療費用

手術費用

従来法

保険適応:○
治療費:約70,000~90,000円
入院が必要な場合の治療費:90,000~110,000円
※片側手術の場合。両側手術の場合+20,000~30,000円

メッシュ法

保険適応:○
治療費:約40,000~60,000円
入院が必要な場合の治療費:60,000~80,000円
※片側手術の場合。両側手術の場合+20,000~30,000円

腹腔鏡手術

保険適応:○
治療費:約70,000~90,000円
入院が必要な場合の治療費:90,000~120,000円
※片側手術の場合。両側手術の場合+20,000~30,000円

高額療養費制度に該当

鼠径ヘルニアの手術は高額療養費制度の支払い対象となっています。治療時に発行された領収書を保存し、高額療養費制度に関する申請書類を準備してください。

申請に関する情報はこちらのウェブサイトから確認できます。
(高額な医療費を支払ったとき:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3030/r150

任意保険の手術給付金が適応される場合も

患者様によりますが、加入している入院保険、生命保険の種類によっては、特定の給付金を受け取ることができます。保険会社によって制度は違いますので、治療の際は確認してみてください。


まとめ

鼠径ヘルニアの手術は、短い時間で済むこともある為、簡単だと思っている人もいますが専門的な知識が必要です。ですが、しっかりとした知識、経験のある医師であれば、手術の危険性は極めて低いです。

鼠径ヘルニアの治療は保険が適用嵌頓状態まで悪化してしまうと手術は難しくなりますし、激しい痛み、吐き気を伴い、最悪の場合臓器の壊死し、摘出しなくてはならないこともあります。

もし、鼠径ヘルニアの疑いがあるようであれば、症状が悪化する前に1度専門の医療機関に相談してみてください。

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野口 泰芳 医師

東京都町田市薬師台1−25−12

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