2016.05.16

医師が教える小児鼠径ヘルニア(脱腸)の症状・原因・治療方法

この記事の監修ドクター

監修ドクター
薬師台おはなぽっぽクリニック
野口 泰芳 医師

東京都町田市薬師台1−25−12

050-5281-3351

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小児ヘルニア

鼠径ヘルニア(そけいへるにあ)と言われると、あまり聴きなれない病名かもしれません。鼠径ヘルニアは脱腸(だっちょう)のことです。

成人が鼠径ヘルニアを発症する主な原因は、老化によって筋力が低下してしまうことがあげられます。

鼠径ヘルニアは乳児、幼児でも発症する可能性がある病気です。乳児、幼児が発症する原因は先天性(せんてんせい:生まれた時からそうであること)の場合がほとんどです。また、小児外科を受診する患者様で最も外科手術が多いのが小児鼠径ヘルニアです。

今回は「小児の鼠径ヘルニア」をテーマに、小児鼠径ヘルニアの症状、原因、治療方法について説明します。

※掲載内容に関しては、専門の医師に監修いただいております。


鼠径ヘルニア(脱腸)とは

そけいヘルニア
鼠径ヘルニアは鼠径部にある筋膜(きんまく:皮膚の下に存在している白く薄い膜のこと)が、足の付け根辺りから、恥骨にかけて穴があいてしまうことで、腸や内臓が皮膚の下に飛び出してきてしまう病気のことです。鼠径ヘルニアというと聴きなれないかもしれませんが、脱腸のことです。

成人だと、加齢が原因で筋膜がゆるんでしまい、30~40代以降に発症することが多い病気ですが、小児のヘルニアは母親のお腹の中にいる時に腹膜(ふくまく:肝臓や胃等の腹部の臓器の一部もしくは全体をとりかこんでいる膜のこと)の一部が下がってしまうことで発症します。

小児の場合でも5%ほどの確率で発症するといわれているので小児のヘルニアは発症する可能性が高い病気です。1歳6ヶ月検診、3歳検診のような定期的に行われる検診で発症していることが明らかになることがあります。

また、小児のヘルニアを発症している赤ん坊は、泣いてお腹に力を入れると足の付け根が膨らむので、その症状をみてご両親が気がつくこともあります。

小児の鼠径ヘルニア(脱腸)症状

 小児そけいヘルニア 赤ちゃん

足の付け根(鼠径)部分が腫れあがります。また、症状が悪化するとひどく痛んだり、吐き気を伴ったりします。

自覚症状がない場合でも、足をピンと伸ばした時に鼠径部や陰嚢が腫れていたり、大陰唇(だいいんしん)が大きかったりすると小児鼠径ヘルニアの可能性があります。

ただ腫れあがっているだけであれば、治療の緊急性はそこまで高くありません。しかし「嵌頓(かんとん)」状態にまで悪化してしまうと、治療を急ぐ必要があります。

嵌頓状態のヘルニアは簡単に元に戻せず、痛みを伴います。また、症状が悪化すると腸、卵巣、精巣に血行障害等の問題が生じ、壊死や出血性梗塞等の症状につながる可能性もあります。

小児鼠径ヘルニアは自然に治ることもありますが、嵌頓状態に陥ってしまうと非常に大きな問題を伴う為、手術による治療が必要となります。

放置すると

小児鼠径ヘルニアによる悪影響を感じないからといって、放置しておくのは危険です。小児鼠径ヘルニアは自然に回復することもありますが、その可能性は低いです。かつ、もし嵌屯状態になったとしたら、臓器の壊死や、卵巣や精巣を摘出する必要が出てくる可能性もあるので非常にリスクが高くなります。

小児鼠径ヘルニアであることがわかったら、可能な限り早急に医療機関での診察・治療を行うことをおすすめします。

男児と女児の違い

男児と女児で小児鼠径ヘルニアの症状はことなることがあります。

太ももの付け根から陰嚢部にわたってしこりが発生するのが、男児の鼠径ヘルニアです。陰嚢部が腫れあがるのも男児の鼠径ヘルニアの特徴です。

水瘤という病気の場合も陰嚢が赤く腫れあがる症状がみられる為、小児鼠径ヘルニアなのか否か?病状を見極め、他の病気と混合しないように警戒する必要があります。

女児の小児鼠径ヘルニアは、男児の小児鼠径ヘルニアほど赤く腫れあがりません。しかし、はみ出してくるのが腸ではなく卵巣の場合があります。

このはみ出た卵巣が、万が一、捻転(ねんてん)等で嵌頓状態になってしまった場合は卵巣を摘出する手術が必要になってしまうこともあります。小児鼠径ヘルニアは男児の方が女児よりも発症しやすいという結果がでているそうです。

赤ちゃんは声を出せませんし、症状を把握することは難しいので、オムツ交換の際にご両親が注意してみてあげてください。


遺伝?小児が鼠径ヘルニアになる原因

小児の鼠径ヘルニアは、胎児期に腹膜にできてしまったでっぱりが、閉じることなく産まれてくることが原因で発症します。生まれてくるまでの過程が原因ですので、それを具体的に予防したり、改善することは現在では明確な方法はありません。

遺伝による発症

また、遺伝によって発症するとも考えられています。まだ医学的な根拠はハッキリとしていない状態ですが、家庭内で(小児)鼠径ヘルニアを発症することがあるのも事実です。

治療方法

小児ヘルニア手術

小児の鼠径ヘルニア手術

成人の鼠径ヘルニア手術と、小児の手術は手術方法が異なります。成人の手術を行う際は人口補強材を使用しますが、小児の手術では身体が未成熟であることと、発症した根本の原因が筋力の衰えではない為、人工補強材は使われません。

基本的な手術方法は、糸でヘルニア嚢(へるにあのう:はみ出した部分を指します)の根元を縛り、塞いでしまう方法です。

開腹手術(かいふくしゅじゅつ)

腹部を切り開いて行う手術が「開腹手術」です。手術は全身麻酔をかけて行われます。鼠径部を切開し、原因となったヘルニア嚢を取り出してしまします。その後、根元の部分を糸でしっかりと縛り、はみ出していた臓器が飛び出さないようにします。切り開いた皮膚を縫い手術は完了です。

腹腔鏡手術(ふくくうきょうしゅじゅつ)

腹腔鏡手術は、近年行われるようになった手術法です。手術の際に残る傷と、手術後の痛みが小さく済むのが利点です。

手術は全身麻酔をかけて行われます。鼠径部ではなく、おへその周りに穴をあけて、空けた穴から腹腔鏡と機具をお腹に挿入します。挿入した機材をつかって小児鼠径ヘルニアを修復します。修復後、開腹手術と同じく、糸でヘルニア嚢の根元をしばり、臓器がはみ出さないようにし、あけた穴を塞げば手術は完了です。

小児の場合は、人工補強材は腹腔鏡手術でも使用しません。

自然治癒

小児の鼠径ヘルニアは手術をしなくても自然治癒する場合があります。自然治癒する確率は3割程度と言われております。しかし、生後6ヶ月までは可能性がありますが、1年以降は確率がグッと下がり、自然治癒することがほとんどなくなります。その為、小児鼠径ヘルニアであることが判明した場合は手術を検討された方がよいでしょう。

小児鼠径ヘルニアの再発について

上記にも記載しておりますが、小児鼠径ヘルニアの原因は先天的なものなので、専門の医療機関で手術を行えばほとんど再発することはありません。成人になってから鼠径ヘルニアになる場合は、筋膜の衰えが原因となりますので、小児鼠径ヘルニアと成人鼠径ヘルニアでは再発についても異なります。


合併症「嵌頓」について

合併症とは、病気を発症することで合わせて発症する病気のことです。前述しましたが、小児鼠径ヘルニアを発症すると、合併症として「ヘルニア嵌頓(かんとん)」を発症することがあります。

ヘルニア嵌頓(かんとん)

小児鼠径ヘルニアは腸や臓器が、元々あった場所からはみ出した状態になってしまう病気です。はみ出してきた経路が狭かったりすると、臓器を強く締め付けてしまい、血流が悪くなってしまうことがあります。

このように血流が悪くなり、充分な血液が行き届かなくなってしまった状態を「嵌頓」と呼びます。嵌頓は非常に危険な状態で、臓器が固くなってしまいますので、押して戻すこともできなくなりますし、強い痛みを伴ったり、吐き気に襲われたりします。また、状態が悪化すると嵌頓状態になった臓器が壊死したり、摘出しなくてはいけない状態になったりします。嵌頓状態にまで進行していなかったとしても、疑いがある場合は早急に手術を行うことをおススメします。

また、小児の鼠径ヘルニア手術は成人の鼠径ヘルニア手術と比較して簡単だと思っている人もいますが、小児の鼠径ヘルニア手術には専門的な技術が必要になるので、難易度は高くなります。小児の鼠径ヘルニア手術を行う場合は専門的な技術をもった医療機関で行うことをおすすめします。

まとめ

小児ヘルニア
小児鼠径ヘルニア(脱腸)の症状・原因・治療方法でした。重要なポイントを改めてまとめておきます。
・鼠径ヘルニア=脱腸
・成人が発症する主なきっかけは老化等による筋力の衰え
・小児が発症する原因は先天性で、胎児期に腹膜にできたヘルニア嚢が元にもどらなかった場合、そのヘルニア嚢に腸や臓器がはみ出してきて発症する
・小児が発症する確率は5%程度ある
・小児鼠径ヘルニアで最も警戒するべきなのは嵌頓(かんとん)
・嵌頓状態にまで症状が悪化すると、激しい痛み、吐き気を伴う。また、はみ出した臓器が壊死してしまう、摘出しなくてはならない場合がある
・男児の鼠径ヘルニアは他の病気と症状が似る場合があるので注意する
・女児の鼠径ヘルニアは腸の変わりに卵巣がはみ出すことがあるので要注意
・小児の鼠径ヘルニアは約3割程度の確立で手術をしなくても自然に治癒することがる。ただし自然治癒を見込めるのは生後6ヶ月ぐらいまでで、1歳をすぎると自然治癒する確率がほとんどなくなる
・赤ちゃんは症状を確認できないので、ご両親が注意する必要があります

以上です。重要なポイントが多く、覚え切れないかもしれませんが、小児鼠径ヘルニアは、治療が遅れてしまい嵌頓状態まで悪化すると、取り返しのつかないことになってしまう状況になることもある病気です。小児の様子がおかしいと感じたら必ず医療機関に相談するようにしてください。

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野口 泰芳 医師

東京都町田市薬師台1−25−12

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