便秘や下痢になりやすい方は、切れ痔になりやすい方といえます。切れ痔になると出血や排便時に痛みがあります。男性よりも女性の方に多く見られる切れ痔の症状別治療法、日帰り手術、治療費用についてご紹介します。
掲載内容は、専門の医師に監修していただいております。
目次
切れ痔(裂肛)とは
切れ痔は、裂肛(れっこう)とも呼ばれます。便秘の時に硬い便を出そうと強くいきむと肛門が裂けてしまった状態を切れ痔(裂肛)といいます。切れ痔は、勢いのよい下痢便でも肛門が裂けることがあります。症状としては、切れ痔からの出血、排便時以外にも痛みがあります。
治療方法は、薬を塗って治るケースがほとんどですが、日常生活で便秘や下痢が改善されなければ、切れ痔が再発して慢性化し、「肛門ポリープ」や「見張りイボ」を併発するケースもあります。そうなってしまうと手術治療が必要となります。
切れ痔を根本的に治すには、便秘や下痢の改善が必要となります。
肛門ポリープとは
肛門と直腸の間にある境界線(歯状線)にある肛門乳頭が排便の際に刺激を受け、炎症したり、線維化して大きく伸びて脱出したものを肛門ポリープといいます。慢性の切れ痔が原因で起こることが多いです。他には、下痢や便秘、痔核、痔ろうなどの歯状線上の刺激によって発症します。治療は局所麻酔で切除を行う必要があります。
見張りイボとは
よくいぼ痔(内痔核)と間違われますが、いぼ痔ではありません。見張りイボは肛門の外側にできる皮膚のたるみで、慢性化した切れ痔や切れ痔の後に便の細菌が入り炎症を起こしてできます。治療は、塗り薬で行いますが、外科的処置(切除)で行うこともできます。
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切れ痔の手術内容
切れ痔は基本的には塗り薬使って1週間程度で治りますが、下痢や便秘が改善されずに慢性化されるケースがあります。そうすると肛門周辺の皮膚が線維化、瘢痕(ハンコン)化して皮膚が狭まって(しぼんで)しまったり、肛門括約筋が過度に緊張した状態になります。そうなると手術を行う必要があります。
用指肛門拡張術
慢性化した切れ痔によって肛門括約筋が過度に緊張して、激しい痛みがある際に行う手術です。麻酔をして、指を使って肛門を拡げて、肛門括約筋の過度の緊張を緩めることで症状が改善します。日帰り手術が可能です。
側方皮下内括約筋切開術(LSIS)
肛門括約筋が過度に緊張する事で、切れ痔をたびたび繰り返してしまう場合に行う手術です。手術内容としては、肛門括約筋の一部をメスで切開します。そうする事で肛門括約筋の緊張が取れ、切れ痔の慢性化が改善します。手術時に、肛門ポリープが併発している場合は、同時に切除を行います。日帰り手術が可能です。
裂肛切除術、肛門ポリープ切除
切れ痔が慢性化していると、切れ痔が深く溝のようになっているために、治りにくい状態になっているケースがあります。このケースの場合、切れ痔を切除して(裂肛切除術)治りやすい形に整え、同時に肛門ポリープや見張りイボが併発している場合は、切除します。
また、その際、肛門括約筋の緊張が過度にある場合は、側方皮下内括約筋切開術(LSIS)手術も行い、切れ痔の慢性化を改善するようにします。日帰り手術が可能です。
皮膚弁移動術(SSG)
慢性化した切れ痔の線維化・瘢痕化(はんこんか)部分を切除し(裂肛切除術)、切除した後の欠損部分に近くの皮膚を移動させて、覆いまぶせます。そうすることで、肛門が狭まっていた状況が改善し、慢性切れ痔の症状が改善します。日帰り手術で行っている場合と入院が必要な場合と医療機関によって異なります。
切れ痔の手術費用について
切れ痔の治療は健康保険・国民健康保険の適応となります。
切れ痔の手術費用 ・・・3割負担の場合約2万円~3万円
切れ痔の手術の保険適用について
上記にも記載しましたが、切れ痔の手術はすべて保険適応で行えます。
また、切れ痔の手術を受けたことで月の医療費が高くなった場合は、高額療養費制度を活用することによって、一定額の返金があります。任意保険に加入されている方は、対象保険となるか保険会社に確認してください。対象手術であれば、給付金を受け取ることが可能です。
切れ痔の手術の入院期間、日数について
切れ痔の手術は、局所麻酔もしくは静脈麻酔併用で行うので、日帰り手術が可能です。手術時間も10分~30分程度で終わります。手術が終わったら、傷口を診察してもらうと帰宅できます。麻酔方法によっては、手術後点滴を行い、3~4時間安静にしてから、帰宅することができます。入院施設があるところは、1泊~2泊の入院で治療を受けることもできます。手術後、2~3日安静にしていれば、日帰り手術でも問題はありません。
痛みや出血は大丈夫?手術後の経過で注意すべきポイント
手術の痛みは、手術法によって最適な麻酔法で行われるので、ほとんど痛みはありません。切った手術をした方は、自宅に帰ると傷口の麻酔の効果が切れて、強い痛みが出る場合があります。強い痛みがある手術では、通常の痛み止めと効果の強い鎮痛剤を処方されますので、内服してください。どうしても痛みがひどい場合は、注射(神経ブロック)で痛みを抑える方法があります。
手術後の注意点として、便秘で無理にいきんで硬い便を出そうとしないでください。大量出血する恐れがあります。
切れ痔の手術で完治可能?術後の再発率
他の痔もそうですが、痔を患った場合、適切な治療を受けると症状は治りますが、そもそも痔を患った原因となる日常生活の改善について意識して行動しないと再発したり、他の痔を患ってしまいます。
切れ痔の場合は、慢性的な便秘と下痢を解決する必要があります。そうすればほとんど再発することはなくなります。
便秘の対策としては、
・食物繊維をしっかりと食事で摂る事
・水分をしっかり取ること
・無理なダイエットをしない
・排便の習慣をつけること
・排便時に強く・長い時間いきまない
・適度な運動を行う
下痢の対策としては、
・食べ過ぎないように心がける
・アルコールの取りすぎに注意する
・辛いもの、刺激が強いものを食べ過ぎない
・冷たい飲み物・食べ物を摂り過ぎない
など、できる範囲のことに取り組んで自分で再発防止をしましょう。
女性で切れ痔手術が不安な方へ
切れ痔は、男性よりも女性がかかりやすい病気です。女性の体の構造上、便秘になりやすいのですが、それに加えて、ダイエットをしたり、あまり運動をしない、水分を取らないと切れ痔によりなりやすいと言えます。治療後も切れ痔が慢性化し、手術が必要なケースが出てきます。手術となると術後の痛みがありますが、手術後の説明で、痛み止めとさらに強い鎮痛剤等を処方されるので、ある程度痛みは抑えられます。心配な方は、入院ができる施設で1~2泊の入院で手術を受けると安心だと思います。
また、妊娠・出産を気に切れ痔が発症するケースも多いです。妊娠中は、原則手術は行いません。塗り薬の治療となります。ひどい症状があっても、出産後の手術となります。塗り薬の注意点ですが、市販の薬をいくつか試したり、混合して使わず、専門医師または産婦人科で処方された薬を使うようにしてください。
切れ痔手術の体験談【23歳 女性】
3年近く切れ痔を患って、痛みがひどくなり、またしこりのようなものができてきたので、肛門科に行って症状を見てもらったところ、切れ痔が慢性化しており、肛門ポリープもできていると言われました。通常は薬で治るらしいのですが、放置して切れ痔が慢性化していると手術が必要だと言われました。痔の手術は痛みがあると聞いていたので、手術を躊躇しましたが、慢性化した切れ痔を放置すると、そこに菌が入ってさらに症状が悪化してくると良くないと説明を受けたので、治療する決心をしました。入院が必要だと聞いていたのですが、日帰り手術で、入院の必要がありませんでした。手術は麻酔のおかげで痛みはありませんでした。治療後に先生から、帰宅した後に痛みが出たら、鎮痛剤を飲むように言われました。それでも痛みが治まらない場合は、注射をして痛みを抑える方法があると説明を受けました。帰宅してから、麻酔の効果がなくなってくると傷が痛み始めました。薬を飲んだのですが、痛みはありましたが、我慢できました。何度か通院して状況を確認してもらい治療は終了しましたが、切れ痔は、便秘や激しい下痢が原因になり、私の場合は、便秘を改善するための生活指導を受けました。今は、痔の痛みにも悩まされていませんが、手術を受けるととても大変なので、症状が軽いうちに治療を受けて置けばよかったと思いました。
まとめ
切れ痔の主な原因は、便秘と下痢です。切れ痔は通常は塗り薬で治療が可能で、1週間程度で治ります。ただ、症状があるのに治療を行わないと切れ痔が慢性化して、肛門の皮膚や括約筋の過度の緊張で肛門が狭まってしまいます。また、肛門ポリープや見張りイボを併発して、手術が必要となります。手術は、日帰り手術が可能ですが、切除を行った方は、手術後に痛みがありますので、痛みの対応方法について医師からの説明をしっかりと聞くようにしましょう。できるだけ慢性化する前に切れ痔の治療を行うようにしましょう。
また、切れ痔が治療によって治ったとしても、日常生活の改善(便秘や下痢)が習慣化していると、切れ痔を再発します。便秘や下痢の症状を起こさないように日常生活を見直すようにすることが予防につながります。