2016.05.10

医師が教える小児の鼠径ヘルニア(脱腸)の日帰り手術と費用

この記事の監修ドクター

監修ドクター
北仙台はせがわクリニック
長谷川 和住 医師

宮城県仙台市青葉区昭和町4-3 北仙台ひまわりビル2階

050-5282-3819

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赤ちゃん

鼠径ヘルニア(そけいへるにあ)とはいわゆる「脱腸」のことです老化による筋力の衰えで発症することもあれば、先天性な原因で出産時に発症する可能性もある病気です。

鼠径ヘルニアを放置しておくと「ヘルニア嵌頓(かんとん)状態」という非常に危険な状態に陥り、命が危険にさらされることもあります。

今回は「小児の鼠径ヘルニア」をテーマに、どのような病気なのか、手術方法、費用について説明したいと思います。

掲載内容は、専門の医師に監修していただいております。


鼠径ヘルニア(脱腸)とは

「鼠径(そけい)」とは太ももの付け根のことで、「ヘルニア」とは体の臓器や組織があるべき正しい場所から「突出・脱出」した状態のことを表します。

鼠径ヘルニアは、本来はお腹の中に納まっている腸や腹膜の一部、女児の場合は卵管、卵巣が、太ももの付け根(鼠径部)から皮膚の下にはみ出してきてしまう病気のことです。「鼠径ヘルニア」という病名はあまり認知されておらず、一般的には「脱腸(だっちょう)」と呼ばれることが多いです。

鼠径ヘルニア(脱腸)は0歳から発症する可能性がある病気です。乳幼児・小児が発症する鼠径ヘルニアのことを「小児鼠径ヘルニア」、成人が発症する鼠径ヘルニアのことを「成人鼠径ヘルニア」と呼びます。

子供が外科に通う原因で1番多いのが小児鼠径ヘルニアで、約1~5%が発症します。乳幼児・小児が発症する原因は先天性のものが多いです。成人が発症する場合は体の組織の弱体化が原因であることが多いです。40代以上の男性の場合は肥満気味・便秘気味だったり、立ち仕事をしている人が発症しやすいと考えられております。

小児の鼠径ヘルニア症状

子児
小児の鼠径ヘルニアの症状や治療法などは成人の鼠径ヘルニアとは異なります。前述しましたが鼠径ヘルニアは子供がおこなう外科手術の症例としては最も多く、約1~5%の確率で発症すると言われています。

男児の鼠径ヘルニアについて

小児が鼠径ヘルニアを発症する原因は先天性の場合がほとんどです。小児が男の子の場合は、出産が近くなるにつれて陰嚢(いんのう)内に睾丸(こうがん)が下ってきます。下ってくる時に腹膜も一緒に引っぱられてしまうことがあり、この引っぱられた腹膜が袋状になってしまい、袋の中に腸やお腹の組織が入り込んでしまうことで小児鼠径ヘルニアが発症します。

女児の鼠径ヘルニア

女児の場合は睾丸ではなく、「ヌック管」と呼ばれる管が、出産が近くなるにつれて下ってきます。

このヌック管が腹膜を引っぱってしまうと袋状になってしまい、その袋の中に腸やお腹の組織が入り込むことで小児鼠径ヘルニアが発症してしまいます。

小児鼠径ヘルニア原因について

粘膜が突出した状態になったものを「腹膜鞘状突起:ふくまくしょうじょうとっき」といいます。この腹膜鞘状突起が鼠径部に残ってしまうことで小児鼠径ヘルニアが発症します。

腹膜鞘状突起は胎児の出産が近づくにつれ、男児の場合は睾丸が、女児の場合はヌック管が鼠径部に下ってくる際に、腹膜も一緒に下らせてしまうことでできます。この時にできた腹膜鞘状突起は、治療しなくても時間の経過と共に自然に閉鎖する場合もあります。

左右両側に腹膜鞘状突起ができることもあります。片側にできた小児鼠径ヘルニアを治療した後に、小児鼠径ヘルニアが反対側にもできる可能性は約10%と考えられています。

嵌頓(かんとん)

鼠径ヘルニアは臓器や組織が本来あるべき場所から飛び出してしまっている状態なのですが、通り道が狭く、飛び出している臓器・組織を強く締め付けてしまうことがあります。強く締め付けられた臓器・組織は血流が悪くなってしまいます。この状態は「ヘルニア嵌頓」という状態で非常に危険な状態です。

ヘルニア嵌頓状態になった臓器・組織は固くなったり、むくんだりして、元の位置に戻すことが難しくなります。小児の場合も痛みを感じるため様子がおかしくなります。ヘルニア嵌頓の疑いがある場合は、早急に医療機関へ相談し治療を急ぎましょう。

小児の鼠径ヘルニア手術は、他の手術と比較して簡易的だと考えている人もいますが、専門的な知識が必要で難しい手術です。その為、小児専門もしくは鼠径ヘルニアの専門医師がいる医療機関で治療を行うことが必要です。


女児の鼠径ヘルニア注意点

注意点
女児の鼠径ヘルニアには注意してください。女児が鼠径ヘルニアを発症した場合、腸ではなく、卵巣が脱出してしまう場合があります。もし、卵巣が脱出した状態でヘルニア嵌頓状態に陥ってしまったら、最悪の場合は卵巣を摘出することもあります。

卵巣は腸管よりは壊死に至る可能性は低いと言われていますが、捻転(ねんてん)してしまい壊死してしまうこともあります。脱出している部位が卵巣だと判明した場合は手術を急ぎましょう。

小児の鼠径ヘルニア手術

手術
小児の鼠径ヘルニア手術は、成人の鼠径ヘルニア手術と方法が違います。鼠径ヘルニアを発症する原因が身体の衰えではないので、手術に人工補強材は使用しません。手術方法としては、ヘルニア嚢(のう)の根元を糸で縛り塞ぐ方法で行われます。※ヘルニア嚢とは、脱出している体内組織を覆っている袋状(腹膜)の事です。

開腹手術(かいふくしゅじゅつ)

開腹手術は腹部を切り開いて行われる手術です。小児の鼠径ヘルニア手術の主流となります。初めに全身麻酔をかけて、鼠径部を切開します。切開後、腸や臓器が中に入っていたヘルニア嚢を取り出し、周りについている組織を丁寧にはがします。ヘルニア嚢の根元を糸で縛り、腸や臓器が再び外にはみ出さないようにします。その後、切開した皮膚を閉じます。

腹腔鏡手術(ふくくうきょうしゅじゅつ)

最近用いられるようになった手術法です。

腹腔鏡手術も初めに全身麻酔をかけてから行われます。おへその近辺に小さな穴をあけて、腹腔鏡と機具をお腹の中に入れ、鼠径ヘルニアの修復を行います。ヘルニア嚢の根元を糸で縛り、腸や臓器が再び外にはみ出さないようにします。その後、切開した皮膚を閉じます。腹腔鏡手術の場合でも人工補強材は使用しません。

小児の鼠径ヘルニアは自然に治る?

先天性の原因で発症する小児の鼠径ヘルニアは、治療しなくても自然に治る場合があります。しかし、手術による身体的負担を恐れて、自然に回復するのを見込み、手術を後まわしにするのは避けたほうが良いです。

手術時期の目安は医療機関によって異なりますが、原則、嵌頓状態になる可能性が低い小児の場合だと、手術がおこなわれるのは生後4~6ヶ月以降とされています。症状によっては手術時期を早めることもあります。

入院期間の目安は医療機関によって異なりますが約1~5日ほどです。医療機関によっては日帰り手術を行っているところもあります。


小児鼠径ヘルニアの手術費用

従来法(開腹手術)
保険適応:○
治療費(3割負担):約6万円前後
入院が必要な場合の治療費:1泊約10,000円前後
※片側手術の場合。両側手術の場合+20,000~30,000円

腹腔鏡手術

保険適応:○
治療費(3割負担):約70,000~90,000円
入院が必要な場合の治療費:1泊約10,000円前後
※片側手術の場合。両側手術の場合+20,000~30,000円

高額療養費制度に該当

鼠径ヘルニアの手術は高額療養費制度の支払い対象となっています。医療機関より発行される領収書はしっかりと保存し、高額療養費制度の申請書類を準備してください。

高額療養費制度に関する詳細はこちらから確認してください。(高額な医療費を支払ったとき:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3030/r150

任意保険の手術給付金が適応される場合も

鼠径ヘルニアの手術が給付金の対象となっている入院保険や、生命保険に加入している場合は、特定の給付金を受け取ることができる場合があります。手術給付金が支払われる基準は保険会社毎に異なりますので、担当者様に確認してみてください。


手術時期と手術時間

時期

手術時期について

鼠径ヘルニアが嵌頓状態にまで悪化する可能性は全体の5%ほどだと考えられていますが、それでも手術は早いにこしたことはありません。スケジュールと相談して、可能な限り早い時期に治療・手術を受けるように調整しましょう。

手術にかかる時間

手術時間は医療機関によって異なりますが、目安は30~60分ほどです。ただし、発症してから放置した期間が長く、症状が悪化している場合は時間が長くなることがあります。

手術後は2、3時間ほど安静にしていただき、症状によっては鎮痛剤を使用していただきます。もし、痛みや違和感などの異変があったら医師に相談するようにしましょう。


術後について

日帰り手術で治療した場合

自宅で療養となります。手術後様子をみて問題なければ自宅に帰えることができます。

入院中

手術が終った直後は、全身麻酔の影響がある可能性があります。主に吐き気、頭痛などの症状が伴うことがあります。

入浴は3日ほど時間をあける必要があります。

自宅療養について

退院後でも発熱したり、違和感がある場合は、すぐに医師に相談してください。手術後6ヶ月ほどは、手術した箇所に若干のつっぱりを感じることがあります。このつっぱりは1年ほどで気にならないレベルになります。

また、便秘は大敵です。水分と野菜(食物繊維)を充分に摂取し、便秘にならないよう注意しましょう。


まとめ

以上、小児の鼠径ヘルニア(脱腸)手術と費用についてでした。

小児が鼠径ヘルニアを発症する可能性は高く、症状によっては手術をしないと命に関わる場合もあります。子供の様子がおかしかったり、辛そうだったら1度近くの医療機関で相談してください。成人の鼠径ヘルニア(脱腸)とは、原因や治療方法が異なります。

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長谷川 和住 医師

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