人工妊娠中絶とは
人工妊娠中絶とは、妊娠を中断させるための手術です。中絶手術が受けられる期間は、妊娠22週未満までとされておりますが、12週未満とそれ以降で、手術方法が異なります。また、中絶手術を実施できるのは「母体保護法指定医」のみです。望まれない妊娠をしてしまった方や、どうしても出産できない理由があり中絶をしなければならない方は、母体保護法指定医に相談しましょう。
中絶が受けられる期間について
人工妊娠中絶手術が可能なのは22週未満(21週6日)までとされています。それ以降は、いかなる理由であれ、中絶手術を行うことができません。また、中絶手術を受ける時期によって、「初期中絶手術」と「中期中絶手術」に分類されます。
中絶手術を受けるならば、できるだけ早いに越したことはないですが、妊娠6週~9週が妥当な時期と言われております。その理由は、妊娠4~5週間ほどの場合、子宮頚管が硬く、子宮が開きにくい状態のためです。また、10週目以降になる胎児も大きくなってきているため、手術は徐々に難しいものとなります。
中絶手術方法について
妊娠初期の場合(12週未満)
妊娠初期とは、妊娠12週までのことを言います。この期間の中絶を初期中絶といい、掻把法、もしくは吸引法をという術式を用います。
掻把法
特殊な器具を使い、胎児をかき出す手術方法で、古くから行われています。子宮を傷つけてしまう可能性があるため、医師の技量が問われます。
吸引法
筒状の器具を子宮内にいれ、子宮内の胎児を吸引する方法です。掻把法に比べて、術中や術後の合併症が少ないとされており、身体への負担も軽減された手術方法です。WHO(世界保健機構)でも推奨されております。
妊娠中期の場合(12週~22週未満まで)
12週以上経過した場合の手術は中期中絶手術といいます。妊娠初期に比べ、手術の方法も異なり、リスクも高くなります。また、中期中絶は法律的に「人工死産」と位置づけられていますので、役所に死産届の提出、火葬、納骨などのお手続きも必要になってきます。もし、やむを得ない理由で中絶手術を行う場合は、できるだけ初期の段階で受けるようにしましょう。
手術は胎児が大きくなっているため、初期中絶で行う掻把法や吸引法は適応できません。人為的に子宮を拡げ、陣痛を促し、胎児を身体の外へ出します(流産)。そのため、出産と同様の強い痛みが伴います。妊娠の経過数が進むほど身体への負担も大きいものとなります。手術後は原則として入院が必要になります。
知っておきたい中絶手術の合併症とリスク
痛み
術後数日~1週間にかけて生理痛のような痛みが生じます。手術後に痛み止めが処方されますので、ご自宅で服用するようにしてください。
出血
手術後は、出血が起こります。出血には個人差がありますが、おおよそ1~2週間前後続きます。術後数日は、立ち仕事や重労働は避けるようにしてください。
感染症
まれに、感染症をおこす場合があります。発熱や子宮の痛みなどの症状が起こります。感染症と診断された場合、抗生物質を投与します。
子宮穿孔
子宮に孔が開いてしまう状態です。不妊の原因になる場合もあります。
PAS(中絶後遺症候群)
中絶手術を受けた後、精神的に苦痛を感じる方も少なくありません。中絶後に発症するストレス障害をPASといいます。過剰反応になったり、攻撃的になったり、不眠など様々な症状が起こります。精神的負担は大きいものなので、カウンセリングやアフターケアも重要になってきます。
中絶手術の費用
中絶手術は自費診療となりますので、クリニックによって値段が異なります。初期中絶の場合大体10万円前後、中期中絶手術の場合が大体20万~30万円前後が相場です。中期中絶手術の場合は、ほかにも入院費が必要となります。
中絶をしないために
中絶手術は身体的にも精神的にも負担は大きいものです。そのため中絶手術を行わずにすむように、きちんと避妊を行いましょう。万が一、性行為中にコンドームが破れてしまったり、避妊をするのを忘れてしまった場合には、72時間以内であれば緊急避妊方としてモーニングアフターピルがあります。できるだけ早めに婦人科に受診してください。