2018.02.01

手のしびれ・指先(中指)のしびれ「手根管症候群」の原因・症状・治療方法|医師が解説

この記事の監修ドクター

監修ドクター
池上整形外科
池上 亮介 医師

藤沢市鵠沼藤が谷2-1-21

0466-26-3711

http://www.ikegami-seikei.com/

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手根管症候群とは

手根管症候群って聞き慣れない言葉ですね。手根管がどこにあるのかもよく分からないかもしれませんが、実は手首から先がしびれるといった症状で整形外科を受診される方にもっとも多く見られる疾患が手根管症候群なのです。

手根管とは手首の直ぐ上の掌底あたり、母指球と小指球という掌の左右の膨らみの間にあります。手首の関節部分にある手根骨と、屈筋支帯と呼ばれる横手根靱帯に囲まれたトンネルで、指を動かす9本の腱と腱鞘、1本の正中神経が通っています。
何らかの原因で手根管内の圧力が上がり正中神経が圧迫を受けると、手がしびれる症状が現れます。これが手根管症候群です。

手根管症候群による手のしびれには、現れる部位に大きな特徴があります。手指のしびれは小指を除く4本に限られます。小指にしびれは出ません。

また、しびれが現れる時間帯にも特徴があります。また、明け方にしびれがひどくなるという特徴があります。また、しびれだけでなく、痛みを伴います。


手根管症候群の原因

突然発症する突発性のものは、とくに更年期の女性、妊娠期・出産期の女性に高頻度で発症しています。しかし、なぜ突発的に手根管症候群が起こるのか、はっきりとした理由は分かっていません。
ほかに手根管症候群の原因と考えられるものを見てみると、

・手の酷使による滑膜炎(指を曲げる腱の炎症)
・リウマチによる滑膜炎
・手首の骨折
・手根管内の腫瘍
・糖尿病
・アミロイドーシス(異常タンパク質が臓器に沈着する難病)
・腎疾患、透析
・痛風

などが挙げられます。

手根管症候群の症状

手根管症候群では、手全体がしびれているように感じる人がほとんどなのですが、注意深く観察すると、親指から薬指にかけてしびれや感覚低下がみられます。小指にしびれは出ません。
というのも、圧迫を受けている正中神経が感覚を支配している領域が、親指・人さし指・中指・薬指の親指側半分までだからです。小指(および薬指の小指側半分)の感覚を支配しているのは尺骨神経という別の神経なのです。

発症後、しびれが起こる順番にも特徴があります。
最初から小指を除く4本の指がしびれるわけではありません。初期の段階ではまず中指にしびれが現れます。そして進行するにしたがって、そこからほかの指へとしびれが広がっていくケースがほとんどです。

しびれが出やすい時間帯があるというのも大きな特徴です。そして痛みを伴うことがほとんどです。
進行した状態では、明け方に痛みやしびれを強く感じます。強い痛みで目が覚めてしまうこともあります。手を振ったり、指を曲げたり伸ばしたりすると、しびれや痛みが和らぎます。

進行した場合、母指球の筋肉の筋力が低下し、筋肉が萎縮してきます。
正中神経は運動神経として手首・手指の屈曲、母指球の筋肉運動を支配しています。手がこわばって、親指と人さし指でOKサインをきれいにつくれない、裁縫などの細かい仕事がしづらい、シャツのボタンがかけづらい、財布の小銭をつまみにくいなどの症状が出て、日常生活へのダメージも大きくなります。

手根管症候群の診断

手のしびれで受診する患者さんに対しては、症状が出ている範囲を確認し障害が起きている神経を特定します。感覚障害がどの範囲に広がっているのかを確認することで、より中枢に近い神経の障害である胸郭出口症候群や頸椎の変形などと鑑別することも重要です。

ティネル様徴候

手首の手関節(手根管)を打腱器などで叩いて、指先にしびれが走るかどうかを確認します。このしびれをティネル様徴候といいます。しびれが走れば陽性となります。

ファレンテスト

両手首を直角に曲げて、手の甲同士を合わせて保持します。これはしびれを誘発するテストで、手首を曲げることによって手根管内の圧力を高めています。1分以内にしびれや痛みが悪化する場合、陽性となります。

パーフェクトオーサイン

先にも触れましたが、手根管症候群が進行すると親指と人さし指でOKサインが上手につくれなくなります。親指の筋力が落ちているために出てくる症状です。母指球の筋力低下や筋萎縮を診ます。

神経伝導速度検査

圧迫されて障害を受けている正中神経に直接電気を流して、親指が動くまでの時間を測定します。これによって神経障害の程度を確認します。

超音波(エコー)検査、MRI検査

正中神経の圧迫が腫瘍や腫瘤が原因で起こっている疑いのある場合には、エコー検査やMRI検査を行います。


手根管症候群の治療

保存療法

手根管症候群であることが確定した場合、日常生活に支障がない程度であれば保存療法を行います。手関節に器具などを装着して患部の安静を保ち、消炎鎮痛剤として治療効果が高いといわれているステロイドの一種ケナコルトを注射し、ビタミン剤などを服用します。

手術による治療

しびれや痛みが強くてなかなか取れない、親指の付け根がやせる、指の感覚が失われてきたなど手根管症候群の症状が強くなり、保存療法では軽快が期待できない場合には、手術を行います。

手根靱帯を切離して手根管自体の容積を増加させ、正中神経への圧迫を取り除きます。同時に親指の機能回復のために腱を移行して母指球の筋肉の一つである母指対立筋の再建術も行います。
腫瘤などが神経を圧迫している場合には、やはり切開してこれを切除します。

手術は日帰りで受けることができます。以前は前腕から掌にかけて大きく皮膚切開をする必要がありましたが、現在では切開する傷口も小さく、身体への影響を最小限に留められるようになってきました。入院の必要がなく健康保険も適用になるため、経済的負担も軽くすみます。水仕事などへの若干の制限はあるものの、手術当日から手を使うことができます。

感覚や運動を司る神経に関わる手術ですので、神経損傷などの重大な合併症が心配されます。手は繊細な感覚を持っています。神経が一つ傷つくだけでも日常生活に大きな支障となることが予想されます。治療・手術の方針について詳しくていねいな説明が受けられる信頼できる医師で、手の外科手術の経験豊かな専門医による手術を受けるようにしてください。

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