2018.04.20

おしっこに血(血尿)や血の塊が出た際の原因・症状・病名・治療方法|医師が徹底解説

この記事の監修ドクター

監修ドクター
あいおいクリニック
村田 方見 医師

市川市南行徳1-16-8

047-306-7878

http://www.aioi-clinic.jp/

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血尿とは

血尿とは、文字通り、尿に血液(赤血球)が混ざることです。切り傷などによる出血とは違って体内からの出血ですから、素人目には原因も直ぐには分かりませんし、内臓に大きなダメージがあるのではないかと心配になります。

血尿には、「肉眼的血尿」と「顕微鏡的血尿」があります。
肉眼的血尿は、血液が尿に混ざって赤くなっているため見て直ぐに分かります。

一方、顕微鏡的血尿は、見た目は普通の尿に見えても、顕微鏡や試験紙などを用いた検査で一定数以上の赤血球が確認できるものをいいます。
健康診断などで行われる尿検査では、試験紙を使って尿中のヘモグロビンなどの赤血球成分を調べ、血液が尿に漏れ出しているかどうかを確認します(尿潜血反応といいます)。また、必要に応じて、尿を遠心分離機にかけ沈殿成分を顕微鏡で観察する検査(尿沈渣検査)を行うこともあります。
顕微鏡的血尿の頻度は加齢とともに増加します。また、男性よりも女性に多く見られるといわれています。

血尿は、尿をつくる腎臓や、尿の通り道である尿管、尿を溜めておく膀胱などの病気の顕著なサインです。血尿の検査はこれらの病気をスクリーニングするための有効な方法です。


血尿や尿に血の塊が混じる原因

血尿は、血液を濾過して老廃物を体外に輩出する腎臓に関わる病気と、尿の排出路にあたる尿管や膀胱などの病気がおもな原因となります。
腎臓に関わるものでは、腎がん、腎結石、腎炎、腎膿瘍、糸球体腎炎などが上げられます。腎臓に血管の異常があるために血尿が現れることもあります。
泌尿器系では、腎盂がん、膀胱がん、尿管がん、前立腺がん、膀胱炎、尿管結石、膀胱結石、前立腺炎、尿道炎などが上げられます。

腎がん、膀胱がんなどの悪性腫瘍は命に関わるものですが、これらは血尿を契機として見つかるケースが多いようです。膀胱がんの85%は目で見て分かる血尿が出たことで医療機関を受診し見つかっています。

膀胱がんを含む尿路に発生するがんを尿路上皮がんといいます。具体的には腎盂、尿管、膀胱、尿道に発生するがんです。血尿の検査を行うに当たってこれらのがんに対するリスクファクターが考慮されます。主なものでは
・40歳以上の男性である
・喫煙歴がある
・化学薬品などの有害物質への曝露
・骨盤放射線照射暦がある
などが挙げられています(血尿診断ガイドライン検討委員会)。
化学薬品への曝露とは、化学工場や印刷工場、美容院などで頻繁に有機溶媒を使用するなどしていた方に多く発症するがんで、職業がんともいわれています。

痛みがない場合って病気?

結石などは激しい痛みを伴うことでよく知られていますが、血尿は認められるものの痛みを伴わない場合、「疲れているからだ」と放置しておくケースも少なくありません。確かに、疲労が蓄積したときや激しい運動をした後などに血尿が出ることがあります。これは生理現象の一つで、とくに心配することはありません。また、女性の場合には月経血が混ざっているケースもよくあります。

痛みを伴わない血尿を「無症候性血尿」といいます。この場合でも時には重大な病気が隠れていることがあるため、注意が必要です。

その第一が腎臓や尿路上皮の悪性腫瘍(がん)です。最初から最後まで血尿が出る全血尿が特徴です。膀胱がんはある程度進行するまでは血尿以外の症状が出にくいといわれています。
痛みを伴うことで知られる結石も、腎臓に結石がある場合には痛みがない血尿が出る場合があります。
また、慢性糸球体腎炎の場合にも、痛みを伴わないことが多いようです。糸球体とは腎臓にあって、血液を濾過して尿として老廃物を排出する組織です。この病気の場合、痛みは伴わず顕著な自覚症状はありません。尿に蛋白が混じっているのが特徴です。

男性で考えられる病気・病名

血尿診断ガイドラインでもリスクファクターとして「40歳以上の男性」と挙げられていますが、尿路上皮がんは女性よりも男性に多く見られ、40歳以上に多く発症する傾向にあることが分かっています。こうしたがんの要因として確実視されているのが喫煙です。喫煙者である場合やある程度の期間の喫煙経験がある方は、血尿の疑いがあった場合、早めの受診が必要です。

前立腺がんは初期にはとくに症状がありませんが、進行すると血尿や排尿困難の症状が出ます。60歳代以降、患者の割合が増え始めます。リンパ節と骨に転移しやすいといわれています。
前立腺肥大症でも血尿が見られることがあります。前立腺が肥大あるいは過剰な収縮をする結果、頻尿、尿漏れ、残尿感などの排尿トラブルを引き起こします。原因は不明ですが、加齢とともに患者の割合は増加します。

腎臓、尿管、膀胱にできる尿路結石も男性に多く見られる病気です。結石の正体はカルシウムやマグネシウムなどのミネラルにシュウ酸やリン酸などが加わって石のように固まったものです。結石のほとんどは腎臓で成長します。男性ホルモンがシュウ酸を増やす傾向にあるため、男性の患者が多いと考えられています。


女性で考えられる病気・病名

女性の場合、血尿の原因として考えられる病気の第一位は膀胱炎です。膀胱炎は大腸菌などの細菌が尿路を通って膀胱に侵入して感染、粘膜に炎症を起こす病気です。女性に発症者が多いのは、尿道が短く細菌が侵入しやすいためです。

排尿には細菌を洗い流す作用があったり、健康な状態では免疫の力で炎症がおさえられたりするのですが、疲れやストレスなどによって免疫力が低下していると炎症を起こして出血します。
症状としては、トイレが近くなり、残尿感が残ります。また、尿に血が混じったり濁ったりして、排尿時に痛みを感じます。

トイレを我慢して膀胱に負荷をかけたり、不衛生な環境でセックスを行ったりすると膀胱炎のリスクは高まります。
また、ウォシュレットなどのシャワートイレの使いすぎで膀胱炎になることもあるようです。強い水流が細菌を尿道に押し込んでしまったり、細菌から保護している皮膚面膜まで洗い流してしまったりすることが原因だといわれています。

さらに女性特有の不正出血が血尿と取り違えられることもあります。不正出血は生理周期でない時の膣内からの出血です。血尿ではありませんが、生殖器の異常を示しているケースもありますので、医療機関を受診して原因を突き止めておきましょう。

治療方法

肉眼的血尿はもちろんのこと、健康診断などで尿潜血が陽性(+)だった場合には、直ぐに専門医を受診してください。
専門医は尿沈渣を行って血尿を確認すると、超音波検査を行ってがんや結石の有無などを確認し、血尿の原因を探っていきます。何らかの病気の可能性が高い場合にはCTやMRI、膀胱鏡、電子スコープ(膀胱を直接観察する機器)などによってさらに詳しく検査をします。
また、尿に混ざっているがん細胞を調べる尿細胞診などを行います。

尿沈渣でミオグロビンという成分が検出されることがあります。激しい運動後の尿が赤褐色になっている経験がある人も多いと思います。ミオグロビンは筋肉中に含まれる色素で、筋肉が損傷したような場合に尿中に放出されて出てきます。横紋筋融解が起こり骨格筋が壊死を起こしたような場合には腎不全などを起こして死にいたるケースもあります。

血尿の原因が特定されたら、それぞれの疾患に応じて専門医による治療を受けてください。

まとめ

肉眼的血尿と顕微鏡的血尿は尿に含まれる血液成分の量の違いです。したがって、肉眼的血尿はより重篤な病気のサインだといえます。ただ、顕微鏡的血尿であっても安心というわけではありません。血尿は腎臓や尿路組織にがんができているサインかもしれません。一度は血尿が見られたけれど、直ぐに見られなくなったというケースであっても、悪性腫瘍が進行しているケースがあります。その他多くの病気のサインであるということを肝に銘じて、すぐにも専門医を受診することをお勧めします。


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