2016.04.07

医師が教える下肢静脈瘤の日帰りストリッピング手術と費用

この記事の監修ドクター

監修ドクター
北仙台はせがわクリニック
長谷川 和住 医師

宮城県仙台市青葉区昭和町4-3 北仙台ひまわりビル2階

050-5282-3819

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下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)の「ストリッピング手術」は、いくつか種類がある下肢静脈瘤の症状の中で「伏在静脈瘤(ふくざいじょうみゃくりゅう)」という症状の治療に適している治療法です。

下肢静脈瘤は症状によって名称がことなり、適切な治療方法、症状、浮かびあがる静脈の太さによって違います。症状に適切でない治療を行うと合併症や、後遺症を伴う危険性もあります。

今回は、「ストリッピング手術」をテーマに、以下項目について説明します。

・ストリッピング手術の詳細、費用
・ストリッピング手術が適している症状
・日帰りのストリッピング手術
・ストリッピング手術の保険適応
・ストリッピング手術の後遺症や合併症
・ストリッピング手術の術後の注意点

「最近、足が重い・だるい」「足が痛い」「むくみがとれない…」「血管が盛り上がってきている・目立つ」といったお悩みを抱えている方に読んでいただきたいです。

※掲載内容は、専門の医師に監修していただいております。


下肢静脈瘤とは

初めに、下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)という病気について説明します。下肢静脈瘤は発症している人の数に比べて、まだまだ認知度が低い病気です。病名を言われても、「どのような病気?」とピンとこないと思います。まずは、下肢静脈瘤の症状、症状があらわれる箇所について説明したいと思います。

下肢静脈瘤は発症すると、足の静脈が肥大化し瘤(こぶ)のようにボコボコしたり、クモの巣状に血管が浮きでたりします。

脚は皮膚のすぐ下に表在静脈という血管が通っています。その血管(静脈)の機能が異常をおこし、血管内で血液の逆流が起こると血管が脚の表面に浮き出てとても目立ってしまいます。下肢静脈瘤は身体に次のような悪影響をもたらします

・足がだるくなる
・足が重くかんじる
・足がつりやすくなる(こむら返り)
・痛みをかんじるようになる
・ひどくむくむ
・足の血管がデコボコになる

命に関わるような症状ではありません。また、足を切断するような状態まで悪化することは極稀です。しかし、表在静脈の中でも太い血管が浮きでて、足の皮膚の表面がボコボコになるなど、見た目がひどくなるため、特に女性はスカートのような足を露出する衣服が着用できないなど、精神的なストレスがかかる場合があります。

1日中同じような姿勢で働いている人、妊婦さん、血族に静脈の病気をしたことがある人、これらの条件に心当たりがある人は下肢静脈瘤になりやすい傾向があります。適度な運動をすることで足の筋肉や、ふくらはぎを鍛えたり、弾性ストッキングのような血行を改善するアイテムをつかうことで日頃から下肢静脈瘤の予防をする必要があります。


ストリッピング手術に適した症状

伏在静脈瘤参考画像URL:http://www.think-vein.jp/common/img/naka/about2_img07.jpg

ストリッピング手術は「伏在静脈瘤(ふくざいじょうみゃくりゅう)」の治療に適しています。

下肢静脈瘤は足の静脈の内側にある血液の逆流を防止する「弁」が壊れて機能しなくなり、静脈内の血液が逆流を起こし発症する病気です。ストリッピング手術は弁が壊れ、静脈瘤の原因となっている血管(静脈)を、以下の手順で引き抜く手術です。

① 問題となる血管を取り除くために足を切開します。
② 問題が発生している血管内に手術用のワイヤーをとおし、糸で血管とワイヤーを結びます
③ 神経を傷つけないようにワイヤーをゆっくりと引き抜くことで血管も同時に引き抜いていきます。その結果、静脈瘤を引き起こしていた血管はなくなります。

手術は、局所麻酔(TLA麻酔)もしくは全身麻酔をかけておこないます。現状、手術後に2~3日入院する場合もありますが、症状や医療機関によっては日帰り手術を行うこともできます。患者様の負担を軽減するために、局所麻酔で行う日帰り手術が主流となってきております。

下肢静脈瘤を治療せず、放置した場合

下肢静脈瘤は慢性進行性良性疾患なので、足の切断につながったり、命が危険にさらされるようなことは滅多にありません。ですが、放置しておくと症状が徐々に悪化していく病気です。

症状が重度になると、皮膚に黒色の色素沈着(しきそちんちゃく:細胞に色素がたまって、色がかわってしまうこと)があらわれたり、蜂窩識炎(ほうかしきえん:赤く足がはれあがる症状)を発症したり、皮膚が潰瘍(かいよう)化したり、血栓性の炎症を引き起こしたりします。

症状が軽い状態では症状の改善は比較的短い期間で行えますが、重症化してからの症状の改善には期間もかかってしまうため早期治療が望ましいです。


下肢静脈瘤の日帰りストリッピング手術

日帰りストリッピング手術


ストリッピング手術は、超音波検査で血液の逆流や、異常のある静脈の位置をある程度確認し、問題のある範囲の静脈にワイヤーを挿入して引き抜く手術です。患者様から「静脈をひきぬいてしまって大丈夫なの?」という質問をよくいただきますが、痛んだ血管は取りのぞいても問題ありません。

心臓に戻る血液は、主に足の深部静脈という血管を通っています。下肢静脈瘤の原因となる表在静脈(皮膚の近くにある静脈)を引き抜いてしまっても、深部静脈があるので、血液の循環には問題はありません。また、静脈瘤を引き起こす原因となる血管を引き抜いてしまうので再発する可能性は低くなります。

日帰りストリッピング手術

日帰り手術の場合はTLA麻酔と呼ばれる局所麻酔を行います。入院手術と行うことは変わりません。ほとんどの下肢静脈瘤の症状で日帰り手術が可能です。
入院手術との違いは、手術の麻酔法と手術後自宅で療養するか、病院で療養するかの違いです。現在では、日帰り手術で治療を受ける方が、入院の手間や経済的・精神的負担などが軽減できると考える方も多くなってきております。

日帰り手術の場合でも、通常のストリッピング手術とおなじく、保険診療として受診することができるので、入院費用がかからない分安く治療ができます。

日帰りのストリッピング手術を行った後は、すぐに歩く事ができ、そのまま自宅に返れます。

通常の入院を必要とするストリッピング手術

手術にかかる時間は1時間ほどです。手術時は全身麻酔をかけておこないます。基本的に1泊2日~最大3泊4日の入院が必要になります。

術後は弾性の包帯を治療した足全体にまき、患部を保護します。包帯は数日後にはずされ、その後、弾性ストッキングを着用し、患部の保護、再発の防止をおこないます。この弾性ストッキングは約1ヵ月ほど着用していただくことになります。

手術することで、日常生活に支障をきたすほどの影響がでることはありません。ですが、旅行や、激しい運動、負担の大きい労働は1週間ほど様子をみてからの方がよいでしょう。

ストリッピング手術のメリットは、下肢静脈瘤の症状が発症している患部を血管(静脈)ごと取りのぞくため、再発する可能性が非常に低いところにあります。術後に静脈瘤が若干のこる可能性がありますが、一定期間(1週間~1年)で小さくなり、めだたなくなります。もし、静脈瘤が気になる場合は硬化療法・静脈抜去・スタブ・アバルジョン法を併用して行うことでほとんど取り除く事ができます。

ストリッピング手術の費用と保険適応

費用
ストリッピング手術には通常の健康保険が適用されます。

費用は、片足のストリッピング手術の場合で、(保険が適用され3割負担の場合)約30,000~40,000円、1割負担の場合で約10,000~14,000円となります。この金額はあくまで目安なので、患者様毎に治療費はことなります。治療をすすめる際は担当の医師に相談して確認してみてください。

また、手術後に弾性ストッキングを着用します。自費診療となり、約5,000円~10,000円となります。

ストリッピング手術の後遺症や合併症は?

入院

後遺症

血管(静脈)を引き抜く手術なので、硬化療法やレーザー治療と比較すると、術後に痛みを感じたり、治療した痕に皮下出血を起こす可能性が若干高いです。

また、可能性は低いですが静脈瘤の位置がわるく、神経にちかい場合は神経障害(しびれ)などの後遺症をともなうことがあります。しびれは、ある程度期間が経てばなくなります。また、他の治療法とくらべると以下のようなメリットもあります。

■高位結紮術(こういけっさつじゅつ)とくらべた際のメリット

・症状が改善されるまでの期間がみじかい
・再発する可能性がひくい

■血管内治療(レーザー・高周波)とくらべた際のメリット

980nmレーザーはストリッピング手術の方が皮下出血等の症状が少ないというデータもあります。最新の1470nmレーザーや高周波はストリッピング手術よりも痛み、皮下出血が少ないと言われています。

合併症

合併症としては、以下の症状がひきおこされる可能性があります。

・皮下出血
・神経痛

しかし、合併症がおこる確率は0.2~0.3%ほどで非常に低確率です。心筋梗塞、エコノミー症候群等の合併症を心配する人もいますが、これらの症状は手術後に歩行をしっかりとすれば発症する心配はありません。治療後は医師の指示に従い、日常生活を送ってください。


ストリッピング手術の術後の注意点

術後は一定期間包帯をまいて生活します

ストリッピング手術の術後は、手術した足に自己粘着性弾力包帯(じこねんちゃくせいだんりょくほうたい)という包帯がまかれます。この包帯は術後3日から1週間ほど着用してもらうことになります。

着用してから3日から1週間ほどで不要になるので、その後は抜糸(日帰り手術では抜糸が必要のない溶ける糸を使う場合もあります)し、弾性ストッキングを着用していただきます。

包帯の着用中に膝を極端にまげたりすると、包帯が膝につよく食いこむことがあるので痛んだりします。包帯を着用している期間はできるだけ膝をまげないように心がけてください。また、なにか問題があったらお医者さんに相談するのがいいでしょう。

力仕事や激しい運動は控えてください

洗濯、掃除、食事などの日常生活は問題ありませんが、力仕事や激しい運動は控えるようにしてください。弾性の包帯が肌に食いこんで痛くなるような場合があります。お仕事柄どうしてもという場合は、医師に相談してどの程度まで動かすのか相談してください。その他にも気になる事があれば医師に相談するようにしましょう。

術後の流れ

日帰り手術の場合

手術後、翌日から3日以内に来院し、診察を受けます。その後1週間後、1ヵ月後に来院して問題なければ、治療は終了となります。
遠方から日帰り手術を受けた方は、翌日~3日以内の来院を電話での診察で対応してくれる医療機関もあります。医師に相談してください。

入院の場合

退院後1週間ほど経過したら、術創の診察と抜糸のために(抜糸のいらない縫合もあります)再度来院が必要です。その後、1ヶ月後に来院して、異常がなければ治療は終了となります。



まとめ

以上、下肢静脈瘤のストリッピング手術に関する説明でした。ストリッピング手術は出血や痛みなどの副作用が起こる可能性がある治療方法です。治療は医師と念入りに話しあい、最善の方法を見極めた上で進めていきましょう。手術も日帰り手術と入院手術があります。麻酔法と医師の技術により、日帰りも入院も手術に変わりはありません。日帰り手術で受けられる方は、自宅で療養し、できるだけ日常生活に影響なく治療を行いたい方、経済的負担を抑えたい方がいらっしゃいます。縫う院手術を受けられる方は、ご高齢で自宅の療養よりも入院の方が安心できる方が受けられます。

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