2017.12.20

おしりから血が出た際の原因・症状・治療方法 | 医師が解説

トイレで用を足し、水を流す前に見ると便器が血液で赤くなっている、ペーパーが血で染まるなどが起こればだれもが慌てると思います。おしりから血が出ると痔だと反射的に思ってしまいがちですが、大腸などの病気によって出血が起こっている場合もあります。そして、大腸からの出血であった場合には、すみやかな受診が必要なケースが実は多いのです。

今回は専門医の監修の元、「おしりから血が出る」さまざまな病気についてご説明しています。

おしり?大腸?

おしりからの出血があったら、必ず早めに受診してください。というのも、おしりからの出血は痔だけで起こるわけではなく、大腸がんの可能性があるからです。大腸がんはがんの死因では男性第3位・女性第1位の疾患であり、男性の罹患率では第1位です。
痔に比べ、大腸がんによる出血は赤黒い・どろっとしている・便に混じっている傾向がありますが、できた場所によっては当てはまらない場合もあります。
40歳を過ぎた頃からリスクが高まりはじめるため、特に中年以降の方はご注意ください。
また、大腸からの出血を起こす病気には、大腸がん以外にも難病指定されている潰瘍性大腸炎があり、その場合もできるだけ早い治療が欠かせません。そして、大腸からの出血が疑われる場合、確定診断には内視鏡検査が必要になります。

いぼ痔に似ている症状の病気もあります!

大腸からの出血ではない場合、いぼ痔(内痔核)による出血が次に疑われます。特に、出血と同時にイボの脱出があれば、ほとんどの場合はいぼ痔だと判断できます。ただし、いぼ痔でも出血だけ起こって脱出しない場合があります。切れ痔に比べ、内痔核での出血はかなり大量な場合が多く、色鮮やかなこともよくあります。ただし、肛門内に溜まって時間が経過した血液の場合、赤黒いこともあります。大量にシャーッと出血して便器が赤く染まる場合は、内痔核であるケースがほとんどです。
潰瘍性大腸炎や肛門近くの直腸がんでは、内痔核に似た出血を起こす場合があるため、必ず消化器専門医を受診してください。また、出血を来す内痔核があり、かつ大腸がんにかかっている場合も考えられるため、大腸内視鏡検査はやはり重要になります。

おしりの診療で行われること

肛門科では、最初に肛門周囲に出血の原因となる病気がないかを視診で確認しますが、ここでは皮膚の炎症の有無、外痔核からの出血、痔ろうなどについてみています。その後、肛門内に指を挿入する肛門指診で直腸内を触れ、いぼ痔、切れ痔、肛門ポリープ、直腸がんなどの有無を調べます。広がり具合を確かめ、指を抜いて膿や血液などの付着がないかを確認します。
次に肛門鏡を用いて内部を眼で確認します。血液の溜まりやその色、場所、状態などから出血の原因を判断します。いぼ痔や切れ痔はこの時点で判断がつきますし、直腸に特徴的な粘膜の状態があったら潰瘍性大腸炎を疑います。
こうした肛門の検査では、患者様にお話をうかがいながら進め、痛みの生じる場所などを伝えていただくことで正確な診断に近づけていきます。
ただし、おしりからの出血は肛門の疾患だけではなく、大腸疾患の可能性があるため、消化器科専門医を受診すると安心です。

おしりからの出血の原因となる代表的な病気

排便後、よく拭いても下着に血液が付着するケースでは、痔ろうや皮膚炎など、出血している場所が肛門より外側にある疑いが高く、肛門の外まで切れてしまった切れ痔でも、歩行した際などに出血して下着に血が付着することがあります。
血液混じりの下痢が長く続く場合は、急性腸炎や下痢による切れ痔、潰瘍性大腸炎、腸アメーバ症などの可能性が高いため、大腸内視鏡検査を受けて、確定診断を受ける必要があります。
便に筋のように血液が付着しており、排便時の痛みがあれば切れ痔の疑いが強く、まれですが直腸ポリープといった疾患でも同じような付着が見られるケースがあります。

特徴的な症状でおおまかには判断できますが、それに当てはまらないケースがとても多いため、症状があったら必ず専門医を受診してください。

 

おしりから出血を起こす可能性のある代代表的な病気について、下記でご説明しています。

いぼ痔

内痔核

内痔核真っ赤な血がポタポタ垂れてくることがあり、慌てて受診される方が多くなっています。内痔核が大きいと、排便時にいきんだ際の圧で勢いよく出て、便器が真っ赤になってしまうこともあります。また、排便後も出血が続き、その血液が肛門内に溜まって、次の排便時に赤黒い血が一気に出ることもあります。

外痔核

外痔核血栓性外痔核では違和感こそありますが、気付かない場合もあります。ただし、外痔核は肛門外にあるため、動作のたびに擦れて表面に穴が開き、常に出血が続くようになることもあります。下着が真っ赤になってはじめて気付いて慌てる方もよくいらっしゃいます。

切れ痔(裂肛)

切れ痔ほとんどの場合、痛みと出血が同時に起こりますが、痛みなく切れる場合もゼロではありません。多くは真っ赤な血液であり、ペーパーにつく程度から、ポタポタ垂れてくる程度まであります。

肛門ポリープ

肛門ポリープで出血を起こすのは、大きくなってポリープの根元が裂けた場合などであり、出血は少量で色鮮やかです。その際にはすでに脱出が起こっており、いぼ痔だと思い込んでいるケースがよくあります。そのため、肛門と大腸の疾患をきちんと見ることができるところで診察を受ける必要があります。

痔ろう

痔ろうでできたトンネル状の管の、肛門の外にある二次口が破れ、それで出血を起こすことがあります。出てくるのはドロリとした血膿で、少量であり、常時出てきて下着を汚します。

皮膚炎

肛門周囲にただれが起こって出血しています。原因のほとんどは、拭き過ぎ、擦り過ぎ、掻き過ぎです。かゆみをともない、血液はペーパーや下着に少し付着する程度です。

直腸粘膜脱

排便時に長年いきみ過ぎて、直腸を支える靱帯がゆるみ、直腸粘膜がずり落ちる病気で、出血は直腸粘膜が擦られて潰瘍になることで起こります。肛門括約筋が衰える高齢者にもよくみられます。また、アナルセックスなど肛門内に異物を挿入することもリスクの高い行為です。
潰瘍が進行すると肛門の外まで直腸粘膜が脱出し、排便時以外にも出血するようになります。出血は鮮血であり、それほど多くはありませんが、粘液が混じる場合があります。また、折り重なった粘膜が直腸を刺激して便意を生じさせるため、常に便意がある状態になるケースも存在します。

潰瘍性大腸炎

難病指定されている病気であり、症状が出る活動期とおさまる寛解期を繰り返すため、寛解期にも適切な治療を受け続けてできるだけ長く寛解期を保つ必要があります。病変は直腸から起こり、徐々に消化管を遡るように広がっていきます。そのため、痔の出血や大腸がんの出血と似ており注意が必要です。
腹痛や血便、下痢といった症状がありますが、排便時の出血だけが起こるケースもよくあります。また、膿性粘液という粘り気のある透明な液が便に混じることもありますが、よほど注意深く観察しないとわかりません。肛門に近い直腸から症状が現れ、特徴的な潰瘍なので、肛門鏡による観察でほとんどの場合は判断できます。

大腸憩室出血

憩室はくぼみのことで、大腸憩室は腸管内に長く圧を受けていてできるとされています。だれにでもできる可能性があり、病気ではなく構造上の変化ですが、憩室には血管が含まれていて壁が薄いため、出血を起こすことがあります。大量の出血を起こし、下痢のような状態で血液だけが出る場合もあります。腹痛など、他の症状はほとんどありません。

虚血性腸炎

大腸粘膜への血流が何らかの原因で一時的に悪くなり、酸素などが不足して虚血状態に陥っています。原因には、下剤による過度な蠕動運動、脱水、便秘などがあります。腸粘膜が炎症を起こして脱落して出血しますが、S状結腸に起こりやすく、その際には左下腹部に痛みを生じます。鮮血や赤黒い粘血便であり量が多く、常に便意がある状態になることもあります。

大腸がん

盲腸、上行・横行・下行・S状結腸にできたがんですが、できた場所により症状が変わります。盲腸、上行結腸周辺の場合には、軟らかい状態の便と血液が混ざって赤黒い便になりますし、肛門側に近い場所の場合には部分的に血液が混ざっているように見え、S状結腸周辺の場合は色鮮やかな血液が付着しているように見える場合もあります。確定診断には大腸カメラでの観察が不可欠です。

直腸がん

肛門に近いので鮮血のケースが多く、いぼ痔の出血と判断が難しい場合があります。進行がんになっていることも多いため、できるだけ早く受診が必要です。便が細くなる、下痢と便秘を繰り返すといった症状が現れる場合もあります。肛門指診の際に硬い腫瘤として確認できることもあります。

まとめ

おしりからの出血があったら、大腸がんの可能性もあるため必ず早めに受診するようにしてください。
また痔を持っている方だと血便になれてしまっている方がおられますが、重大な病気のリスクもありますので、早めに肛門科を受診して適切な診断を受けるようにしてください。