2017.11.14

ワキガの手術(日帰り手術)と費用|医師が徹底解説!

ワキガは手術によって腋の下の汗腺を除去することで、ほぼ治すことができます。ただ、何度も手術を繰り返している人もいるようで、完全に治すことができるのかと不安がる声もあります。その他、薄着の季節には人目に触れやすい部分でもあるため傷跡が残らないか、費用はどのくらいかかるのか、健康保険は使えるのかなど、ワキガ手術への疑問について、専門医の監修の元、説明します。

ワキガの手術の方法

ワキガの原因とは

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ワキガは、腋窩(腋の下)の汗が、皮膚や腋毛に常在する細菌によって分解されることで悪臭を放つのが原因です。消毒・殺菌剤の塗布で常在菌のはたらきを弱めたり、制汗剤などで汗の分泌を減らしたりする対処療法もあります。ただ、生理現象である汗を完全に止めることはできませんし、常在菌はつねにそこにいます。ですので、頻繁に制汗剤などを使用する必要がありますし、重度のワキガでは効果はさほど期待できません。
ボトックス注射によって汗の分泌を抑えるという治療法もありますが、これも効果は数ヵ月から半年くらいで、根本的な解決にはなりません。

腋の皮膚の下にある汗を分泌する汗腺を除去することで、汗そのものを抑えてしまおうというのがワキガ手術です。
汗は生理現象ですから必要があって分泌されます。そんな汗腺を取ってしまって健康上問題はないのかと心配になりますよね。でも大丈夫なんです。

汗腺を除去する

腋の下には汗を出す汗腺が2種類あります。エクリン腺とアポクリン腺といいます。
体温調節などに必要な汗はエクリン腺から出る無色透明な汗です。ほとんど水分からできています。実は、このエクリン腺からの汗はワキガの原因にはなりません。スポーツ後などに大量に汗をかいて放っておくと汗臭さを感じますが、臭いとしてはその程度です。服などについても汗染みにはなりますが、黄ばんだりはしません。

もう一方のアポクリン腺から出る汗には脂質やタンパク質などが含まれていて、これが細菌によって分解される段階で、強烈な臭いの元となる物質がつくられます。服などにつくと、黄色い汗染みになります。
アポクリン腺は元々はフェロモンを発散するための器官だったようです。ヒトの進化の過程でフェロモンの役割が低下しているため、ワキガなどの支障をきたしているならアポクリン腺は除去しても問題ないと考えられています。

このワキガの元となる汗を出すアポクリン腺を除去して臭いの元を絶つのがワキガ手術の目的です。ワキガの場合、多汗症といって、体温調節の機能を超えて大量の汗をかく人がいます。このような場合には、エクリン腺も同時に除去することもあるようです。

手術では、腋の下の皮膚を切開する方法と切開しない方法の2つがあります。
広く行われているのは剪除法(せんじょほう)という、腋の下の皮膚を切開して、皮下組織にある汗腺を切除していく方法です。また、小さな切開創から専用のシェービング機器を挿入して汗腺を刈り取る方法もあります。
最近では皮膚を切開しないで皮膚の上からマイクロ波などを当てて汗腺を焼き切る方式なども普及してきました。傷跡が残らないため美容の観点からも注目されている施術です。

いずれの方法を選択するにしても、ご自身の要望をきちんと医師に伝え、ご自身の生活やご職業などへの影響を検討した上で選択することをおすすめします。

ワキガ手術の詳細については「手術の流れ」の項で、ご説明します。

手術は保険でできる?

手術となると、健康保険で治療できるかどうかが気になりますよね。
ワキガ治療の場合、剪除法では健康保険適用のケースが多いようです。ただ、医療機関の考え方次第という部分があって、剪除法であっても自由診療という医療機関もあります。シェービング法も同様です。
レーザー、超音波振動などの最新機器を使った治療はほとんど自由診療です。
ホームページなどで情報を得た上で、直接医療機関に問い合わせ、さまざまな術式について医師からきちんと説明を受けた上で治療を開始してください。

傷跡はのこる?

切開をする施術では、どうしても傷跡は残ります。切開創は目立たないように腋窩のしわに沿っていますので、時間経過とともにほとんど目立たなくなるといわれています。
ただ、個人差があり、体質や、術後の感染症、色素の沈着などによって、まれに傷跡が目立ってしまうこともあるようです。多くの医療機関のホームページに術後の写真が掲載されていますので、参考にしてみてください。
皮膚を切開しない施術では傷跡が残ることはありません。ただ、1ヵ月程度、内出血や腫れが起こることがあります。

手術費用は?

費用

剪除法

健康保険が適用できるかどうかで料金は大きく変わってきます。

健康保険適用の場合    片側17,000〜20,000円 両側35,000円程度
自由診療の場合    両側で150,000〜400,000円程度

健康保険を適用するかどうかは、目視で汗腺を完全に除去することに求められる技術の高さや難易度、経済性をどう評価するかという医療機関側の判断です。事前に相談をして、納得できるかどうかを確認してください。

シェービング法

120,000〜400,000円程度。
シェービング法について健康保険適用をしている医療機関もあるようです。ベイザー波を使う機器などの場合はやはり高額になる傾向があります。

ミラドライ

330,000〜450,000円程度。
効果も高く、皮膚を切開しないため人気の高い施術ですが、費用は高額になるようです。

術式や料金については医師とよく相談して、納得してから治療を受けてください。

手術の流れ

手術

事前のカウンセリングが重要

各手術の流れに触れておきましょう。
以下に手術そのものの手順を説明していますが、ワキガ手術の流れでもっとも大事なのは事前のカウンセリング、相談、インフォームドコンセントです。

体臭は精神的な影響・負担となっていることがほとんどです。
ワキガの臭いが軽度なのか重度なのか、なかなか本人では判断がつかないことも多いものです。また、職業柄、些細な臭いであってもどうしても気になるケースもあれば、さほど気にしなくていいケースもあるかもしれません。
場合によっては、単なる汗の臭いを気にしすぎるあまり、ワキガではないかと心配になる方もおられます。さらには自己臭恐怖症といって、些細な体臭を気にするあまり、体臭のせいで他人に嫌われているという妄想を抱いて対人恐怖症やうつ病になってしまう方もおられます。

医師によって客観的に臭いを判断してもらって適切な診断を受け、それに最適な施術をしてもらうことが大切なのです。

皮膚を切開するワキガ手術

皮膚を数cm切開し、そこから器具を入れて汗腺を除去していく方法です。使用する除去器具の種類によって、いくつかの術式があります。

剪除法

もっとも広く行われていて、上手に施術が行われればワキガ臭除去の効果がもっとも高い方法だといわれています。
手術の手順は以下のようになります。

1. 局部麻酔をします。
2. 腋の下の皮膚をシワに沿って3〜5cm程度切開して皮膚を裏返します。
3. 皮下組織にあるアポクリン腺を目視しながら、1つ1つ除去します。
4. 症状によって必要であれば、エクリン腺、皮脂腺なども取り除きます。
4. 縫合し、腋をプロテクターなどで固定します。

剪除法のメリット

□効果が高く長続きする
医師が直接目で見て汗腺を除去していきますから、確実に臭いの元を取り去ることができます。
□重度のワキガにも効果的
重度のワキガであっても効果が高く、再発のリスクも低いといわれています。
□健康保険適用
多くの医療機関で保険適用の手術ですから経済的負担も軽く済みます。ただ、同じような手術でも保険を適用していない医療機関もありますので、事前に確認することが大事です。
□その他
アポクリン腺は毛根と直結していて、除去の際に毛根ごと取り除かれることがありますので、多少の脱毛効果もあります。ただ、これはデメリットと考える方もいらっしゃいます。

 

剪除法のデメリット

□切開創が大きい
メスで皮膚を切りますので、どうしても傷跡が残るリスクは避けられません。ほぼ目立たなくなる方がほとんどです。ただ、体質によって個人差はありますが、2、3割くらいの方で傷跡が残るケースがあります。
□ダウンタイムが長い
手術自体は2時間ほどで日帰りで行うことができますが、術後、抜糸が行われるまでの1週間程度は日常生活・仕事・学校などに制限がある状態が続きます。
術後に48〜72時間はプロテクターなどで患部(腋窩)を保護しなければなりません。したがって、両腋を同時に手術するとまったく手が使えない状態にもなり、たとえば排便などの生活に非常に不便を感じます。したがって、片腋ずつ施術するようすすめる医療機関もあります。その場合、もちろんダウンタイムは延びますし患者さんの負担も大きくなります。
□拙劣な施術の場合には再発リスクがある
医師が目で見て汗腺を除去することは確実性を増すメリットである一方、経験が少ない医師だったり、技術が拙劣な医師が施術に当たったりした場合、アポクリン汗腺を取り残すリスクがあります。手術の目的はワキガ臭をなくすことなのに、これでは効果は見込めません。その結果、何度も手術を繰り返すことにもなりかねません。

シェービング法

手順は剪除法とほとんど変わりませんが、使用する器具が違います。もっとも一般的に行われているのが、ドリルのように回転する刃を持ったシェービング機によって汗腺を刈り取り、吸引器で吸い出すことによって汗腺を除去する方法です。

最近ではレーザーや超音波を使ったシェービング機で汗腺を焼き切る施術を行う医療機関もあります。
手術の手順は以下のようになります。

1. 局部麻酔をします。
2. 腋の下の皮膚をシワに沿って1cm程度切開します。
3. 切開口からシェービング機器を挿入して汗腺を刈り取ります。
4. 吸引器などで刈り取った汗腺を吸引します。
4. 縫合し、腋をプロテクターなどで固定します。

シェービング法のメリット

□切開創が小さい
シェービング機器が入るだけの小さな切開創ですみますので、傷口も目立ちにくくなります。
□ダウンタイムが比較的短い
施術時間は30〜40分、日帰りでの施術です。24時間は患部を固定する必要はありますが、生活に制限が必要なダウンタイムは1〜3日程度です。1ヵ月ほどは腫れや内出血が見られることがあります。

 

シェービング法のデメリット

□取り残しのリスクが高い
剪除法では医師が目視で汗腺を除去しますが、シェービング法では傷口を小さくすることが求められる施術ですので目で見ることはできません。皮膚の厚みから汗腺の除去を判断します。したがって、取り残しのリスクが高くなります。効果は60%程度といわれています。
□色素沈着の合併症
腋の下の皮膚が茶色くなることがあります。漂白クリームなどで改善に当たります。

最新機器による施術

最近では、ベイザーシェービングなどの新しい機器を使用した施術があります。
ベイザーは美容の世界では脂肪吸引で実績がある機器です。ベイザー波という特殊な超音波で脂肪だけを液状に溶かして吸引します。血管などその他の組織にダメージを与えにくいため、ダウンタイムが短くてすむというメリットがあります。
これをワキガ手術に応用したのがベイザーシェービングです。特殊な領域の超音波振動を出すことで、アポクリン腺を選択的に破壊することができる医療機器です。「選択的」ですから血管や神経を傷つけることがありません。したがって、予後の経過も良好です。臭い除去の効果は90%以上と、ほぼ剪除法と変わらないといわれています。

皮膚を切開しないワキガ手術

皮膚を切開しないで汗腺を破壊できる医療機器が開発されていて、それらを使った施術が注目を浴びています。何よりも傷跡が残らないというのが、美容の観点からも、身体の負担、ダウンタイム短縮の観点からも大きなメリットです。ただ、ワキガ手術の目的は臭いの除去です。そのあたりの効果はどうなのか、気になるところですね。

ミラドライ

皮膚の上からマイクロ波を照射することで、汗腺を熱破壊する医療機器です。マイクロ波って、電子レンジで食品を加熱するのに使われるものですね。
マイクロ波を汗腺が集中する皮下組織に集中して照射します。ここで水分が多い汗腺にマイクロ波のエネルギーが蓄積され、汗腺を焼き切ります。
施術の手順は以下のようになります。

1. 腋毛を剃った後、テンプレートによってマーキングします。
2. 局部麻酔を行います。
3. マイクロ波を照射します。片側20分程度です。このとき、皮膚表面を冷やしながら行います。
4. 患部を冷却します。

 

ミラドライのメリット

□皮膚を切開しないので傷跡が残らない
一切皮膚を切開しませんので、患者さんの負担はほとんどなく、傷跡が残る心配もありません。
□痛みを感じない
麻酔と冷却療法の効果で、施術中に痛みを感じることはありません。麻酔が切れたときに痛みを感じることがありますが、長引くことはありません。
□ダウンタイムがほとんどない
傷口がありませんので、術後に患部を保護する必要もなく、ダウンタイムはほとんどありません。
□効果が高い
剪除法と同じ程度の高い効果が期待できるといわれています。

 

ミラドライのデメリット

□保険適用外である
自由診療のため、費用が高額になります。
□患部が腫れることがある
ミラドライは汗腺をマイクロ波で焼き切ります。つまり、汗腺あたりは火傷をしているのと同じ状態です。そこがしこりとなって腫れを感じることがありますが、通常1週間〜1ヵ月ほどで解消されます

手術後の注意点

注意点

皮膚を切開する施術の場合、術後にしっかりと患部を固定して、一定期間保護する必要があります。ただ、腋ですから日常生活のなかで腕を使う動作は頻繁にあります。多少の不便さはありますが、医師の指示に従って、固定期間については決して無理をしないようにしてください。

抜糸が行われる1週間程度後までは入浴は控えるようにしましょう。シャワーについては、患部に直接かけないようにして、下半身であれば当日から、上半身については術後3日以上経ってから行うようにしてください。

患部の傷がうまく塞がらないと再治療になるリスクがありますし、感染症などによって傷口が化膿し、思わぬ大きな傷跡となってしまうこともあります。

ミラドライなどの切開を伴わない施術の場合でも、皮膚内部の腫れや内出血が見られることがあります。おおむね1ヵ月までには治まりますが、気になるようであれば医師の診察を受けてください

 

手術する病院はどうやって決めればいい?

ワキガ手術では、まず信頼できる医療機関、医師かどうかを見極めることが第一です。

まずは確実な技術を持っていることはいうまでもありません。
ホームページなどで、メリットだけでなくデメリットについてもわかりやすい説明をしているか、豊富な施術例があるか、体験者の声を載せているかなどをチェックしてみてください。

また、患者のニーズを尊重してくれるかどうか。
たとえば剪除法ではアポクリン腺が直結しているため毛根ごと除去することが多いのですが、その結果、脱毛したのと同じ状態になることがあります。しかし、男性などでは「腋毛は残したい」という希望を持つ方も少なくありません。
傷跡の目立ちにくさも重要です。若い女性なら腋の傷を気にせず自由なファッションを楽しみたいとも思うでしょう。
ワキガ手術の目的は不快な臭いの除去です。しかし、「臭いがなくなればそれでいい」ではないのです。患者さんの要望をつぶさに聞いて、最適な治療を提案してくれる医療機関を探すことです。

その際、何でもわがままを聞いてくれるということではなく、あなたの人生にとって何が最優先されるのかを一緒に考え、あなたのQOL(生活の質)を最大限に考慮した提案をしてくれる医師であれば、手術を任せてもいいのではないでしょうか。

当然のことながら、健康保険適用の有無や料金についても、きちんと説明してもらうことです。剪除法では健康保険を適用している病院としていない病院があります。なぜ適用しているのか、なぜ適用していないのか、その説明を聞いてみてください。どちらがいい、優れているということではありません。どちらにしても、その答えによって、あなたが手術をお願いできるかどうかの判断はつくと思います。

そういう点からも、ワキガ手術でもっとも大事なのは事前のカウンセリングなのです。カウンセリングがおざなりな病院は、その時点で選択から外していいでしょう。

おわりに

ワキガの手術についてまとめました。
ワキガの不快な臭いは一刻も早く止めたいと思う一方で、腋に傷跡が残るのは避けたいと思うのも当然です。とくに女性であればノースリーブや水着になった時に、腋を気にせず過ごしたいですよね。いまはさまざまな術式で患者のニーズに応えられるようになってきています。信頼できる専門医を見つけ、まずは相談してみましょう。きっと解決策が見つかるはずです。