2017.04.24

けいれん性発声障害って?医師が教える症状・原因・治療方法について

この記事の監修ドクター

監修ドクター
たてもと耳鼻咽喉科クリニック
立本 圭吾 医師

京都府京都市東山区三条大橋東入ル大橋町94 三条鈴木ビル5F

075-752-3387

http://www.tatemoto.jp/

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「のどが詰まった感じでうまく声が出ない」、「声が震えてしまう」、「声がかすれてしまう」といった症状で耳鼻咽喉科を受診しても、「のどにも声帯にも異常はありません」といわれてしまうことがあります。「ストレスですね」といわれることもありますが、それはけいれん性発声障害(SD)かもしれません。
今回は、専門医の監修の元、けいれん性発声障害の症状、原因、治療方法について説明します。


けいれん性発声障害とは

けいれん性発声障害では、声を出そうとすると、自分の意のままに声帯が動かず異常な動き方をして、声が詰まったり、のどから絞り出すような声になったり、声がかすれたり途切れたりします。
耳鼻咽喉科を受診しても声帯やのどそのものに異常は見られず、「ストレスから来る症状では」、「精神的なものですね」といわれ、正しく診断されないケースがあります。

発声障害は重篤な病気ではありませんが、一方でコミュニケーションで中心的役割を果たす声の障害であるため、仕事に支障が出る、就職活動が困難になる、学業に影響が出るなど、社会生活上の影響は計り知れません。子どもの場合、いじめの対象になることもあります。
また、正常に声が出ることもあるため発声に異常があることを理解されにくく、人間関係にも影響が出ることが少なくないようです。

20代〜30代の比較的若い女性に多く発症する傾向があります。実際に医療機関を受診した人は2,000人ほどですが、潜在的に患者数は2万人におよぶと推定されています。
アナウンサー、電話オペレーター、インストラクターなど、声を使う職業の方にも患者さんが多く、声が出にくいことが精神的に大きな負担となっていることが多いようです。

発声障害にはけいれん性発声障害によく似た症状のものがあります。不適切な発声が習慣化した結果である機能性発声障害、緊張から咽頭部が閉まってしまう過緊張性発声障害、精神的な要因で起こる心因性発声障害などがありますが、複数の障害を併発していることもあり、医師側の判断が難しい病気でもあります。

けいれん性発声障害は原因が不明であるだけでなく、耳鼻咽喉科の医師にも広く周知されていないため、正しく診断し治療できる医療機関が限られているのが現状です。

けいれん性発声障害の症状

けいれん性発声障害は、声を出そうとすると自分の意思とは関係なく声帯の筋肉が異常な動きをしてしまう病気です。声帯の動き方によって3つのタイプに分けられています。
・内転性:声帯が内側に閉じようとするため、絞り出すような声になる
・外転性:声帯が開いてしまうため、息が漏れ、かすれるような声になる
・複合型:内転、外転が複合したもの
内転性の患者さんがもっとも多く見られます。

聞く側からはほとんど違和感を感じないケースでも、本人には発声しにくい感覚があり、違和感や苦しさを感じることがあるようです。

とくに、「はい」、「おはようございます」、「いらっしゃいませ」など、話し始めで声が出にくいことが多いようです。また、電話での会話や、プレゼンテーションなど人前で話すことが難しいケースがあります。
家族や親しい友人たちなどとのリラックスした環境での会話では、比較的発声が楽になることがあります。

けいれん性発声障害の原因

けいれん性発声障害の原因は不明です。原因は分かりませんが、錐体外路系という筋肉の自発運動に関係した神経系の障害によって起こる筋肉の不随意運動(ジストニア)だと考えられています。声帯を閉じたり開いたりする声帯筋(甲状被裂筋)が自分の意思に反して「閉じよう(内転性)」「開こう(外転性)」とすることで起こります。

けいれん性発声障害は、うまく発声できないことで無理な発声を繰り返しているうちにのどや首、肩、あごなどの筋肉が凝り固まってしまい、よけいにうまく発声できないことがあります。
また、無理な発声を繰り返すことで機能性発声障害を併発したり、うまく話せないことで緊張してしまったり失敗したことが誘因となって過緊張性発声障害や心因性発声障害を併発することがあります。


けいれん性発声障害の治療方法

けいれん性発声障害は発声原因が不明であるため、声帯筋のジストニアに対する対処療法が行われます。意に反して閉じよう、開こうとする声帯筋を閉じすぎない、開きすぎないようにする治療です。

ボトックス注射

もっとも一般的に行われている治療です。医療用につくられたボツリヌス菌の毒素を声帯筋に注射することによって声帯筋の動きを麻痺、脱力させます。けいれん性発声障害の症状は消えますが、注射の効果は2、3ヵ月しか続かず、繰り返しの注射が必要となります。
注射後は嚥下や呼吸がしづらいなどの副作用があるようです。
ただ、声帯へのボトックス注射を行っている医療機関はまだ少ないようです。

甲状被裂筋摘出術

声帯筋(甲状被裂筋の内筋)を摘出します。口から手術用顕微鏡などの器具を入れて行います。全身麻酔で行うため、入院が必要になります。筋肉を切除しますので、元に戻すことはできません。術後に声のかすれが長引くことがありますが、3ヵ月ほどで正常な声に近い状態に戻ります。

甲状軟骨形成術2型

声帯を覆っている甲状軟骨を縦に切開して拡げて、チタン製の金具で固定します。声帯を左右に拡げて閉じようとする動きを抑制します。のどを切開しますが局所麻酔で施術ができ、声帯には触れずに、術中に声を聴きながら甲状軟骨の幅を調節していきます。内転性のけいれん性発声障害には非常に有効だといわれています。1泊程度の入院で手術できますが、術後1週間ほど沈黙を守る必要があります。
手術前とまったく同じ声に戻るわけではなく、少しかすれる、大きな声が出しにくくなるなどの副作用がある場合があります。不調がひどい場合には、元に戻すことができます。

医学的ボイストレーニング

声の病気に対して国家資格を持つ言語聴覚士による発声法のリハビリを行います。

まとめ

けいれん性発声障害はまだ広く認知されていないため、耳鼻咽喉科の医師でも診断に難しさが伴う病気です。一方で、声の出しにくさによって社会生活に大きな負担を抱えている患者さんがたくさんいます。一般社団法人SDCP発声障害患者会が、この病気の認知広報活動を行うと同時に、mixiのコミュニティ「痙攣性発声障害・・・ですが何か?」で患者さんやサポーターの交流を行っています。声が出しにくいことを悩んでいる方は、発声障害専門の医療機関を受診しましょう。そして、SNSなどを通じて同じ病気で苦しむ人たちと情報交換を行うことも、治療に向けての一助になるかもしれません。


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立本 圭吾 医師

京都府京都市東山区三条大橋東入ル大橋町94 三条鈴木ビル5F

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