2017.04.12

女性に多いメニエール病って?医師が教える原因・症状・治療方法

この記事の監修ドクター

監修ドクター
たてもと耳鼻咽喉科クリニック
立本 圭吾 医師

京都府京都市東山区三条大橋東入ル大橋町94 三条鈴木ビル5F

075-752-3387

http://www.tatemoto.jp/

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視界がぐるぐる回ってめまいを感じて、歩くことも座っていることもできないめまい発作を繰り返すメニエール病は、40歳前後の女性に多いといわれています。難聴、嘔吐を伴うことが多い耳の病気です。
今回は、専門医の監修の元、メニエール病の原因、症状、治療法について説明します。


メニエール病とは

メニエール病は前触れもなく突然、回転性のめまいや難聴、耳鳴りを引き起こす内耳疾患です。
「ぐるぐる回転する激しいめまい」を感じ、片耳で耳鳴りや詰まった感じ、難聴が起こります。
こうしためまい発作が反復して現れるのがメニエール病の特徴です。

厚生労働省の調査によれば、10万人あたり15〜18人に現れる病気です。めまいを伴う病気はたくさんあって、原因がよく分からない場合にメニエール病、メニエール症候群などの診断名がつくことがあり、的確な治療のためにはきちんと鑑別しておく必要があります。

国際的なメニエール病診断基準によれば、
A 20分〜12時間続く、2回以上の回転性めまい発作
B 発作の前、最中、後に少なくとも一度は純音聴力検査で低温から中音の感音性難聴が片側にあること
C 変動する耳症状(難聴、耳鳴りや耳閉塞感)があること
D 他の前提疾患に該当しない
という場合、メニエール病が確実であるとされています。

めまい発作が反復して起こることが条件で、1回限りのめまいではメニエール病とは診断されません。
また、聴覚症状のみの場合、めまい発作のみの場合を「メニエール病非定型例」と診断します。
この場合も、他の疾患を厳密に排除する必要があります。

メニエール病に類似の疾患には、外リンパ瘻、突発性難聴、内耳炎、真珠腫性中耳炎、内耳梅毒、脳血管神経障害など、多くのものがあります。鑑別を誤ると的外れな治療になるだけでなく、メニエール病は病気が進行して症状が常態化してしまうと改善、完治が困難になります。

メニエール病の症状

突然起こる回転性のめまい発作は30分程度から数時間続きます。
歩くことも立っていることもできず、頭部を動かすとさらに激しくなります。
眼球がぐるぐると回る眼振が見られます。

また、発作中、何度も吐き気に襲われ、顔面は蒼白になります。
トイレに行こうとしても、めまいのために歩いて行くことができず、はっていくようになります。

同時に片耳に難聴が起こり、とくに低音域が聞こえにくくなり、耳鳴り、耳の閉塞感を感じます。

難聴にもかかわらず一定音量を超えた音だけが耳に激しく聞こえて苦痛となる聴覚補充現象も起きます。
回転性のめまいが治まっても、ふわふわとした浮動性のめまいを感じたり、耳の症状が続いたりします。

めまい発作を繰り返していると病状が進んで、発作時以外でも難聴などの耳の聞こえに関する症状が続くようになり、平衡感覚の乱れも常態化していきます。
めまいの持続時間が数十分程度で短い場合、メニエール病以外の疾患が疑われます。

メニエール病の原因

メニエール病は内耳にある蝸牛、あるいは三半規管と耳石器の、両方あるいはどちらかがリンパにによって水ぶくれ状態になること(内リンパ水腫)で起こると考えられています。

蝸牛は内耳にある聴覚を司る感覚器官で、三半規管と耳石器は平衡感覚を司る器官です。機能が違う器官がリンパの影響を受けますので、影響される部位の違いで症状が異なります。
蝸牛と三半規管・耳石器ともにリンパの影響を受けている場合、めまい、難聴、耳鳴り、耳が詰まった感じなどが同時に起こります。
蝸牛が影響を受けた場合、その強度によって耳が詰まった感じ、耳鳴り、音が響いて聞こえる、難聴などが自覚され、一方、めまいは感じません。

三半規管と耳石器が影響を受けた場合、強いめまいを感じますが、難聴などの聴覚の障害はありません。


メニエール病の治療方法

メニエール秒の検査

メニエール病は類似の疾患としっかり鑑別をし、その上で早急に治療を開始する必要があります。そのため、以下のような検査を行います。

聴力検査

聞こえにくさを確認します。めまいだけを訴えるケースでも、隠れた難聴の症状がないかを確認するため、聴力検査は重要です。

バランスを測る検査

両足立ち、片足立ちをしてもらってバランス感覚を見ます。
また、目をつぶって足踏みをして、足踏み位置のずれを測ります。内耳に疾患がある場合、悪い耳のほうに曲がります。

またマン検査といって、足を前後に開いて、前足の踵と後ろ足のつま先をくっつけて立つ検査を行うことがあります。この状態で目をつぶったり、開いたりします。内耳に原因がある場合は目をつぶるとふらつきます。
どちらでもふらつきがある場合には脳に何らかの原因があることが疑われます。

重心動揺計という機械で、立っているときの体の重心移動を記録して解析する検査もあります。

眼振検査

めまいなどが起きているとき、眼球が一方に寄ってから中央に戻る眼振という動きが起こります。
ものを注視した状態、注視していない状態で眼振が起こるかどうかを見ます。

頭を固定して、目の前のもの(ペンなど)を追う注視眼振検査と、ものに焦点が合わない状態で頭を動かす非注視眼振検査があります。内耳に疾患があるケースでは、非注視眼振検査で眼振が現れやすくなります。
眼振の検査では、ベッドに横になって耳に温風を当てたり、冷たい水や温かいお湯を入れたりして眼振の有無を測ることで、内耳の機能が働いているかどうかを調べる検査もあります。

メニエール病の治療

メニエール病はめまい止め、利尿剤を中心に内服や点滴によって症状の軽減を図ります。
利尿剤は、メニエール病の原因を水腫とみて、全身の水分量を減らすことが目的です。

ただ、薬によって根本的に治療することはできません。メニエール病はストレスや睡眠不足、疲労などが引き金となって発作が起こると考えられています。そこで、初期の段階でめまいを抑える薬を用い、抗不安薬、循環改善薬、ビタミン剤などを併用して心身の安定に努めることで、大きな発作を予防していきます。

薬による治療とともに、ストレスの原因や生活習慣などを見直すことでめまい発作を予防し、あるいは症状を軽減することができるようになります。


メニエール病の発作予防のために

めまい発作の予防には、規則正しい生活、心身のリラックス、ストレスの発散がたいへん重要になります。日頃から注意すべき点についてまとめてみました。

規則正しい生活

めまい発作の誘因の一つに睡眠不足が上げられています。自らの生活習慣や仕事などで睡眠が不規則になるようであれば、是非とも生活スタイルを見直してみましょう。ストレスなどから睡眠障害があるようであれば、医師と相談して適切な処置を受けてください。

食事は心身の健康を保つためにとても重要です。規則正しく食事を摂り、栄養バランスの偏りに注意しましょう。リンパによる内耳器官の水ぶくれがメニエール病の原因と考えられています。そのため、水分や塩分を控えるよう医師から指示されることがあります。

アルコールやコーヒーなどの嗜好品について、とくに制限されることはありません。メニエール病のめまい発作予防にとってもっとも重要なのは、リラックスとストレスの軽減です。こうした嗜好品が身心を落ち着かせてくれるなら、制限する必要はありません。
ただし、いずれも飲み過ぎはよくありません。とくにめまい発作が十分に治まっていないときには、アルコールはかえって強い発作を誘発することがあります。

同じ嗜好品でもタバコは百害あって一利なしです。血液循環を悪くすることでめまい発作を誘発します。できれば禁煙が望ましいといえます。

仕事について

通常は普通に仕事ができていますが、めまい発作が起こると仕事を中断せざるを得ません。そのことで同僚などに迷惑がかかることを苦にすると、それがストレスとなってさらに症状を悪化させることにもなりかねません。こうしたストレスを軽減するには勤務先に病状をきちんと伝え、理解してもらうことが一番です。
就労に関してとくに制限はありませんが、車の運転や高所での作業、危険物の取り扱いなど、めまいが危険を伴う職種では注意が必要です。

趣味、運動など

メニエール病では、ストレスを抱えない、くよくよしないということが発作の予防に重要です。そのため、夢中になれる趣味などを持つことは効果高いといえます。何でもいのですが、ただ、夢中になりすぎて夜更かしなどをして睡眠不足にならないよう注意する必要があります。
パソコンや編み物など、長時間集中すると肩こりや目の疲れを伴うものでは、これによってふらつきが出ることもあります。
旅行などはリフレッシュに最適です。ただ、強い発作直後では電車やバスなどの乗り物の揺れや、飛行機などの気圧変化がめまい発作を誘発することがあります。余裕を持って移動できる行程を心がけてください。

適度な運動は健康維持に欠かせません。楽しんで体を動かせる趣味があれば効果的です。ただ、スコアを競うことでイライラしたりすると逆効果です。また、めまい発作が死亡事故に直結するダイビングなどは注意が必要です。

まとめ

メニエール病に根本的な治療法はありません。薬によって予防、症状の軽減を図りながら、強い発作を起こさないよう、日頃からストレスを避けることが重要です。
ストレスは受験、就職、恋愛、人間関係などの精神的要因のほか、病気や体調不良などの肉体的要因によって生じますが、人によって感じ方も影響も様々なのがストレスです。
たとえば、「くよくよするな」などといわれても、性格上難しいこともあるでしょう。
ですから、「くよくよしない」と考えたり、「これまでの自分を変えなくちゃ」と思うより、「夢中になれるものに熱中する」、「誰かに助けてもらっていい」など、否定的表現を肯定的表現に言い換えて考えてみると、解決策が見つかることがあります。


症状について何でも話せるかかりつけの医師をつくっておくことも、メニエール病の改善には効果的です。発作は病気のせいであって、あなたのせいではありません。ともにストレスの原因を探り、それを解消する手助けをしてくれる医師の存在は、きっとあなたの心の重しを軽くしてくれるはずです。



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