2017.04.11

扁桃肥大って?医師が教える原因・症状・治療方法について

この記事の監修ドクター

監修ドクター
たてもと耳鼻咽喉科クリニック
立本 圭吾 医師

京都府京都市東山区三条大橋東入ル大橋町94 三条鈴木ビル5F

075-752-3387

http://www.tatemoto.jp/

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お子さんがたびたび喉を腫らして高熱を出すケースでは、医師から「扁桃を切りますか?」といわれることがあります。扁桃は、喉の奥にあるリンパ組織です。扁桃が炎症を起こすと高熱が出ます。
この扁桃が大きくなる扁桃肥大は口呼吸やいびき、睡眠時無呼吸症候群(SAS)などの症状を引き起こします。

今回は専門医の監修の元、扁桃肥大の原因、症状、治療法について説明します。


扁桃肥大とは

扁桃とは

扁桃とは喉の奥にあるリンパ組織の総称で、口蓋扁桃、咽頭扁桃、舌扁桃などがあります。
以前は「扁桃腺」と呼ばれていました。口蓋扁桃は喉ちんこ(口蓋垂)の両脇、咽頭扁桃は鼻の裏側あたり、舌扁桃は舌の付け根あたりにあって、ぐるりと喉を取り巻いています。

扁桃のはたらきは、口や鼻から入ってくる細菌やウイルスなどの異物の侵入を防ぐとともに、異物への免疫を獲得することです。子どもは未完成の免疫システムを持って生まれてきます。
それは外界の未知の脅威に柔軟に対応するためです。生まれた後に、扁桃などがはたらいて免疫を獲得していきます。

そのため、扁桃は1歳ころから次第に大きくなって7歳前後に最大となり、後は次第に小さくなっていきます。咽頭扁桃は思春期頃には消失します。

扁桃肥大とは

喉の周りの3つの扁桃のうち、もっとも大きなものが口蓋扁桃で、一般に扁桃というときにはこの口蓋扁桃を指し、扁桃肥大とは、とくに口蓋扁桃が病的に肥大したものをいいます。
肥大の程度はわずかに突出している状態をⅠ度、喉の中央で左右の扁桃が接しているものをⅢ度、その中間状態をⅡ度と分類しています。

扁桃が肥大すると、呼吸に障害が出て低酸素状態になったり、いびきの原因になったり、ひどくなると睡眠時無呼吸症候群(SAS)の原因となったりします。


扁桃肥大の症状

お子さんの場合、扁桃はある程度大きいものです。
免疫獲得のためにはたらいている時期なので、目立った障害がない限りとくに気にする必要はありません。
ただ、肥大によって日常生活に影響が出るようであれば、耳鼻咽喉科での治療が必要になります。

気道狭窄・閉塞による症状

扁桃が喉にあるため、まず考えられるのが扁桃肥大によって気道が狭くなってしまうことです。
これによって呼吸が妨げられて様々な弊害が出てきます。口呼吸になってしまう、いびきがひどい、眠っているときに一時的に呼吸が止まってしまう睡眠時無呼吸症候群(SAS)などです。

これらによって眠りが浅くなって十分な睡眠が取れないために、朝起きられなかったり、日中に眠気を感じて居眠りをしてしまったりします。

呼吸障害が重度になると、陥没呼吸(気道が塞がって肺に空気が行き渡らないために肺の一部の圧力が下がって胸部が陥没する)や胸部の発育不全になることもあります。
また、食べ物を飲み込みにくいため食事に時間がかかったり、お子さんの場合には食が進まずに体重、身長などの増加が鈍くなるようなケースもあります。

睡眠の質の低下

睡眠の質が下がってしまうと、日常生活に多大な影響を及ぼします。
お子さんの場合には、寝ている間に体が成長します。成長ホルモンは深い睡眠時にもっとも分泌されます。睡眠の質が低下して昼間でも眠気を抑えられないと集中力も欠如して、学習などにも影響します。
また、倦怠感や頭痛、寝起きが悪いなどが原因となって生活のリズムが狂い不登校になったりすることもあります。乳幼児突然死症候群の一因に、睡眠時無呼吸症候群があるともいわれています。

大人のケースではさらに深刻な事態も起こり得ます。
睡眠時無呼吸症候群の潜在患者数は国内に300万人いると推定されています。
睡眠時無呼吸症候群は、日中に突然意識を失うように眠ってしまいます。
交通事故や仕事中の事故など、多くの事故の原因に睡眠時無呼吸症候群が関係しています。
実際に2003年のJR山陽新幹線の緊急停止事故、2005年の名神高速道路での多重衝突事故、2012年の関越自動車道での高速ツアーバス事故などで運転士、運転手に睡眠時無呼吸症候群の症状が認められています。

睡眠時無呼吸症候群の原因がすべて扁桃肥大というわけではありません。
むしろ肥満や、日本人の場合は小さなあごのために舌下が気道を塞いでしまうケースも多いようです。
とはいえ、扁桃肥大が睡眠時無呼吸症候群を引き起こすことに変わりはありません。

いびきや会議中の居眠り程度ならともかく、人命に関わる重大事故の原因にもなりかねないということです。


扁桃肥大の原因

扁桃は、母親から承け継いだ免疫が薄れ始める1歳ころから次第に大きくなっていきますが、その肥大、萎縮の程度と経過は個人差が大きいといわれています。人によっては大人になっても肥大を続けるケースもあります。遺伝的な体質が原因だともいわれています。
その他の扁桃肥大の原因の一つは、再三の扁桃の炎症です。扁桃炎や扁桃周囲炎などです。
扁桃の炎症を繰り返すと肥大が顕著になる傾向にあるといわれています。

扁桃肥大の治療方法

扁桃肥大の検査

まずは気道の閉塞状況を確認します。夜間のいびきや日中の眠気などの有無を問診し、口蓋や鼻などを視て気道が狭くなっていないかなどを診察していきます。
扁桃肥大が重度で、気道の閉塞も疑われる場合には終夜睡眠ポリソムノグラフィなどの検査機器を使って睡眠時の呼吸の状態を調べます。簡易携帯型の装置であれば、患者さんが自宅で検査することができます。呼吸の状態、いびきの有無、血中酸素濃度などを測定することができます。

扁桃肥大の治療

扁桃肥大の原因が感染症で、一時的なものであれば抗生剤などを使って炎症を鎮めます。

口蓋扁桃が気道を塞いでいて日常生活に支障が出ているような場合、手術で扁桃を摘出することを考えます。お子さんの場合、成長に連れ扁桃が小さくなってくることも考えられるため、様子を見たほうがいい場合もあります。
手術自体はごく一般的に行われるもので、とくに危険なものではありません。
しかし、手術を考える際には、


・繰り返し扁桃炎で高熱が出る

・扁桃に細菌が棲みつき、発熱の度に血尿があって腎炎が懸念される
・扁桃肥大で呼吸が苦しい
・無呼吸が見られる

など、様々な症状から検討して、手術のリスクより扁桃肥大のリスクのほうが大きいようであれば手術を検討してみましょう。担当医とよく相談してください。


手術は全身麻酔で行います。10〜12日程度の入院が必要となります。ただし、痛みが数か月続くこともあります。これも個人差が大きいようです。

なお、お子さんの口蓋扁桃肥大の場合、咽頭扁桃の肥大(アデノイド)を併発していることが多く、同時に切除します。アデノイドはそれ単独で症状を起こすことはありませんが、他の症状の原因となることがあります。アデノイドが気道を塞いで呼吸障害や睡眠障害を起こしたり、副鼻腔炎(ちくのう症)や中耳炎の原因になったりします。

まとめ

扁桃は幼児期に免疫を獲得するうえで重要なはたらきをしていますが、学童期以降はその機能を果たし終わり、切除しても問題ないといわれています。扁桃肥大が日常生活に大きな支障をきたしているようであれば摘出してしまっても問題ありません。しかし、入院が必要で、痛みが取れるまでに長ければ数か月かかることを考えると、とくにお子さんのケースでは手術のメリットとデメリットをよく理解した上で、医師と相談して治療法を決めてください。


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たてもと耳鼻咽喉科クリニック
立本 圭吾 医師

京都府京都市東山区三条大橋東入ル大橋町94 三条鈴木ビル5F

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