2017.05.08

網膜色素変性症って?医療費助成を受けられる指定難病について

この記事の監修ドクター

監修ドクター
オガタ眼科クリニック
緒方 譲二 医師

福岡県福岡市中央区天神2丁目2-12T&Jビル3階

0120-280-964

http://www.ortho-k.jp/

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網膜色素変性症は、網膜の異常が徐々に進行し極度の視力障害に至ることがある遺伝性の疾患です。
ほぼ5,000人に1人の頻度で発症すると推定されています。現在のところ、有効な治療法がなく、国の指定難病となっています。

今回は、専門医の監修の元、網膜色素変性症の症状、原因、対処療法について説明します。


網膜色素変性症とは

ものを見るときに目に入ってくる光に反応する網膜の視覚細胞(桿体細胞・錐体細胞)が損なわれる病気で、暗いところで見えにくくなる夜盲や、見える範囲が狭まってくる視野狭窄、視力の低下といった症状が見られます。

網膜色素変性症は遺伝による病気です。その原因遺伝子や病気の仕組みがすべて解明されているわけではなく、原因遺伝子が多岐にわたるため、発症の時期や症状のあらわれ方は人それぞれです。
多くの場合、症状の進行は非常に緩やかで、数十年単位で進行します。
幼少期に発症して30歳代になって視力を失う方もいれば、発症が遅い方であれば、70歳代で矯正がいらない視力を維持している方もいます。

網膜色素変性症の症状

視細胞が損なわれる

目に入ってくる光を受け取るのが視細胞です。視細胞には錐体細胞と桿体細胞の2種類があります。

錐体細胞は、水晶体などのレンズを通して光が焦点を合わせる網膜の中心部、黄斑の中心窩に集まっていて、網膜の中でももっとも鋭敏な視力や色覚を担っています。ただ、暗いところでは十分に機能しません。

一方、桿体細胞は黄斑周辺部や網膜の全体に広く分布していて、周辺視野を確保したり、暗い中でも光を感じてものを見ることができます。ただ色の識別はできません。

網膜色素変性症では、この視細胞が障害されることによって、以下のような様々な症状が現れます。

夜盲

多くの場合、最初に現れる症状が夜盲です。暗いところでものが見えにくくなります。
暗い中で光を感じる桿体細胞が最初に障害されるために、初期にこの症状が現れます。
最近では夜間の照明が明るいため、気づきにくくなっているともいわれています。

視野狭窄

視野が徐々に狭くなります。まずリング状に周辺部がぼけ始めたり(輪状暗点)、部分的に視野が欠けたりします。
部分的に視野が欠損するために、ものが見えたり消えたりすることがあります。
進行するにしたがって、中心に向かって視野が狭くなっていきます(求心性視野狭窄)。
周辺視野を支えている桿体細胞の障害が進んでいるために、こうした症状が出ます。

視野が狭くなってくると、足元が見えづらくなって躓いたり、ものや人にぶつかったりしやすくなります。
車の運転などにも支障をきたします。また、横から自転車や車が近づいてくるのに気づくのが遅くなったりして、日常生活のなかでも不便やリスクが高まります。

視力低下

進行していくと、中心的な視力を司る錐体細胞が損なわれ始めるために、極端に視力が落ちてきます。

白内障

比較的多くの患者さんに白内障の合併症が見られます。
レンズの役割をしている水晶体が濁って視力の低下を引き起こす病気です。
高齢者に多い白内障ですが、網膜色素変性症の患者さんの場合、比較的若いうちから白内障の症状が出る場合があります。

このほか、羞明といって、明るいところでまぶしさを感じることもあります。

症状に個人差が大きい

網膜色素変性症ではまず桿体細胞に障害が出ることが多く、そのため夜盲から始まって視野狭窄、視力の低下という順に症状が出てくるようですが、人によっては視力の低下から始まることもあり、症状の現れ方は人によって様々です。

これは原因となる遺伝子が多様であることや、まだ分かっていない要因によって進行や症状が左右されているためと考えられています。

この病気の特徴は、非常にゆっくりと症状が進むということです。個人差はありますが、数十年かけて進行します。発症してからの期間が長いほど視力の低下は進む傾向にありますが、必ず医学的失明(光を失う)に至るというものでもありません。この病気での失明とは社会的失明といって、矯正視力が0.1以下というケースが多いようです。発症後40年程度経過してもある程度の視力を保っているケースも多いようです。


網膜色素変性症の原因

dna

網膜色素変性症は視細胞や網膜色素上皮細胞の遺伝子の異常によって起こるとされています。
現在までに、40以上の原因遺伝子が分かっています。

遺伝性の病気ですから、この病気が必ず遺伝するのかどうかが気になります。
この病気の遺伝形式は常染色体優性遺伝、常染色体劣性遺伝、X染色体劣性遺伝の3つの形式を取ります。
日本での発症頻度でいうと、常染色体優性遺伝が17%、常染色体劣性遺伝が25%、X染色体劣性遺伝が2%という報告があります。

常染色体優性遺伝

両親のどちらかが患者である場合、50%の確率で子どもに遺伝します。
親−子−孫と連続して患者が現れますが、発症しないケースもあります。
男女ともに同じように発症し、性差はほとんどありません。

常染色体劣性遺伝

両親のどちらもが保因者(病気の遺伝子は持っているが発症していない)である場合で、かつ近親婚である場合に、25%の確率で子に遺伝します。両親に発症がなく、兄弟姉妹に患者がいる場合に、この形式での遺伝が疑われます。
劣性遺伝は、同じ性質の遺伝子をもつ両親からしか承け継がれません。
したがって、保因者であっても血族結婚をしない場合には子や孫に同じ病気が現れる確率は非常に低いといわれています。
劣性遺伝をする保因者を事前に見分けることはできません。男女の性差はほとんどありません。

X染色体劣性遺伝

X染色体に病気の因子があり、母親が保因者のケースで遺伝するものです。
通常、男性のみ発症します。男の子は50%の確率で発症し、女の子は50%が保因者になります。
男女とも残りの50%は正常な遺伝子を承け継ぎます。

ただ、はっきりと遺伝が確認できる患者さんは全体の50%ほどで、孤発といって、家系内に同じ病気の患者さんが見られないケースも数多く見られます。この場合も遺伝子のどこかに異常があると考えられていて、日々、研究と解析が進められています。


網膜色素変性症の検査方法

網膜色素変性症ではゆっくりと症状が進むため、現在どのような状態であるのかを確認することが肝要です。

眼底検査

眼底カメラで眼底写真を撮影して、眼底の様子を観察します。
網膜色素変性症では初期の段階で網膜にごま塩状の色調変化が現れ、網膜血管が細くなる様子が観察されます。
中期になると、この病気に特有の骨小体様色素沈着が周辺部に現れてきます。
さらに進んで後期になると、黄斑を残して眼底の網膜全体に色素沈着が広がってきます。この色素沈着はやがて黄斑にも及びます。後期には、視神経乳頭が萎縮して白く見えるようになります。

自発蛍光撮影で、網膜の後ろにある網膜色素上皮の変化を見ることがあります。腕の静脈から蛍光造影剤を入れて撮影します。網膜の萎縮が強いと蛍光造影剤が強く光ります。網膜の断層撮影ができる光干渉断層計(OCT)でより詳しく調べることもあります。

視野検査

検査機器を覗いて、小さな光が見えたらボタンを押す方法で、見える範囲=視野を調べます。

暗順応検査

暗いところでどの程度見えるか、夜盲の検査をします。

網膜電図

網膜に光を当てると電気的な信号が生じて、情報が脳に伝わります。
この信号を、角膜に載せた電極で測定します。視細胞がダメージを受けるとこの電気信号が小さくなったり、なくなったりします。



網膜色素変性症の治療

現在のところ、網膜色素変性症の根本的な治療法はありません。治療の目的は症状の進行を抑えることに主眼が置かれます。
内服薬として、暗順応改善薬であるヘレニエン製剤、ビタミンA、循環改善薬が用いられます。ビタミンAは網膜色素変性症の進行を遅らせる効果があるという研究や、循環改善薬の使用で視野が広がったという報告もありますが、残念ながら効果が広く認められているわけではありません。

内服薬とともに、症状を和らげる補装具が使用されることがあります。
遮光眼鏡は、可視光の一部を透過抑制することでまぶしさ(羞明)を抑え、まぶしさからの流涙等の不快感を軽減させたり、文字やものなどを見やすくすることが期待されます。また、暗転時に遮光眼鏡を外すと暗順応が早くなるなどの効果があります。

ルーペや拡大読書器、音声ソフトによるパソコン操作などを活用して、残されている視力下で生活のクオリティをできるだけ上げていく工夫も大切です。

医療費助成制度を活用しよう

網膜色素変性症は国の指定難病となっており、厚生労働省の医療費助成制度が適用される疾患です。
矯正視力が0.6以下で視野狭窄が見られる場合、患者さんご本人からの申請によって医師が難病患者診断書、網膜色素変性臨床調査個人表を作成しますので、それを管轄の保健所に提出します。
基準を満たしていれば、医療費の助成が受けられます。

また、視力、視野狭窄の程度によって、身体障害者認定を受けることもできます。
詳しくは、受診している眼科医にご相談ください。

まとめ

罹病期間がながくなるほど、網膜の機能は損なわれていきます。
ただ、症状は数十年単位で進行していきますので、現在の症状を正しく把握した上で、極力、視細胞を守る工夫や準備をしていくことが大切です。

日常生活に支障をきたすほど視力が低下している状態をロービジョンといいます。そういう方が、少しでも日常生活で活動できるように支援や援助をすることをロービジョンケアといいます。眼科医や福祉施設に相談して、こうしたケアについての情報を常に収集しておくことも大事です。


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