2017.02.06

視力が回復するコンタクト!?医師が教える視力矯正オルソケラトロジーについて

この記事の監修ドクター

監修ドクター
オガタ眼科クリニック
緒方 譲二 医師

福岡県福岡市中央区天神2丁目2-12T&Jビル3階

0120-280-964

http://www.ortho-k.jp/

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オルソケラトロジー

「視力を回復させたいけれど、レーシックは怖い」という方に、レーシックなどの手術とはまったく異なるアプローチとして近年注目を浴びている近視矯正がオルソケラトロジーです。
手術や投薬などを一切行わず、安定した視力を得る方法です。

今回は、専門医の監修の元、オルソケラトロジーについて説明します。


オルソケラトロジーとは

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角膜は外界の光を屈折させて網膜に焦点を結ぶ役割の一端を担っています。
目を保護するために充分な厚みと硬さを持ちながらも、とても弾力があり、また新陳代謝も活発なため、型に嵌めることによってその形状を変えることが容易にできます。オルソケラトロジーとは、角膜のその柔軟性を利用して、角膜の形状を調節する視力矯正法です。


オルソケラトロジーでは外科的手術ではなく、特殊なコンタクトレンズを装着して角膜の形状を変えます。
レンズは内面に複数の曲面加工が施され、中央部は平らになっています。
コンタクトレンズが角膜を圧迫して変形させることで、屈折率を調節し、焦点が合うようになります。


通常のコンタクトレンズと違い、目を使わない就寝時に装着し、起床したら外します。
調節された角膜は、一定時間、形を保持しますので、特殊コンタクトレンズを外した後も、裸眼で過ごせるようになります。

角膜を削る、切開するなどの手術を必要としないので非常にリスクが低く、近視治療の有効な手段として注目されています。

アメリカではすでに100万人以上がオルソケラトロジーを受けています。

オルソケラトロジーで使用される特殊なコンタクトレンズは、「高酸素透過性コンタクトレンズ」といって、酸素の透過性に優れ、ドライアイ防止のために涙が溜まる窪みが施されているため、夜間でも問題なく装着することができます。

視力回復効果

ただ、夜間のコンタクトレンズ使用によって形状が変わった角膜は、時間とともに元に戻ろうとします。
治療開始当初は、裸眼で過ごせる時間は半日程度になります。コンタクトレンズの使用期間が長くなればなるほど、視力回復効果も続きます。1週間程度の使用で、夜遅くまで視力を維持することができるようになります。


視力回復効果には個人差があります。すぐに1.0程度の視力を得ることができる人もいれば、しばらく時間がかかる人もいます。おおむね3〜6ヵ月程度で視力回復効果を実感できるようになります。


オルソケラトロジーは、基本的には軽度・中度の近視の矯正技術で、近視由来の弱い乱視矯正にも対応してきました。
近視強度でいえば-1〜-4D(ジオプター。マイナス表示は近視を表します)程度、乱視であれば-1.5D程度までの度数に対応します。

オサートとは

近年、「オサート」という新しいタイプのオルソケラトロジー用のコンタクトレンズです。
-4D以上の近視、-2D以上の乱視の矯正もできるようになってきています。
複雑な加工によって角膜にかかる圧バランスを精密に調節することで、矯正していきます。
レンズデザインを段階的にステップアップしていく必要があり、時間はかかります。
それでも、0.01程度の視力が、最終的には1.5程度にまで回復できる可能性があります。



オルソケラトロジー治療の流れ

適応検査

オルソケラトロジーを希望する場合には、眼科で適応検査と装着テストを受けます。
適応検査では視力や眼圧、角膜の形状、眼病の有無を調べ、オルソケラトロジーによる視力回復が見込めるかどうかを医師が判断します。
コンタクトレンズをお使いの方の場合、検査日の前にコンタクトレンズの使用を中止していただく期間があります。
正確な角膜の形状を測定する必要があるためです。

・    ソフトコンタクトレンズ(乱視なし)    3日以上
・    ソフトコンタクトレンズ(乱視用)    1週間以上
・    ハードコンタクトレンズ        2週間以上

適用可能な場合は、この段階でレンズの取り扱いと装脱着の指導を受けます。

テストレンズ装着

装着テストでは、1〜4時間ほど(眼科によって異なります)フィッティング用のコンタクトレンズを装着して効果を検証します。また、痛みや違和感など目との相性を確認します。
強い痛みやドライアイで装着することが難しい場合には、オルソケラトロジーができない場合があります。

レンズ処方

装着テストで視力回復が見られ、目との相性にも問題がなければ、患者用のレンズが処方されます。
この時、改めてレンズを着けたり外したりする練習や、取り扱い、手入れの仕方などの説明を受けることもあります。

定期検査

その後は定期的な検診があり、視力回復とコンタクトレンズの具合の確認が行われます。
おおむね翌日、1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後、その後3ヶ月ごとといった頻度で行われます。
定期検査にかかわらず、コンタクトレンズに違和感があったり、目が充血するなどの異常がある場合には、すぐに医師に相談してください。

こんな方にお勧め

日中は裸眼で過ごしたい

視力が安定するまでに少し時間がかかりますが、日中は裸眼で過ごすことができるようになります。
眼鏡やコンタクトレンズなどの煩わしさから解放されます。
とくに、軽度・中度の近視であれば、非常に高い視力回復効果が期待できます。

手術はしたくない

視力矯正はしたいが手術は怖いという方に、おすすめできる治療法です。
メスを入れませんので取り返しのつかない失敗や合併症などのリスクはありません。

激しいスポーツをする

コンタクトプレイや打撃などを受ける可能性のあるスポーツなどでは、コンタクトレンズでは角膜を傷つけたりズレたりしますし、レーシックなどで矯正した場合には、一定期間、目への衝撃を避ける必要があります。
オルソケラトロジーでは、日中はまったくの裸眼で過ごしますので、とくに制限がありません。

成長期のお子さんの近視進行を防ぎたい

オルソケラトロジーは、角膜の柔軟性に着目した治療法です。
したがって、成長期で柔軟性が高い未成年者ほど高い効果が期待できます。
学童期のお子さんにオルソケラトロジーを装着することで、近視の進行を抑制できる効果があることも分かっています。



お子さんへのオルソケラトロジー

成長過程だからこそ安心を

五感のすべてから、様々なことを吸収していく時期のお子さんにとって、視力の低下は大きな心配事ですね。
できるだけ安心・安全な方法で視力回復を図りたいものです。


通常、未成年者はレーシックが受けられません。眼が成長過程であるため視力が不安定で、レーシックで矯正したとしても、また近視が進行してしまうリスクが高いためです。


眼が成長過程であることは、オルソケラトロジーではメリットになります。
角膜に柔軟性があり、特殊コンタクトレンズによる形状の調節が安定しやすいため、効果が得やすく、長続きします。ある程度使用を続ければ、数日に1回の装着でも良好な効果を得ることができるようになります。


2014年11月には日本臨床眼科学会で「オルソケラトロジーガイドライン改定に向けた未成年者多他施設共同臨床研究中間報告」(京都府医大、慶應義塾大学、愛媛大学)が発表され、有効性と安全性が確認されています。


オルソケラトロジーでは、特殊コンタクトレンズの使用をやめれば、いつでも元の状態に戻すことができるのも大きなメリットです。

近視の進行を抑制する

さらに、学童期のお子さんに装着することで、近視の進行を抑制できることが分かっています。
眼鏡やコンタクトレンズで矯正した場合、視野の周辺部ではどうしてもピントがずれてしまい、そのことによって眼軸(眼球の奥行き)が伸びてしまいます。眼軸が伸びると焦点距離が伸びますから、結果的に近視が進んでしまうのです。
オルソケラトロジーでは、周辺部のずれが起こりにくく、近視の進行が抑制されるのです。


アメリカでの約80ヵ月にわたる追跡調査では、眼鏡やコンタクトレンズによる矯正では徐々に進行してしまう近視が、オルソケラトロジーではほとんど進行しなかったという結果が公表されています。

レンズの取り扱いについて

装着テストを実施

初めてコンタクトレンズを使用する方は、事前の検査、相談の段階で医師の指示を仰いでください。
正しい装着方法、着脱方法を習得して、角膜に傷をつけないように気をつけましょう。

レンズの処方前にテストレンズを装着して効果を検証します。
眼科によって異なりますが、1〜4時間ほどテストします。
この時に、コンタクトレンズの扱いについて、医師からよく説明を聞いてください。

テストレンズを装着して強い痛みやドライアイの症状が出る場合には、オルソケラトロジーができない場合があります。

通常のハードコンタクトレンズと同じ扱いでOK

オルソケラトロジーで使われる特殊レンズは、基本的にハードコンタクトレンズです。
したがって、通常のハードコンタクトレンズと同じ取り扱いでケアできます。

コンタクトレンズのケアは、使用しているときについたゴミや涙の成分を洗い流すのが基本です。
洗浄のほか、適正な保存状態を保ち、タンパク除去や抗菌成分などを配合したケア製品が市販されています。
眼科医の指導の下、適切な処置を行ってください。


レンズをはめる際には、流水ですすぎ→ケア溶液で洗浄→流水ですすぎを行います。
洗浄する際は親指、人さし指、中指で持って、指の腹でこすり洗いします。

レンズを外した際には、レンズケースにケア溶液を入れ、レンズホルダーにレンズを収納して保存ます。
レンズをはめた後、レンズケースは毎回ケア溶液を捨て、流水ですすいだ上で乾燥させます。
清潔を保つため、定期的にケースを交換します。

レンズを扱う際には、必ず事前に石鹸などで入念に手を洗いましょう。これら手入れを毎日行います。


レンズを扱う際の注意点

・    爪でレンズを傷つけてしまう場合があるので、爪の手入れをしておく
・    レンズを触る際には、必ず石鹸による手洗いを充分にする
・    レンズの取り外しは清潔なタオルなどを敷いて行う
・    洗面台でレンズを洗う場合には、流失をしないよう気をつける。流失防止マットなどを使う
・    レンズの左右を間違えないように注意する。つねに同じ側のレンズから扱うようにするなど工夫をする
・    破損を防ぐため、レンズに無理な力をかけない

オルソケラトロジーのメリット・デメリット

メリット

・    日中は裸眼で生活化できる
・    角膜を傷つけることがない
・    コンタクトレンズの使用をやめれば、いつでも元に戻すことができる
・    レンズはハードコンタクトレンズと同じで、取り扱いが簡単
・    子どもから高齢者まで幅広い年齢層に適応できる
・    特に若年層での近視の進行を抑制できる

デメリット

・    レンズの装着を続けなければならない
・    治療開始当初は視力が安定しにくい
・    レンズの装着をやめると、矯正前の状態に戻ってしまう
・    強度近視、強度乱視の矯正は難しい
・    毎日レンズのケアが必要(お子さんの場合、親御さんのサポートが必要)

治療費と料金について

オルソケラトロジーは保険外診療になります。したがって健康保険は適用されません。
費用は両目で15〜20万円です。乱視対応用はやや効果になります。
費用には、定期的に眼科に通って視力の回復具合を検査する費用も含まれます。
検査段階でのテストレンズには、別途費用がかかります(5,000円程度)。


オルソケラトロジーの特殊コンタクトレンズの耐用年数は約2年です。
レンズを定期交換する際には両眼で5〜6万円のレンズ代がかかります。

使い捨てコンタクトレンズは年間で12万円前後ですから、その期間で考えれば、けっして大きな負担とはいえないでしょう。

おわりに

オルソケラトロジーは、角膜など眼球にメスを入れることもなく、万が一、効果が確認できなかったとしても、特殊コンタクトレンズの使用をやめれば元通りの眼に戻すことができます。
さらにレーシックができない学童期のお子さんの視力低下については回復効果も高く、近視進行を抑制する効果もあります。


寝ている間にコンタクトレンズを装着するだけで、日中は裸眼で過ごすことができるオルソケラトロジー。
視力低下に悩んでいる方は、一度専門の眼科医に相談してみましょう。



この病気のおすすめドクター紹介

この記事の監修ドクター

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オガタ眼科クリニック
緒方 譲二 医師

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