2016.03.09

医師が教えるイボ痔(内痔核・外痔核)の日帰り手術と費用

この記事の監修ドクター

監修ドクター
北仙台はせがわクリニック
長谷川 和住 医師

宮城県仙台市青葉区昭和町4-3 北仙台ひまわりビル2階

050-5282-3819

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いぼ痔1

日本人の約30%の人が、肛門疾患である痔を持っていると言われております。そんな痔の中でも、最も患者様が多いといわれる『いぼ痔』に関する症状別治療法、日帰り手術、治療費用についてご紹介します。

掲載内容は、専門の医師に監修していただいております。


痔とは

いぼ痔は痔核(じかく)とも言われ、痔の疾患の約6割の方がいぼ痔を患っているといわれております。いぼ痔は、できる場所によって、「内痔核」と「外痔核」に分けられます。

内痔核とは

内痔核

内痔核の症状について

上の図のように、肛門と直腸の境目(歯状線)より内側で血液の流れが悪くなり、血管の一部がうっ血して(腫れて)こぶのようになった状態です。内痔核の症状には、その進行度合いによって、4段階に分けられています。

内痔核の進行度合い

Ⅰ度:
内痔核が肛門から飛び出すことはなく、痛みもありません。排便を行うときに出血をおこすことがあります。

Ⅱ度:
排便を行うときに内痔核が肛門から飛び出します(脱肛)が、放っておいてももとに戻ります。内痔核から出血がありますが、痛みがあることは少ないです。この段階で気づく方が多いです。

Ⅲ度:
排便を行うときに内痔核が肛門から飛び出し、指で押し込まないともとに戻らない内痔核からの出血、痛みがあります。

Ⅳ度:
常に内痔核が飛び出した状態で、出血や痛みがあり、粘液が出て、下着に付着する。

内痔核の原因として

排便を行う際に、便秘などで強くいきむ習慣があったり、同じ姿勢で長時間いることが原因と言われております。また、女性の発症原因としては、妊娠・出産を経験した際になりやすくなります。

外痔核とは

外痔核

外痔核の症状について

内痔核に対して、歯状線(肛門と直腸の境目)の外側にできる血管がうっ血してできた
こぶを外痔核と呼びます。痛みがあることが多いですが、出血することは少ないです。急な炎症が起こり、腫れがひどくなり、強い痛みが出ることがあります。

外痔核の原因について

便秘や下痢が原因で発症する場合や辛い食べ物を摂り過ぎたり、アルコールの飲みすぎ等が原因となります。また、長時間座ったままの姿勢をとり続けている方もなりやすいです。


いぼ痔の手術内容

内痔核と外痔核によって、また症状によって手術方法が違います。
また、痔になったからすぐに手術が必要というわけではなく、手術が必要な患者様は、全体の約10%~20%です。放置せずに、早めに診察を受けるようにしてください。

内痔核の手術

ALTA療法(ジオン注射)

硫酸アルミニウムカリウム水和物・タンニン酸という特殊な薬を内痔核に注射する手術です。最大の特徴は、切らずに治療が行えることです。進行度合いⅡ度~Ⅳ度つまり脱肛した内痔核に行われます。2005年5月より保険適応になり、今まで20万人以上の方が手術を受けられています。手術といっても、肛門に局所麻酔を行い(状態によっては静脈麻酔を併用する事があります)、内痔核の痛みがない4箇所に分けて注射します(図1:四段階注射法)。手術後、内痔核からの出血は数日でなくなり、内痔核の脱肛も1週間~1ヶ月を目安に改善していきます(図2 →図3)。約6ヶ月~1年間の経過観察が必要です。
ALTA療法の痛みについてですが、手術を受けた患者様によってまちまちで、患者様の症状と手術を受けられた医療機関によって差があるようです。なるべく症例数の多い医療機関で治療を受けることをお勧めいたします。痛みがない方は、麻酔の注射の痛み以外はほとんど感じないようですが、逆に痛みがある方は、ALTA療法の際や術後も痛みがあるようです。

輪ゴム結紮術


画像引用元:藤本外科・胃腸科・肛門科クリニックWEBサイトより

脱肛した内痔核や粘膜部分を輪ゴムで縛って腐らせ、脱落させる方法です。外来時に麻酔を使わずに行うことができる事が特徴です。患者様の症状や別の疾患等で他の手術法を取れない場合に行う手術です。脱肛する内痔核の症状はある程度改善しますが、内痔核のもとのこぶがすべて取れるわけではないので根治性は他の手術よりも低くなります。治療は、外来で行えますが、内痔核が脱落するまでに期間がかかります。1週間~2週間が目安となります。痛みについては、違和感はあるものの痛みはないという患者様が多いです。

結紮切除術(内痔核を切除する手術)

結紮

痔の手術で最も根治性の高い一般的な手術方法です。痔核の大きさ(進行度合い)に関係なく手術が行えます。内痔核とつながっている動脈を縛って、内痔核とその周辺の皮膚を含めて切除します。根治性が高いですが、内痔核をメスで切除しますので、手術後に強い痛みがあります。鎮痛剤を処方されるので、服用してください。

PPH法(内痔核の切除しない手術)

内痔核を切除しない根治性の高い最新の治療方法です。内痔核が脱肛するのは、直腸内の粘膜がゆるんだことが原因です。そのゆるんだ直腸粘膜を吊り上げて、痔核を消失させる方法をPPH法といいます。PPH法でも切除は行いますが、肛門の皮膚を切除するのではなく、直腸粘膜(もしくは粘膜下層)を切除する方法ですので、手術後の痛みは、結紮切除術よりも少ないです。切除する直腸粘膜には、痛みを感じやすい神経はありません。また、直腸の膨らんだ箇所を切除するので、肛門括約筋を傷つけることはありません。手術後の痛みも非常に少ないのが特徴です。

肛門形成術(内痔核を切除せず、最小限の切開で行う手術)

形成
画像引用元:臨床肛門描額 第5巻第1号

この治療方法も内痔核を切除しないで治療する方法です。
脱出した内痔核を中央の図のように内痔核に沿って皮膚切開を行い脱出している内痔核組織を直腸のもとの位置まで戻して、右の図のように正しい位置で縫合し、肛門括約筋に固定する方法です。

今までは、内痔核の手術方法は、ジオン注射もしくは結紮切除術のどちらかが行われていましたが、PPH法や肛門形成術という新しい治療法が確立されました。特徴は、内痔核を切除しない(肛門周囲の皮膚は高度な知覚を持っているので、できるだけ切除しない)事が特徴です。
また、患者様の内痔核の症状や進行度合い、併発している他の肛門疾患により最適な手術方法が選択されるため、一概にどの手術方法を受けたいと決められるものではありません。専門医による適切な診断と的確な手術の選択によって治療を行うことが望ましいです。



外痔核の手術は

外痔核の手術は、一般的には上記に記載した結紮切除術となります。
外痔核には、輪ゴム結紮術やジオン注射は行えません。
※外痔核は薬で治す保存療法で治らない場合に手術を行います。

血栓性外痔核

肛門周辺の血管が切れ、血栓が肛門の入り口にできて、しこりとなった状態を血栓性外痔核と呼びます。血栓性外痔核は外用薬と鎮痛薬で保存的に治療を行います。血栓が大きく痛みが強い場合には、局所麻酔を行い血栓を摘出する事があります。

いぼ痔の手術費用について

いぼ痔の手術は健康保険適応となります。
・ジオン注射(ALTA療法) ・・3割負担で約20,000円~35,000円
・結紮切除術 ・・3割負担で約20,000~35,000円
・PPH法 ・・3割負担で約45,000円
・肛門形成術 ・・3割負担で約2万円~3万円
(施設・麻酔法・短期滞在基本料をとるかどうかによって金額が変わるので、幅を持たせて下さい。)

いぼ痔の保険適応について

上記にも記載しましたが、いぼ痔の手術はすべて健康保険適応となります。
また、治療を受けたことで月間の医療費が高額になった場合は、高額療養費制度を活用することで、一定額の払い戻しを受けることができます。
任意保険に入られている方は、保険会社との契約内容を確認して、対象手術となっていれば、給付金を受け取ることができます。

日帰りで大丈夫?いぼ痔手術の入院期間は?

いぼ痔の手術は、おおよそ10分~30分程度で終わります。また、麻酔も静脈麻酔・局所麻酔で行いますので、手術によっては術後に痛みがありますが、歩行も可能です。そのため、日帰り手術が可能です。痛み止めも処方されますので、手術後に受ける医師からの注意・説明を良く聞いて療養すれば、入院の必要ありません。

手術後の痛みや出血

痛みについては、個人差がありますので一概に表現はできませんのであくまで参考にしてください。また、出血に関しては、どの治療も多少出血はあります。それは、傷口からおこるものとそもそも内痔核から出血していたので、手術後症状が回復するまでは、多少出血があります。大量に出血した場合は、すぐに医師に相談してください。

痛み・腫れ 出血 仕事
ジオン注射 痛みは比較的少ない当日の痛みが少しあります。 多少の出血はあります。 翌日からデスクワークが可能です。
輪ゴム結紮術 違和感はあるが、痛みはありません 出血は多少あります。 翌日からデスクワークが可能です。
結紮切除術 切除した傷口が痛みます。鎮痛剤を処方されますので内服ください。 手術後、出血する可能性があります。できるだけ安静にしてください。 痛みとの相談となります。
PPH法 痛みは非常に少ない。痛みがあっても鎮痛剤で抑えられます。 出血は多少あります。 翌日からデスクワークが可能です。
肛門形成術 切開した箇所が多少痛みます。鎮痛剤が処方されますので内服ください。 手術後、多少出血する可能性があります。 痛みとの相談となります。

 



手術後の再発率

・ジオン注射(ALTA療法)
治療後、内痔核は退縮しますが、痔になりやすい生活を繰り返していると再発する可能性があります。退縮した内痔核が再度脱肛します。治療後も約6ヶ月~1年間の経過観察が必要です。

・輪ゴム結紮術
内痔核の脱肛部分は切除できていますが、すべて切除できているわけではありませんので再発する可能性があります。

・結紮切除術
同じ内痔核からの脱肛はありません。ただ、痔になりやすい生活習慣を繰り返していると再度いぼ痔を発症する可能性はあります。。

・PPH法
ゆるんだ直腸粘膜を吊り上げているので、内痔核の脱肛は起こりにくくなっておりますので再発の可能性は低いです。

・肛門形成術
2012年に発表された治療方法で、症例数がすくなくまだ再発についての情報が少ないです。ただ、ゆるんだ直腸をもとの位置まで戻して縫合しているので、再発の可能性は低いと考えられております。

いぼ痔の手術を受けた後に、日常生活を改善しなければ治療した内痔核、もしくは新たないぼ痔(内痔核・外痔核)にかかる(再発する)事があります
日常生活の改善とは、
・便秘にならないように水分・食物繊維を良く摂取する
・排便時に強く・長くいきまない
・下痢になりやすい食生活をしない(辛いものの食べすぎ、アルコールの過度の摂取)
・肛門を清潔にする(ウォシュレットを優しく利用するなど)
・同じ姿勢を長時間とらないように気をつける
・過労やストレスをためない
など改善できることに取り組む必要があります。一度、痔になっている方は、再度痔になりやすい生活習慣といえます。症状が手術により改善した後も注意して生活を送ってください。

女性でいぼ痔の手術が不安な方へ

痛みが心配な方へ

女性は便秘になりやすい方が多いので、いぼ痔になる方が比較的多いです。肛門からの出血・痛みがあった場合はできるだけ早く専門医に診てもらうようにしましょう。それでも手術が必要になった場合は、医師からの説明をよく聞いて早めに治療するようにしてください。女性は、妊娠・出産を経て痔になったり、痔が悪化したりします。妊娠や子育ての期間に手術を受けるのは難しいと思いますので、早めに治療を行うことをお勧めします。
実際に手術の痛みとなると、結紮切除術を行う際の術後の痛みが問題となります。医師からは、鎮痛剤、胃薬、下剤などの処方を受けることができます。また、他の痔の患者様の経験談から、
・排便後の坐浴が効果的
・携帯用ウォシュレットを利用する
・痔の対策用のクッションを使う
などが有効だと言われております。痛みが完全に消えるのは、1ヶ月くらいかかるかもしれませんが、1週間程度で楽になります。

妊娠中の痔の治療について

妊娠中に痔を発症したり、悪化する事がよくあります。基本的には妊娠中は、塗り薬・坐薬を使って治療を行い、悪化した場合も出産後に手術を行うケースが多いです。また、妊婦さんで痔になる方が多いので産婦人科でも薬を処方してくれます。痔の薬は自分で判断せず必ず医師から処方される薬を使うようにしてください。市販の薬を混合して使用したりすることは危険です。妊娠中に痔が悪化しても手術を行うことは原則ありません。

いぼ痔の手術体験談 【27歳 男性】

もともと大学生のときから、排便したときに肛門から出血がありました。社会人になり、デスクワークになってから、肛門からの出血や痛みがひどくなって、治療を考えましたが、仕事が忙しかった事と肛門を見せるのが恥ずかしかったので、薬局で薬を購入して塗ったり、痔の座布団を使って痛みを和らげるようにしていました。ただ、症状はどんどん悪化し、排便時の痛みもひどくなって、肛門からいぼのようなものが出ているのが分かりました。そこまできて、治療をする決意をして、専門の医院に訪れました。ジオン注射という注射でできる手術を受けたのですが、比較的痛みはなかったです。医師から6ヶ月~1年間は経過を見る必要があるといわれました。大体、症状は1ヶ月もたたないうちに良くなりました。もっと早く治療を行っていればよかったと思いました。また、治療後に医師から生活習慣の見直しについて細かく説明を受けました。


まとめ

いぼ痔は痔の疾患の中でも一番多い病気です。いぼ痔の手術はいくつかありますが、患者様の症状や進行度合い、他の疾患の併発等を含めて手術方法は決定されます。手術は専門の医師(医療機関)の診断を経て受けるようにしてください。
いぼ痔の手術には、注射で行える、できるだけ切る部分を減らして行う、根治性を重視し切除するという手術の特徴があります。肛門周辺の皮膚は高度な知覚を持っているので、できるだけ切除しないという考え方があります。痔の症状がでたら、なるべく早く治療を受けることで、手術を行わなくても薬で治療ができます。また、手術を受けて症状が改善したからと言っても再発しないわけではありません。一度痔を患っている方は、再発したり、別の箇所に痔ができやすい方と言えます。予防するためには生活習慣の見直しが必要となります。

この記事の監修ドクター

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北仙台はせがわクリニック
長谷川 和住 医師

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